【霞が関2017夏】(17) 規制か放任か…仮想通貨に悩む金融庁

『ビットコイン』に代表される仮想通貨。決済手段としてだけでなく、投機商品として連日、激しい値動きを見せている。揺れているのは価格だけではない。監督官庁として、“新しい価値”にどう向き合うのか? 金融庁が規制と放任の狭間で対応に苦慮しているのだ。先月1日夜、ビットコインが分裂し、新しい通貨『ビットコインキャッシュ』が誕生した。関係者には、2009年にビットコインが誕生して以来の「一大転機」(『早稲田大学ファイナンス総合研究所』の野口悠紀雄顧問)と映った。金融庁の担当者に「当局としてどう対応するのか?」と聞くと、「中々難しいですね。事態の推移を見守るしかない」。思わず、「それでいいの?」と感じずにはいられなかった。今年4月、改正資金決済法が施行された。マネーロンダリング(資金洗浄)対策と利用者保護を両立する為、先進国と歩調を合わせて規制を整えた。仮想通貨の取引所に登録制を敷き、利用者への情報提供を義務付ける。取引所は預かったお金と仮想通貨をきちんと分別管理することとし、金融庁の立ち入り検査を通じて取引所の健全性を高めるルールも導入した。取引所は今月末までに“仮想通貨交換業者”として登録し、認められる必要がある。だが、先月31日時点で金融庁が認めた取引所はゼロ。金融庁幹部は、「新しい技術を前に慎重にならざるを得ない。通常の登録業とは違う」と戸惑いを隠さない。今夏には専門チームを立ち上げ、弁護士や会計士も交えて対応しているが、ノウハウが無いだけに手探りの状態が続く。

「悪質な業者を入れてはいけない。かといって、規制を強めれば育成を阻害しかねない」(幹部)。バブル崩壊後の不良債権処理をきっかけに、金融庁は“規制”を主業務としてきた。イノベーションを生む政策には、未だ肌感覚が馴染まないのかもしれない。改正法は、仮想通貨そのものに規制を設けた訳ではない。仮想通貨を「不特定の者に代価の弁済に利用でき、法定通貨と相互交換できる」「電子的に記録され、移転できる」「法定通貨ではない」と定義づけただけだ。独自の仮想通貨を発行して資金を集める新規仮想通貨公開(ICO)をするには、この定義に当てはまるかどうか、金融庁が判断する。別の金融庁幹部は、「改正法はICOを想定していた訳ではない。何でも許せば詐欺紛いの行為が起きかねない」と身構える。一方で、「どこまでモニタリングすれば十分なのか、判断基準も無い」。警察庁や消費者庁等と連携し、実態把握に努めるしかないという。抑々、ビットコインの理念は“管理者不在の通貨システム”。そこから派生するビジネスは、民間主導でどんどん進む。官民がしっかり連携し、柔軟に制度を見直せる下地を整える。悪質な業者には躊躇わず撤退を命じる。2014年に取引所『マウントゴックス』で起きた巨額のコイン消失事件のような事態を再び招かない為には、どうすればよいか? 仮想通貨を成長産業に育てることは、金融庁が“処分庁”から“育成庁”へ転換できるかどうかの試験問題でもある。 (鈴木大祐)


⦿日本経済新聞電子版 2017年9月12日付掲載⦿
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