6代目・神戸・任侠、嗚呼ヤクザはつらいよ――シャブ・銃器・盃・愛人・密接交際者等に纏わる渡世の雑学

3つに割れた山口組の争いばかりが注目される昨今だが、ヤクザウォッチの醍醐味は彼らの日常生活にこそある。欲望に忠実な者同士がぶつかることで、数々のトホホな事件が発生するのだ。ヤクザの多くが「あるある!」と膝を叩く事例を紹介する! (取材・文/フリーライター 本郷海)

20170914 05
ヤクザ組織は表向き、重い刑罰の対象になりかねない違法薬物の取り引きには絶対に関わらない方針を、上から末端まで貫いている。だが実態は、どの組織にも違法薬物に手を染めた組織や組員が存在し、中には巨万の富を手にして“シャブ御殿”を築いた億万長者のヤクザもいる。そうしたシャブを乗りこなす者とは対照的な、トホホ事例を紹介したい。関東のあるヤクザ組織の幹部は、売り物である筈の薬物に手を付けただけでなく、時と場所を弁えないとんでもない使い方をしてしまったという。現場にいた組員が証言する。「一時は本当にどうなるのか、不安になりました。うちだって表向きはシャブ禁止です。だからといって、一切ダメではなく、『こっそりやれよ』なんですが、あれは拙い」。そのダメ幹部は、組内の儀式で媒酌人を任されていた。その晴れ舞台に、まさかのガンギマリ状態で臨んだという。組員は続ける。「朝は真面だったんです。ところが、準備している内に急に怒り出して、その直後には笑い出したりと、明らかにおかしかった。それに、肌寒いくらいの天気だったのに汗ビッショリ。そこで周囲が気付いて、慌てて控室に閉じ込めた。式にはうちの親分始め、上部団体の最高幹部も来ますし、バレたら本人がクビどころか、うちの組も潰されますよ」。会場の外には地元警察の捜査員らも監視に来ていたこともあって、ヒヤヒヤだったそうだが、幹部は急病ということで、介添役が急遽、媒酌人を務め、無事に儀式は終了した。「後で幹部に聞いたら、極端なあがり症なので、これまでも儀式の度に(シャブを)打っていたそうです。ところが、あの日はいつもと違う仕入れ先のクスリを使ったそうで、それでキマリ過ぎておかしくなったと。でも、それまでの仕入れ先のクスリは、あまり質が良くなかったと気付いたみたいで、その仕入れ先を怒っていましたね」。どうやら、ダメ幹部はあまり反省していないようだ。

もう1人、クスリで下手を打ったヤクザを紹介したい。関西地区で活動する指定団体傘下組織の組員もまた、売り物に手を出していた。「アイツはヤクザじゃなくて売人になればよかったんですよ。そうしたら、もっと儲けられたんですから。若いのに、シャブに食らいつく根性だけは半端なかったですね」。こう語るのは、その問題組員の先輩。組員はシャブの売買を手伝っており、売人に手渡す役目も担っていたようだ。「ある時、売人から『客からクレームがあった』と連絡が入った。聞いたら、どうもクスリが効かないとの話だった。それで在庫を調ペてみたら、殆ど混ぜ物用の“アンナカ”(※安息香酸ナトリウムカフェイン。ASKAが使っていたことで有名。強心剤や眠気除去として医療現場でも使われている)にすり替えられていた。直ぐに組員に聞くと、あっさりと認めた。横流しで儲けていたなら未だヤクザらしいけど、真相は自家消費と友人との遊び用だった。きっちりシメてクビにしたよ。ホント、若いヤツのやることは理解できませんね」。こう語ってくれた先輩は、未だ21歳だった。ヤクザにとっての武器は、嘗てはお守りのようなものだった。それが昨今では打って変わり、取り締まりが厳しさを増すご時世にあっては、携帯するなど以ての外。何か別件でガサ入れがあった際にうっかり発見されようものなら、大騒ぎは必至で、自宅や知人宅で保管することすらできない厄介物である。しかし、2年前に『6代目山口組』が分裂して、『神戸山口組』との間に抗争が頻発すると、闇市場では価値が一気に上がり、高値で取り引きされるようになったという。何しろ、警察庁が「両団体は対立抗争の状態にある」と認定した昨年3月7日の時点で49件の衝突が発生し、検挙人員は150人に上っていたのである。この勢いに乗じて一儲けしようと企んだヤクザは少なくなかった。「兄貴から『兎に角、チャカを集めろ』といきなり命じられたんです。『まさか、うちの組織も喧嘩に参加するのか?』と焦りましたが、よくよく聞いたらビジネスでした」。こう語るのは、九州地区に本拠を構える組織の組員である。兄貴分と一緒になって、密輸した銃や改造銃、改造モデルガンな等を元ヤクザや不良外国人らから集めた。「集めている最中もどんどん値段が上がっていくんで、積み上がったピストルの山を前に、兄貴と手を取り合って大喜び。ピストルの買い付け資金が足らず、愛車から何から、売れるものは全て売り飛ばしました。もうイケイケドンドンの武器商人気取りでした」。そうやって入手した銃は、片っ端から伝手を頼って6代目側や神戸側に売り込んだ。時には購入額の倍以上で売れることもあった。これで暫くは優雅に遊べそうだと思っていた矢先、昨年4月に神戸側は指定団体に認定された。これにより、対立する双方共に指定団体となったことで、「更に抗争を続ければ特定抗争指定団体への格上げも必至」との噂が流れた。若しそうなれば、組員が組事務所に出入りしたり、5人以上が集まったりしただけで逮捕される等、事実上、ヤクザ組織としての活動が不可能になってしまう。必然的に、両組織とも抗争厳禁を傘下団体に通達することとなり、水を打ったように抗争の音が鳴りを潜めたのである。

