【霞が関2017秋】(03) ネット・テレビの同時配信、飛びたてぬ人々と逃す魚

長雨続きだったこの夏、テレビ業界に晴れ間がさした。8月下旬に日本テレビ系列で放送された恒例の『24時間テレビ』。番組中のマラソンランナーに選ばれたのは、お笑いタレントのブルゾンちえみさんだった。制作側は、番組が始まっても誰が走るのかを隠し続ける異例の対応をし、視聴者の飢餓感を煽った結果、瞬間最高視聴率40%を叩き出した。「さすが日テレさん」と、他の民放関係者はSNSで呟いた。テレビ離れ加速の中での復権の兆し。確かに、放送業界では明るい話題として迎えられたが、将来像まで見渡した時には万歳三唱と言い切れるのだろうか? インターネットで話題を作り、番組を見てもらうというやり方は、以前から使われていた伝統的手法。それで視聴率を上げるという発想は、今も国内の放送局が「視聴率頼み・広告頼みの経営スタイルが通じる」と信じていることの裏返しである。出演者や制作陣を個別に攻撃する意図は無いが、伝統的手法に基づく成功例が、放送の新しいビジネスモデルに向けた意欲を下げる可能性は大いにある。新ビジネスモデルの象徴は、テレビ放送をインターネットで同時に配信する“常時同時配信”であろう。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、常時同時配信を整備し、世界に誇る放送インフラを作り上げる――。大きな目標が掲げられているが、足元では“勢いよく飛び立てぬ人々”・“踏ん切りつかぬ人々”ばかりが目立つ。先ず民放各社。通信インフラや著作権管理等に関するコスト増を強烈に警戒する。勿論、その裏には、「インターネット配信が主流になれば、テレビ離れを一段と加速させ、CMを見てもらえなくなる」という危機感が横たわる。広告依存モデルから脱する踏ん切りはつかない。

続いてNHK。東京オリンピックを見据え、多額の受信料収入を基に配信技術を開発する絵を描き、最も前のめりだったが、自らブレーキをかけ始めている。所謂“インターネット受信料”の構想と思いを先行させた結果、民放から「官業肥大化だ」との反発も受けた。では、行司役で、放送行政を担う総務省の姿勢はどうか? 放送と通信の融合は、予て同省が掲げてきた推奨ビジネスモデルだが、様子見を決め込む姿ばかりが目立つ。事業者同士の調整だけでは、時間ばかりが過ぎていくのは明白。音頭を取るべき局面に来ている筈なのに、どうも腰が重い。テレビ文化には、確実に地殻変動が起きている。「2歳の息子はテレビは見ない。タブレット端末で動画投稿サイトのYouTubeばかり見ている」。総務省の中堅職員は苦笑する。同省でブログを持つある幹部は、毎週のように動画配信『NETFLIX』で視聴した連続ドラマの感想を綴る。総務省の情報通信白書によると、2016年のテレビのリアルタイム視聴時間は1日平均で168分と、4年で17分縮小した。10歳代に限ると、1日平均89分に落ちる。こういった層が将来、広がってくるのは目に見えている。海外を見てみれば、特にアメリカでは一気に時代が進んでいる。ABC・NBC・CBS・FOXの4大ネットワークは今春、『YouTube』での常時同時配信に踏み切った。放送局は最早、視聴率頼みのスタイルから離れ、兎に角、視聴ニーズに沿った提供を急ぎ、新たなビジネスモデルを開拓しようと逸早く踏み出している。進まない国内の常時同時配信の議論。少なくとも、一時の成功例に捉われ、「まだまだ視聴率を上げて広告で稼ぐことが通じる」という考えが染みついていると、日々変化しつつある視聴スタイルに追いつけなくなる。そして、変化・変革を恐れる企業と行政には、いつも“ガラパゴス”という不名誉な肩書きがついてくる。 (秋山文人)


⦿日本経済新聞電子版 2017年10月10日付掲載⦿
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