【昭和&平成放送禁止大全】(01) 『鉄腕アトム』から『殺し屋1』まで…有害図書扱いされたコミックの歴史

20170912 06
有害図書とは、各都道府県が“教育上好ましくない”書籍を指定する制度のこと。東京都では不健全図書と呼ばれているが、意味は一緒だ。18歳以下が購入できない“成人マーク”の付いた成人向け書籍とは別に、全年齢を対象とした書籍が対象となる。毎年約1000冊前後が、各都道府県の青少年保護育成条例に基づいて指定され、指定となった書籍は、謂わば強制的に“成人向け”書籍として扱われる。近年では、2014年にアニメ化され話題となった岡本倫の『極黒のブリュンヒルデ』(集英社)が、アニメ化直前に長崎県の有害図書に指定され、話題となった。なお、“図書”と付いてはいるものの、ゲームソフト等も対象となっており、「付録のDVDに問題がある」と有害図書指定されたケースも存在する。有害図書の制度自体は1950年から始まっているが、大きな転機となったのは1955年1月。当時の総理大臣である鳩山一郎が、衆議院本会議の施政方針演説で不良出版物について触れたことが、漫画にとって大きな逆風となった。「覚醒剤・不良出版物等の氾濫は、誠に嘆かわしき事態でありますが、特に我が国の将来をになり得べき青少年に対し、悪影響を与えていることは、誠に憂慮すべきことであります。政府としては、広く民間諸団体の協力を得まして、早急にこれが絶滅の為、適切有効な対策を講じ、以て明朗な社会の建設に邁進致したいと存ずるのであります」。つまり、「子供に悪影響を与える漫画は国民の手で絶滅させよう」と発言したのだ。これをマスコミが取り上げたことで、各地のPTAや『日本子どもを守る会』等が気勢を上げ、学校の校庭で漫画の焚書を行う等、“悪書追放運動”を開始。焚書の対象となった漫画には、手塚治虫の『鉄腕アトム』(光文社)等も含まれていたという。

これに反発した出版社は、1963年に『出版倫理協議会』を設立し、自主規制に動く。それが、「東京都の不健全図書(有害図書)として連続3回、若しくは1年間に5回以上指定された雑誌は、取次業者で扱わない」という自主規制のルールだ。子供が喜ぶ“毒”を入れ過ぎないよう基準を定めることで、逆に“毒”を入れられるようにした訳である。また、この時代の有害図書の対象は書籍と雑誌に限られていたが、週刊誌は有害図書に指定される頃には既に次号が発売されている為、売り上げに影響しなかった。以降は、セックスをテーマにした手塚治虫の『アポロの歌』(少年画報社)が神奈川県で有害図書になる等、多少の動きこそあれ、悪書追放運動そのものは下火になっていった。しかし、1989年に事態を一変させる事件が起こる。宮崎勤事件である。「犯人が性的・猟奇的な内容の漫画やビデオを多数所持していた」という報道により、再び漫画の規制を求める声が強まった(※実際には前記のような作品はコレクションの一部であり、マスコミによる印象操作だったことが明らかにされている)。全国で署名活動が展開される等、漫画に対する風当たりは強まり、それに押される形で先ず青少年保護育成条例が強化。新たに“コミックス”も有害図書の対象となった。雑誌と違い、指定が大きく影響するコミックスが対象となったことを受け、出版業界は1991年に“成年向けマーク”を導入。「教育に宜しくないコミックスがあるというなら、有害図書ではなく、成年向けマークを付けて、子供に売らないようにすればいい」という考え方である。だが、2000年代に入ると、青少年保護育成条例は、少年たちのたまり場になり易いコンビニに対しても規制を求めた。その結果、コンビニ団体はとんでもない決定を下してしまう。先に紹介した有害図書に関する出版業界の自主規制であった取次停止ルールに違反した場合、何と、当該の出版物のみならず、その出版物を発行している出版社の出版物を全て取り扱わないという方針を打ち出したのだ。事態を深刻に見た出版業界は、先ず2001年、成人向けの書籍には“成年コミック”等のマークを付け、一般誌と陳列する場所も区分する“ゾーニング”を実施。2004年にはシールで封をし、立ち読みも防止した。コンビニがこれ以上、青少年保護育成条例の攻撃対象にならないよう、対処した訳だ。だが、これで問題が全て解決した訳ではない。実は、ここから有害図書という名の、事実上の検閲が始まるのだ。有害図書という制度の問題は、その指定が非常に恣意的に行われ、且つ一部によってできる点にある。例えば、性描写を描いたコミックスのページだけを見せて、「子供の教育にいいと思いますか?」と聞かれた場合、大半の人は「問題だ」と答えるだろう。そうすれば、簡単に有害図書指定となる。

つまり、その作品のクオリティーや作家性等とは無関係に、“悪書”に仕立てることができるのだ。実際、極黒のブリュンヒルデが長崎県で指定されているのは、それが理由である。そして、1つの県で指定になれば、他県でも前例主義に則り、指定を受け易くなる。2001年からは“自殺や犯罪の助長”も規制対象となり、小池一夫原作・池上遼一作画の『傷追い人』(小学館)や、累計発行部数1000万部を達成した柳内大樹の不良漫画『ギャングキング』(少年画報社・講談社)が有害図書に指定されている。この年に実写映画化された山本英夫の『殺し屋1』(小学館)は秋田県や福島県等で有害図書指定されており、コミックス第1巻を『Amazon.com』のKindleストアで無料配信した際はアダルト本に分類されていた。2000年には、学生同士の殺し合いという内容が審査員の間で賛否両論になったことで話題となった『バトルロワイアル』(太田出版・幻冬舎)が、藤原竜也主演で実写映画化されているが、同年に田口雅之の作画で『ヤングチャンピオン』(秋田書店)に連載されたコミカライズ版も、当然のように有害図書指定された。また、猟奇殺人をテーマに描き、有害図書に指定された『多重人格探偵サイコ』(KADOKAWA)の原作者・大塚英志は、その後、『黒鷺死体宅配便』(同)も指定されている。性行為の在り方自体も、規制の動きが加速している。それが、“漫画焚書条例”と大騒ぎとなった2010年の東京都の青少年保護育成条例の改定案だ。これは、全ての漫画やアニメにおいて、18歳以下の登場人物を“非実在青少年”として、一切の性描写を排除しようというもの。流石に、この非実在青少年規定は無くなったが、その代わりに「強姦等の著しく社会規範に反する性交又は性交類似行為を、著しく不当に賛美し又は誇張するように、描写し又は表現することにより、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を著しく妨げるもの」が新たに付け加えられた。読むとわかるように、非常に基準が曖昧で、判断も主観によるものが大きかった為、導入時には反発も大きかった。それだけに、適用も慎重で、施行されても暫くの間、この新基準が適用されたコミックスは出てこなかったのだが、2014年に18禁のアダルトゲームを原作としたスピンオフ作品『妹ぱらだいす!2』(KADOKAWA)が有害図書指定となっている。前述した取次停止ルールにより、コミックスの有害図書指定は掲載雑誌以外にも影響する為、各出版社は過剰とも言える自主規制を行っているが、青少年育成条例が改定される度に、規制される作品が増えることはあっても、減ることはないだろう。 (フリーライター 西本頑司)


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