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「兄貴は顔面蒼白でしたね。ごっそりと在庫は残っているのに、ピタリと注文が無くなりましたから。偶に電話があっても、『下取りしてほしい』なんて言ってくる。『冗談じゃない』と断りましたよ。こっちだって、誰か下取りしてくれるならお願いしたいのはやまやまでしたから」。『任侠団体山口組』が発足した際には、少しだけ期待したが、やはり売れ行きはパッタリだったそうだ。意気消沈の兄貴から、銃の保管とメンテナンスを頼まれている為、組員は直ぐにでも販売できるように、足繁く隠し場所へ通っては丹念に磨き上げている。その隠し場所へ行く時は、奥さんの軽自動車を借りるという。子分は親分の命令なら、どんな理不尽なことでも黙って従わなければならない。それがヤクザ社会のルールである。東北地方で活動する某組織の幹部は、再婚して初めてできた娘(3)との泊りがけの旅行を、予てから心待ちにしていた。親分に翌日からの休みの挨拶を済ませると、「ゆっくり楽しんでこいよ」との言葉と共に、分厚い封筒まで渡されたという。「嬉しかったですね。勿論、お金もですが、親分の温かみを感じることができました。思わずグッとくるものがありましたよ。涙を見られないように、急いで頭を下げて事務所を出ました」。次の日、娘が大好きな『東京ディズニーランド』のアトラクションに並んでいると、携帯電話から映画『仁義なき戦い』(東映)のメロディーが流れた。この着信音が設定されているのは親分である。周りから白い目で睨まれながらも、恐る恐る幹部は電話に出たという。「何故かメチャクチャ怒っているんですよ。『オイ、俺をナメてんのか? 今直ぐに渡した封筒を持って、ここへ来て説明しろ!』って、もう物凄い剣幕でしたね。組の後輩連中からも次々に電話がかかってきて、『オヤジが普通じゃないキレ方をしている』とパニック状態でした。娘も私の異変を察知したのか、泣き顔になって、居た堪れなくなりました」。

