【昭和&平成放送禁止大全】(10) 「私作る人、僕食べる人」は男女差別!? 『ハウス食品』の『シャンメン』CM

20171114 08
2016年の電力自由化から業界に参入した『ENEOSでんき』のテレビCMが物議を醸したのは、記憶に新しい。美人タレントの小池栄子演じる主婦が、友人に「自由に使えるお金が少ない」と愚痴をこぼし、遂には「解決策は2つあるわ! 安い電気に替えるか、稼ぎのいい夫に替えるか!」と言い放つという内容だ。中々ブラックユーモアが利いた名CMだと思えるのだが、インターネット上では一斉に非難の声が上がった。あまりに一方的な夫婦関係に、「男性蔑視・女尊男卑だ」との指摘が相次いだのである。まぁ、モラルハラスメントが原因で離婚するタレント夫婦に注目が集まるほど世間が敏感になっているのだから、炎上も致し方がないということだろうか。こうした男女差別が大問題に発展したCMは、これが最初ではない。恐らく、その元祖は、国際婦人年の始まった1975年8月末から放映された『ハウス食品』の即席ラーメン『ハウスシャンメンしょうゆ味』のCMだ。といっても、全くブラックな内容ではなく、寧ろ今の目で見ても可愛らしい、他愛もないものだった。主演は結城アンナと佐藤祐介。結城は当時、岩城滉一の妻としても有名な若手女優で、佐藤は美少年として売り出し中の人気若手男優であった。先ず結城が、小学生くらいの少女と一緒に「作ってあげようシャンメン For You~♪」と歌ってダンス。そして自分を指差し、「私、作る人」とニコ! 続いて、佐藤も自分を指し、「僕、食べる人」とニコ! これだけの内容である。しかし、ガールフレンドの姉妹がボーイフレンドにラーメンを作ってあげる――これが大問題だったのだ。

放送を始めて1ヵ月後の9月、市民運動グループ『国際婦人年をきっかけに行動を起こす女たちの会』所属の7人の女性が、「男は仕事、食事を作るのは女性と決め付け、旧態依然とした性別役割分業をより定着させる女性蔑視のCMの中止」を求め、ハウス食品へ抗議に訪れたのである。この抗議活動は、グループの会員の娘が「テレビのCMのせいで男の子が学校の給食当番をやらなくなった」と話したのがきっかけだったらしいが、対企業闘争が大好きな大手新聞に書き立てられ、瞬く間に世間が知ることに。同CMは、タレント人気と印象的なコピーでお茶の間で好評を博していたが、結果的に「社会的影響を無視できない」という判断の下、約1ヵ月で放映中止に追い込まれてしまう。市民運動家たちや新聞社からすれば、大企業に打ち勝ったのだからしてやったりという訳だが(※当時は未だ学生運動の残りカスである闘争史観を信じ続けている運動家も少なくなかった)、ハウス食品には「CMはあのままでいい」という圧倒的多数の消費者の意見が寄せられていたという。CM中止には、「市民運動家を相手に、これ以上問題を拗らせ、マイナスイメージを植え付けられたくない」との判断もあったのは、想像に難くない。抑々、CMの狙いは「作る人の愛情が加わるとラーメンがより美味しくなる」というものだ。広告代理店は、企画当初、ラーメンに対する意識調査を行い、小学校高学年の女の子から「家族に作ってあげている」との回答を得て、先のCM企画を作り上げていった。ただ、それを“作る人”・“食べる人”の印象的なキャッチコピーで二元化してしまった為、妙な誤解を生んでしまったのである(※でも、最後のシーンでは男の子も女の子も仲良く食べているのだが)。勿論、戦後の男女同権を確立するまでの道程は、並大抵のものではなかった。女性に参政権が認められたのは1945年。民法改正で戸主制度が廃止されて財産の均分相続が定められたのは1947年。それから、1960年代後半に起こったアメリカの女性解放運動『ウーマンリブ』は、日本にも伝播し、1970年、渋谷区で第1回ウーマンリブ大会が開催された。1972年には勤労婦人福祉法が制定されたが、それでも未だ女性蔑視・男尊女卑はあからさまな世情として残っていた。シャンメンのCMが中止に追い込まれた事件は、殆ど曲解や誤解ではあろうが、それでも差別問題の理解を広める“功”の一面があったことを考慮すれば、致し方がないのかもしれない。何かにつけ抗議しなければ、女性の権利は変わってこなかったのだ。しかし、冒頭のENEOSでんきのCMが、物議を醸した“ユニークな話題”で終わってしまったことからもわかるように、40年以上経っても、まだまだ世の中は男性優位主義が続いているようだ。 (大衆文化研究家 幕田けいた)


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