【ドクターXは知っている】(14) 抗認知症薬でQOL(人生の質)が下がる?

20170915 05
日本では現在、65歳以上の7人に1人が認知症であり、患者数は約500万人に上ります。認知症と診断されると、殆どの場合、抗認知症薬を用いた治療が始まりますが、「誤った処方も多い」と憂慮するのは内科医の長尾和宏先生です。「私は抗認知症薬を否定はしません。但し、増量規定は間違っていると思います。増量規定というのは、例えばアリセプトなら、全員が1日1回3㎎から開始して、1~2週間後に5㎎まで増やさなければいけないという規定です。薬の至適用量には大きな個人差があるにも拘わらず、です」。至適用量とは、薬剤の効果が最も得られる用量のこと。3㎎の投与がべストである患者でも、規定により問答無用で5㎎に薬を増やさねばならないとしたら、それは目の前の患者の症状を無視したナンセンスな行為です。「様々な薬の中で、増量規定があるのは抗認知症薬だけ。医師は、その不可解さに気付かなければいけません。実は2016年6月1日、厚生労働省は事務連絡で抗認知症薬の少量投与を認めています。ところが、現在も多くの医師が増量規定に則った処方をしているのが現状です」(長尾先生)。事務連絡というのは、省庁が発する重用度が然程高くない通達です。厚生労働省の見解としては増量が基本であり、少量投与はあくまでも例外ということなのでしょう。

「脳に働く薬の効き方は個人差が大きく、例えばモルヒネはその開きが100倍以上もあります。抗認知症薬も個人差があって当然でしょう。増量規定に従って過剰投与になれば、食欲が無くなる・怒りっぽくなる・歩行が困難になる等の副作用が出て、高度の徐脈になると生命に関わります。繰り返しになりますが、抗認知症薬を全否定している訳ではありません。10㎎がベストの人もいれば、1.5㎎が最もよく効く人もいるということです」(同)。抗認知症薬が“効く”とは、どのようなことなのでしょうか? 「個々の患者さんの元の状態にもよりますが、例えば元気がなかった人がしゃきっとなって笑顔が戻ることです。笑っていられて、ご飯が美味しく食べられて、自由に歩けるということ。つまり、QOLを保つということですね。ところが、増量規定を信奉する専門家の中には、過剰投与によって怒りっぽくなった患者について、『これは元気になったということだから、いいことなんだ』と主張する医者もいる。一体、誰の為の医療なのでしょうか?」(同)。抗認知症薬過剰処方の副作用による暴力・暴言・攻撃性の増大等、介護者の負担となる周辺症状を却える為に、抗不安薬・向精神薬・睡眠薬等が追加処方されて、“薬漬け”の状態になるケースも少なくないようです。高齢者医療の最前線で日々、認知症患者を診ている岡田正彦先生も、「患者の身になった医療こそが大切だ」と言います。「認知症とは、脳内の神経の信号を伝える物質が少なくなる病気です。抗認知症薬はその物質を補う、或いは分泌を刺激するといった作用のある薬ですから、頭が活性化し、興奮したり、怒りっぽくなったりします。それは、ご本人にとっては不幸なことではないでしょうか?」。岡田先生は、「薬を止めると皆さん、穏やかになるんです」と笑顔を見せます。「私の施設では、抗認知症薬の投与をほぼ止めました。穏やかになった患者さんには、リハビリで体を動かしてもらい、精神面のケアをする。当たり前のことが如何に大事かということです」認知症の治療は、本人は勿論のこと、家族や周囲の人にも大きな影響を及ぼします。抗認知症薬の効果と副作用について、知識を持っておきましょう。 (取材・文/フリーライター 浅羽晃)


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