【「佳く生きる」為の処方箋】(12) 夏の突然死にご用心

予報によると、今年の夏は例年以上の猛暑になるそうです。夏は暑さ・脱水・睡眠不足等で体調が崩れ易い季節。心筋梗塞や解離性大動脈瘤等による心臓突然死も起こり易くなります。特に、高血圧や心臓に持病のある人は、自覚症状が無くても知らず知らずのうちに体への負担が蓄積していますから、夏場はこれまで以上に体調管理に気をつけてほしいものです。降圧剤を服用している人は多いと思いますが、冬場からずっと同じ薬を飲み続けていないでしょうか。季節に合わせて衣替えをするように、本来なら降圧剤も薄着ならぬ減量をするべきです。何故なら、冬と夏では血圧が大きく変動するからです。皆さん、冬場は寒さの為に発汗が少ないと思いますが、それは皮膚の毛細血管が収縮して熱を放散しないようにしているからです。逆に夏場は、皮膚への血流を保ち、発汗を促して体温調節をする為、血管の抵抗が下がったりして自然と血圧が下がります。個人差はありますが、冬場に比べ10~20mmHgほど低下します。例えば普段、降圧剤で収縮期血圧を130〜140mmHg経度に抑えている人が、夏場になると110mmHgくらいにまで下がることもありますが、これは明らかに下がり過ぎです。実際、この時期は待合室等で低血圧発作を起こす患者さんが出てきます。時間は朝の11時から11時半辺り。やっと診察が終わって、後は会計だけとホッとした頃に、朝飲んだ降圧剤が効いてきて血圧が急低下し、倒れてしまうのです。診察が終わったという解放感・脱水・薬の効き過ぎ等が複合的に働いた結果と考えられます。何故か週の前半に多い傾向があります。因みに、心筋梗塞の発作は月曜日の午前に多いことがわかっています。

降圧剤を飲んでいる人は血圧を小まめに測って、下がり過ぎていないか、是非チェックをして下さい。いつもより2割も低下していたら要注意。薬を替えたり、量を減らしたりする対応が必要です。勿論、ふらつき・立ち眩み・手足が冷たい等の症状が出ている場合は既に黄色信号ですから、医師に相談を。降圧剤の効き過ぎは低血圧を招くだけでなく、腎臓への負担にもなります。もう1つ、注意したいのが脱水です。体の水分が足りなくなると血液がドロドロになり、血管が詰まったり、血栓(血の塊)ができ易くなったりします。誰でも汗をかくと脱水に傾きますが、降圧剤を飲んでいると、それが特に進み易い。抑々、降圧剤には体液量を減らす作用があるからです。また、狭心症のカテーテル治療で冠動脈にステント(金属製の筒)を留置している人も脱水が進み易いので、血栓ができ易くなります。そういうところに薬の飲み忘れが重なったりすると、いきなり冠動脈が詰まって心筋梗塞を起こすことも。最悪の場合、突然死に至ることもあります。脱水による体液バランスの乱れは、心房細動等の不整脈も招きます。心房細動は脳梗塞の引き金になりますが、脱水で血液がスムーズに流れないと血栓もでき易くなり、脳梗塞の危険性が上がるのです。兎も角、夏場は十分に水分補給をして脱水を予防することが肝心です。暑いからとビールをがぶ飲みしたりすると、アルコールの利尿作用で脱水が更に進むことも知っておいて下さい。確かに、キンキンに冷やしたビールは格別ですが、やはり飲み過ぎはいけません。働き盛りの方は無理をせず、「疲れた」と思ったら休憩することも大切です。夏本番。心臓を労り、元気に猛暑を乗り切りましょう。


天野篤(あまの・あつし) 心臓外科医・『順天堂医院』院長。1955年、埼玉県生まれ。日本大学医学部卒。『亀田総合病院』『新東京病院』等を経て、2002年に順天堂大学医学部心臓血管外科教授に就任。2012年2月18日に天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀。2016年4月より現職。著書に『一途一心、命をつなぐ』(飛鳥新社)・『この道を生きる、心臓外科ひとすじ』(NHK出版新書)等。


キャプチャ  2016年7月28日号掲載
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