【アメリカ企業・トランプに反旗】(下) 白人保守層とは温度差

20170913 06
「トランプ大統領の為に戦争を始める」――。今月18日、ドナルド・トランプ大統領の最側近だったスティーブン・バノン首席戦略官兼上級顧問はこう言い残して、ホワイトハウスを去った。バノン氏は移民排斥や保護貿易等、トランプ大統領の“アメリカ第一主義”を支えた人物だ。政権入りする前は、白人至上主義等を訴える“オルトライト(ネット右翼)”のニュースサイト『ブライトバートニュース』を運営していた。バノン氏は政権内の穏健派と対立し、一敗地に塗れた。ニュースサイトに戻った今、バノン氏は“復讐”に燃えている。攻撃対象には、議会やメディアだけでなく、大企業も含まれる。白人至上主義者と反対派との衝突事件を巡り、トランプ大統領は「双方に非がある」と述べ、人種差別主義者を容認するかのような姿勢を示した。「多様性はアメリカ文化の礎」(『ユナイテッドテクノロジーズ』のグレッグ・ヘイズ氏)と考える有力企業の最高経営責任者(CEO)たちは、それを問題視し、助言機関の解散にまで発展した。トランプ大統領の発言に対し、誰もがバノン氏の影響を強く感じていた。その為、混乱を招いた責任を取る格好で、バノン氏は辞任した。CEOの反乱がバノン氏退任に一役買ったとも言える。ところが、一般のアメリカ人は、CEOたちほどトランプ発言を問題視していない。寧ろ、トランプ大統領の発言を擁護する人も多くいる。調査会社『モーニングコンサルタント』と政治情報サイト『ポリティコ』が共同で実施した調査が、そうした状況を物語っている。

シャーロッツビル(バージニア州)で白人至上主義者と反対派が衝突したことについて尋ねたところ、共和党支持者では「双方に非がある」と答えた人が過半数の54%を占めた。ここから浮かび上がるのは、CEOと保守的な白人層との間における人種や移民を巡る意識の違いだ。大企業の多くが、事業のグローバル化で工場を海外に移転させていった。同時に、アメリカ国内に温存した生産拠点では、安い賃金の移民層を受け入れて競争力を高めてきた。その煽りを受け、白人の中産階級やブルーカラーの労働者の雇用機会は脅かされた。「キリスト教と英語を中核とする文化・価値観も揺らぐ」との懸念も広がっていた。そうした不安を感じる白人層のオピニオンリーダー的な存在に、バノン氏がなりそうだ。グローバル展開する企業のCEOが、いつバノン氏の標的になってもおかしくない。「メキシコとの国境の壁は建設する。北米自由貿易協定(NAFTA)も、どこかの時点で終わらせることになるだろう」。トランプ大統領は今月22日、アリゾナ州で開催した集会で、自身の原点とも言うべき排他的な政策を改めて持ち出し、それを実行することを強調した。人種問題で政権基盤が揺らぐ中、トランプ大統領としては中核の白人労働者の支持を固めておきたいところだ。同時に、白人労働者に影響力のあるバノン氏の支持も繋ぎ留めておこうとする思惑も見え隠れする。バノン氏退任で、『国家経済会議(NEC)』委員長のゲイリー・コーン氏らの発言力が高まり、「現実的な政策に転換する」との見方もあったが、不透明感が漂う。「トランプ大統領の言動は批判すべきだが、評議会は続けるべきだ」。今月16日午前、トランプ大統領の助言機関『戦略・政策評議会』の電話会議で、メンバーの多くが辞任や解散を主張した中、敢えて評議会の存在を主張した人物がいた。『ボーイング』の前CEOであるジェームス・マックナーニ氏だ。マックナーニ氏は、トランプ政権が“親ビジネス”であり続ける重要性を強調したという。しかし、助言機関は解散した。インフラ投資の会議の設立も撤回される等、トランプ大統領の産業界離れも進みかねない。アメリカを代表する企業のCEOが、集団で大統領から離反するという異例の事態を迎えた産業界。トランプ&バノンのコンビが続けば、政権との関係修復が困難になるのは間違いない。

               ◇

ニューヨーク支局 稲井創一が担当しました。


⦿日経産業新聞 2017年8月25日付掲載⦿
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