【Test drive impression】(36) 『ホンダ フィットHYBRID S Honda SENSING』――マイチェンで走りと安全をガチに磨いたフィットを公道テスト!

乗るなり、小沢はビビッと直感した。「これはホンダの懺悔だ! お詫びだ! 平謝りだ! まるで、不倫がバレた夫が家族の信用を取り戻すような、一大改心の改良モデルではないか!」と。そいつは“新国民車”たる『ホンダ』の『フィット』! 2001年に初代が国内デビューすると、独自のセンタータンクレイアウトで今までにないレベルの走りと使い勝手を実現。翌年には、あの『カローラ』を33年連続国内販売ナンバーワンの座から引きずり下ろしてしまった。ところがどっこい、客足は徐々に離れ、昨年度は新車の年販10万台を切って、『日産自動車』の『ノート』にまで負けた。それは今年に入っても続き、月販ランキングでは6月まで5位以下と低迷。確かに超絶低燃費を誇る『トヨタ自動車』の『アクア』や、半分EVとも言える『ノート e-POWER』の追い上げもあるけども、根本的にはホンダの自滅が大きい。実は、現行の3代目フィットがトヨタに負けじと搭載した独自7速DCTによる新世代ハイブリッドシステムが問題だった。ダイレクト感と高効率を両立する優れものだったが、開発で攻め過ぎたのか、発売直後からリコールを連発。特にギアボックス関連が多く、全7回のリコール中3回が7速DCT…。そして客の心が離れた、と。そこで、今回のマイナーチェンジでは、まさにその離れた客の心を取り戻すようなやり過ぎな本気改善がなされているのだ。

先ず、わかり易いのは外観。ホンダ新ワイルドマスクを採用。鉄板に手はつけてないものの、グリル&ダンパーから全面刷新。バンパー両サイドはエラのように張り出し、『新型シビック』にも似た野性味がある。ライトも一部グレードでオートライトコントロール付きLEDへッドライトを採用。フォグランプも変わったし、台形リアコンビランプもLEDライン発光で、夜に妖しく光るようになった。一番感心したのは、中身の驚くべき進化っぷり。特に売れ筋のB2ハイブリッドは、走りと同時に低燃費も追求。137PSのシステム出力は変わらないものの、JC08モード燃費は0.8㎞/リッターアップして最良37.2㎞/リッター。これは、予定ではアクアを抜いてクラストップになる筈だったが、直前にアクアが一部改良で38㎞/リッターを記録。残念ながら2番手に。ただ、改善の中身がトヨタとは全然違う。アクアはちょいコンピューター制御を弄った程度だが、フィットは骨格のエンジンにも燃焼室にも手をつけ、カムシャフト、インテークポートに加えてピストンまで改良。結果、パワーと燃費が両立できた訳で、こんなことまで普通のマイチェンでは絶対にやらないっての! 実際の加速感も良くて、前のフィットハイブリッドはシフトチェンジの感覚が残ったが、今回はアクセルを踏んだ途端、滑らかで厚みのある加速を開始。しかも、ダイレクト感を残しつつ、ショックは消え、モーターとエンジンの融合度が増している。開発陣は相当頑張った筈だ。

勿論、全体の乗り心地も凄い。小沢は、座った瞬間から「あれ? 違うぞ」と感じるほど、シートからして柔らか。表皮を変えただけだが、その他、乗り心地のしなやかさ、ショックの伝わり具合は前とは段違いで、聞けばボディーを骨格から弄って、ルーフ、ピラー、サイドシル等を強化。足回りも、ダンバーの最適化は勿論、サスペンションやステアリング取り付け部の剛性をアップし、全体の質感と操作感がかなり上質に。静粛性も確実にアップしており、床下の吸音シートを2㎜から3㎜に厚くした他、ダッシュボードインシュレーターを増やしたり、エンジンマウントも改良して、遮音ガラス採用や一部のガラスの板厚も変更している。インテリアもデザインは変わらないが、新たにバックスキン風素材や本革風素材を採用。兎に角、ありとあらゆる所をイチイチ変えているのだ。売れ線のハイブリッドだけでなく、1.3リッターガソリン車や1.5リッターガソリンの硬派モデルのRSも同様。特に後者は、新たなスポーティーなブラック&オレンジ内装がスポーティー。兎に角、明らかにやり過ぎ&改良し過ぎ。でも、如何にホンダが過去の失敗に真摯に向き合い、気を配っているかがわかる。換回は可能な筈。因みに、面白い発見があって、実はこのやり過ぎマイナーチェンジを担当したホンダのLPL(ラージプロジェクトリーダー)は、小沢がホンダに在籍していた時の同僚・磯貝尚弘クン。磯貝クンは当時からいいヤツ。「つくづくクルマってのは作り手を表すな」と思った次第。


小沢コージ(おざわ・こーじ) 自動車評論家・『日本カーオブザイヤー』選考委員。1966年、神奈川県生まれ。青山学院大学卒業後、『本田技研工業』に入社。1990年に『二玄社』に転職し、自動車雑誌『NAVI』の編集を担当。1993年からフリーに。『週刊自動車批評』(TBSラジオ)にレギュラー出演中。著書に『クルマ界のすごい12人』(新潮新書)・『マクラーレンホンダが世界を制する!』(宝島社新書)等。


キャプチャ  2017年9月18日号掲載

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