引きこもり増、悩むイタリア――不況で将来不安、日本の対策に関心

陽気で楽天的な国民性で知られるイタリアで、“引きこもり”問題への関心が高まりを見せている。自宅から出ず、他人と関わらない若者は、“HIKIKOMORI”として認識され始め、対策に日本の知見を期待する声も上がっている。 (取材・文/ローマ支局 佐藤友紀)

20170913 01
「息子が突然、学校に行かなくなった時、何が起こったのかわからず、一生治らない原因不明の病と思っていた」――。トリノに住むエレナさん(53)は、長男(17)についてそう話す。長男は5年前から学校に行くのを嫌がり始め、15歳の夏から部屋にこもって、1日中パソコンの前に座り続けるようになった。見かねてインターネットの接続を切った時は、パニックになり、大声を出して暴れた。相談した学校の教論からは「蹴ってでも学校に来させるべきだ」と言われ、周囲からは「親の教育がなっていない」と責められた。障害を疑い、受診したカウンセラーからは、「息子さんは他人と関係を築けないようだ」としか診断されなかった。昨年、知人から「“引きこもり”という現象ではないか?」と言われた。インターネットで調べると、日本の若者の多くが抱える問題と知り、「息子だけじゃない」と救われた気持ちになった。イタリアでも同じように悩んでいる人がいることを知り、連絡を取って励まし合うようになった。「息子が引きこもりと知って、やっと対策を考え始めることが出来た。社会はもっと引きこもり問題に関心を持つべきよ」。エレナさんはそう話す。6月にミラノで引きこもり支援を専門で行う団体『HIKIKOMORIイタリア』を設立したマルコ・クレパルディ代表(27)によると、イタリアでは引きこもり状態の若者は、心理学者の推計で10万人ほどいるとみられる。だが、引きこもりに対する認知度は低く、支援団体も殆ど無いことから、エレナさんや長男のように人知れず悩む人が多い。引きこもりをテーマにした日本のアニメを見て、引きこもり現象に興味を持ったというクレパルディさんは2013年、引きこもりをテーマにした大学の卒業論文の為、引きこもりに関するブログや『Facebook』のページを開設した。3000人以上が登録し、情報提供や支援を求める声が多数上がった為、団体を設立した。

団体が運営するチャットには約300人の引きこもりの若者が参加し、「外に出たいのに出られない。私はまるで死体のようだ」等、悩み相談をし合っている。また、登録する約400人の保護者向けに、年に数回、イタリア各地で意見交換の場を開く予定だ。日本の引きこもり支援団体とも提携し、情報の共有も図る。クレパルディさんは、「引きこもりに対する認知が徐々に広まれば」と話している。トレントでアルコール依存症患者等の支援を行う『A.m.a.トレント』も、昨冬から引きこもり支援を始めた。引きこもりの保護者を対象にセミナーを開き、情報交換の場所を提供している。サンドラ・ベントレーリ代表(60)は、「将来的に学校教論も招いた勉強会を開いて、引きこもりで苦しんでいる若者の存在を知ってもらいたい」と話している。日本で引きこもり問題について研究する東京大学のカルラ・リッチさんは、「長引く経済不況等、社会の変化で、イタリアでは将来に不安を抱える若者が多い。引きこもりは世界中で起こっているが、研究が進んでおらず、社会に知られていない。世界で初めて引きこもり現象が起こった日本の知見を世界に伝える時期にきている」と話している。イタリア人の陽気で楽天的というイメージは、どこから来るのか? イタリアの経済紙『ソレ24オレ』で2012年に掲載されたコラムでは、イタリアが持つ強みについて、ファッション・食・暖かい気候・長い休暇から生まれる“感覚”や“情熱”を挙げ、「これらの肯定的なイメージが、そのまま世界でのイタリア人像に繋がっている」としている。アメリカの民間調査機関『ピューリサーチセンター』が2015年に発表した、『ヨーロッパ連合(EU)』に加盟する主要国の国民性に関する調査では、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スペインの5ヵ国が、イタリア人について「最ものんびりした国民」と回答している等、イタリア人には楽天的なイメージもついて回る。世界で知られるイタリア人も、こうしたイメージに一役買っているようだ。イタリアの雑誌編集者でジャーナリストのベッベ・セベルニーニさん(60)が挙げるその代表が、豪快なイメージを持つシルヴィオ・ベルルスコーニ元首相だ。『日本イタリア会館』(京都市)の片山智士事務長は、日本で有名なナポリ出身のパンツェッタ・ジローラモさんの明るいイメージを指摘する。ただ、イタリアに約30年住むナポリ東洋大学の大上順一准教授(アジア・アフリカ・地中海研究)は、「南北で性格に相当差があり、北の人は実際はイメージされているほど陽気ではない」と指摘する。また、セベルニーニさんも、「経済状況の悪化で、そう楽天的に振る舞ってばかりもいられない。時代の変化と共に、イタリア人の国民性は少しずつ変わってきている」と話している。


⦿読売新聞 2017年8月31日付掲載⦿
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