【混迷ホワイトハウス】(01) 統制、乱すのは大統領

側近や高官の相次ぐ辞任で混迷するホワイトハウス。綱渡りのドナルド・トランプ政権の舞台裏に迫る。

20170914 01
大統領のドナルド・トランプ(71)が、17日間の夏休みからホワイトハウスに戻り、執務を再開した先月21日。「大統領が目を通す書類は、私が必ず事前に点検する」「重要政策は必ず報告を求める」。大統領首席補佐官のジョン・ケリー(67)は、2枚のメモを職員に配った。就任初日の7月31日には、幹部を集めて宣言していた。「大統領への面会は約束のある人に限る」。例外は、夫人のメラニア(47)と息子のバロン(11)のみ。「貴女も補佐官として会うなら同じようにしてほしい」。傍らにいたトランプの長女・イバンカ(35)にも告げた。大統領が会う相手を調整し、職員を束ね、政策の実現に向けた司令塔となる首席補佐官。従来の政権なら当たり前の役割を態々周知する必要があったのは、ケリーが来るまでのホワイトハウスに勝手が罷り通っていたからだ。元海兵隊大将で40年超の軍歴を持つケリーは、ホワイトハウス職員から“将軍”と尊敬を集める。秩序を乱しているのは誰か? トランプ当選の立役者で、最側近の首席戦略官兼上級顧問であるスティーブン・バノン(63)の振る舞いは目に余っていた。「国務省から追い出してやる」。バノンは、国務長官であるレックス・ティラーソン(65)の人事権を無視して、国際協調を重んじる東アジア政策担当の高官の解任を主張。率いてきた極右ニュースサイト『ブライトバートニュース』は、安保政策の主張が相容れない大統領補佐官のハーバート・マクマスター(55)を「トランプの敵だ」と批判し、駆逐を図った。「イバンカが執務室に駆け込んで大統領に泣き付くことは無くなる」。対立関係の長女を封じ込められると考えたバノンは、周囲にこう語り、ケリーの規律導入を歓迎していた節さえあった。

だが、追い込まれたのはバノンのほうだった。大統領の家族や高官らとの軋轢は強まり続け、遂にはトランプの怒りも買うようになった。ホワイトハウスがバノン更迭を発表したのは先月18日。実はそれ以前に、バノンはケリーとの間で「8月半ばに円満退任する」と合意していたとされる。筋書きを狂わせたのは、先月12日にバージニア州で起きた白人至上主義者と反対派の衝突事件だ。白人至上主義者の名指し批判を避けたトランプが非難を浴びた。イバンカや、その夫で上級顧問のジャレッド・クシュナー(36)の進言もあって、ケリーは沈静化に乗り出した。リベラル系への配慮を不要とみるバノンは、「『遅過ぎるし、不十分だ』と言われるに決まっている」と猛反発。この対立が解任に帰結した。バノンが去ったホワイトハウスは、“軍人主導”の様相を呈し始めた。ケリーに陸軍中将のマクマスター、そして元海兵隊大将である国防長官のジェームズ・マティス(66)――。上意下達の軍隊の気風と、部下に忠誠を求めるトランプの肌合いが合うのか、それとも陸軍幼年学校に通った経験がそうさせるのか。軍人に特別な敬意を払うトランプは、今のところ彼らを重用している。ケリーらは、アメリカ軍のアフガニスタン駐留に否定的なトランプを翻意させ、軍増派の道を開く新戦略決定にこぎつけた。ケリーを支柱に、混迷脱却への歯車が回り始めたかに見えるホワイトハウス。だが、流石の将軍でも、“奔放な最高司令官”トランプまでは統制し切れない。先月15日、ニューヨークのトランプタワー。インフラ整備を発表するトランプの記者会見で、ケリーは質問を受け付けない段取りを整えていたのに、バージニアの衝突事件について問われたトランプは、「双方に非がある」と発言。国内外からの反発の火に油を注いだ。「大統領は孤独を感じている」。バノン側近で共に解任された前大統領副補佐官のセバスチャン・ゴルカ(46)は最近、ケリーに律せられたホワイトハウスの内情を明かした。居心地の悪さを覚え始めたトランプは、どこまで耐えられるか? 政権を正常軌道に乗せられるかは大統領次第だ。国際情勢は緊迫の度を増している。アメリカの威嚇と圧力を嘲笑うかのように、北朝鮮は弾道ミサイル発射を続け、一昨日には過去最大規模となる6回目の核実験を強行した。ホワイトハウス立て直しにかけられる時間的な余裕は無い。 《敬称略》


⦿日本経済新聞 2017年9月5日付掲載⦿
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