幹部は兎に角、車を飛ばし、娘の泣き顔を思い浮かべては涙ぐみ、親分の封筒の話を思い出しては首を傾げた。そして、事務所に着くと、ノックもそこそこに飛び込むようにして組長室に入った。だが、組長は予想とは違って全く怒っておらず、それどころか申し訳なさそうな笑顔を浮かべていた。「俺が封筒を差し出すと、『いや…それはいいんだ…』って言って、俺を引っ張って部屋の隅に連れて行きました。そして、スマホを見せられたんです。その画面には、『あなたは当サイトと契約したので、すぐに12万円を振り込んでください』等と書いてありました。恐らく、親分はアダルトサイトを見ていて、ワンクリック詐欺に引っ掛かりそうになって怖くなったんです。それで、他の若いヤツには恥ずかしくて聞けないんで、俺を呼んだんですよ」。ヤクザになってから30年以上になる幹部は、再びディズニーランドへと車を走らせながら、「もう足を洗う頃合いなのではないか?」と何度も自問自答したという。2011年10月に『暴力団排除条例』が全国で施行されるようになってから、ヤクザとカタギの付き合いはすっかり疎遠になった。東海地方で活動する組織の親分の周りでも、それまで組織との親しい関係を利用して仕事していたカタギは、殆ど姿を消した。「今、親分が付き合っているのは昔からの幼馴染みだけだ」と、組長付が語ってくれた。「うちの親分は、物凄い貧乏な家で育ったそうです。それを見かねた当時の幼馴染みたちが、ご飯や服を分けてくれたことで、何とか生きてこられたと親分は感謝しています。そういう話を聞けば、うちらにとっても親の恩人にあたる訳ですから、大切にしようという気持ちになりますね」。幼馴染みの顔ぶれは多彩で、商店の社長や議員や元教師等、様々だ。特に、この元教師の家は、親分を実の兄弟のように育ててくれたこともあって、親分にとっては感謝してもし切れない格別の存在だという。だが、この元教師が曲者で、普段は非常に大人しいのだが、1滴でもアルコールが入ると豹変する。「素面の時とは別人ですね。飲む前はまさに借りてきた猫なんですが、少しでも飲むとヤクザよりもガラが悪くなります。うちらのことも乱暴に扱いますね」。まるで自分が親分になったと勘違いしているのか、組長付らを子分のように使い始めるという。酒を注がせるくらいならまだしも、「カラオケを歌え」だの「踊ってみろ」と命じ、しまいには「アキラ100%の物真似をやれ」とまで若い者に要求したという。「子分の気持ちはひしひしと感じてはいても、親分は元教師にどうしても文句が言えない。親分の苦しそうな顔を見るのは辛かったですね。タチが悪いことに、元教師が酔っている間のことを全く覚えていないんです。だから、謝ることもないし、本人も反省しないから、飲む度にうちらはコキ使われるんです」。組長付は、「(暴れる元教師を)こっそりと撮影して彼の家族に送り付けてやろうか?」と画策しているそうだ。

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風俗店を経営しているヤクザは昔から少なくない。関西地方に本部がある組織の本部長も、某ソープランドのオーナーを務めていた。義理事で遠出した帰り、組織の会長と同じ車に乗った本部長は、自分の店に新しく若い子が入ったことを話したという。「いつもは乗ってこない会長が、珍しく色々と聞いてきた。後でわかったことだが、どうも愛人と別れたばかりだったらしい。寂しかったのか溜まっていたのかは知らないが、兎に角、そのまま店に連れていくことになった」。店に着いて新しい子を紹介すると、会長は甚く気に入った様子で、大いにハッスルプレイを楽しんだという。「良い親分孝行ができた」と感概に耽っていた本部長だったが、彼女を気に入った会長は、直ぐに愛人にしてしまったそうだ。そこで、仕方なく無理してまた新しい子をスカウトしたのだが、どこで聞き付けたのか、会長はこの子にも目を付け、また愛人にしてしまったのである。「若くて新しい子たちは店の目玉だった。『会長に捨てられた子が店に戻ってくれないか?』と期待したが、やはり格好悪いと感じたのか、ダメだった。正直、他の従業員はオバサンとデブばかりだから、すっかりマニア向けの店みたいになって、誰も寄りつかないよ。親分孝行も楽じゃない」。完全に“会長に愛人を供給するマシーン”と化してしまったソープランドだったが、更に腹立たしい話が本部長の耳に入った。何と、会長に捨てられた子が、本部長とは仲の悪い別の幹部が経営するデリヘルに入店したらしく、大繁盛しているとのことだった。本部長が経営不振のソープランドの権利を手放したのは言うまでもない。ヤクザと言えば、分裂や抗争の渦中で命を投げ出して奮闘する高倉健や菅原文太をイメージする読者が多いのかもしれない。しかし、親分や兄貴分の無理難題や、またその友人や愛人に纏わる理不尽、更にはカネやクスリの誘惑に翻弄されているヤクザもいるのだ。カタギに様々な人がいるように、ヤクザもまた様々なのである。 (絵/イラストレーター タカミトモトシ)


キャプチャ  2017年9月号掲載

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