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【ある意味犯罪は希望だ】(05) 昏睡強盗の社会学

“声優のアイコ事件”の被告に懲役2年の判決が出たのは今年の4月のこと。犯人は2013年から2014年にかけて、街で知り合った男性に“声優のアイコ”と名乗りながら声をかけ、睡眠薬を飲ませての昏睡強盗等を繰り返して、270万円ほどの現金や腕時計等を奪った。捜査の過程で、防犯カメラに映った昏睡強盗犯には見え難い容姿をした犯人の姿が公開され、一部で話題になっていた。ただ、多くの昏睡強盗はより緻密、且つ組織的に行なわれており、この事件ほど話題になることなく闇に葬り去られている。「最初に昏睡強盗知ったのは、未だインプリンターの時代だったね。インプリンターってのは、リモコンみたいなの持ってクレジットカードをガッチャンってして、カーボン紙でカード番号とかを複写する機械。それで情報を写して、サインと金額、勝手に書いちゃう訳。客は1ヵ月後、『クレジットカードで知らない支払いがあった』と気付くけど、『酔っていたからな…』と記憶も曖昧で、結局、泣き寝入りすることになる」。10代後半から職を転々とし、食えなくなると歌舞伎町のキャッチの仕事を断続的にしながら25年。自分が直接犯行に手を染めないまでも、昏睡強盗をできそうな客を店に紹介してきたという男は、そう振り返った。今は昏睡強盗全盛の時代だ。警察庁の統計では、強盗・準強盗は10年以上減少傾向にあるが、昏睡強盗は根強く起こり続けている。

この男が言う通り、昔は昏睡強盗と言っても、精々泥酔して寝ている客の財布に入っている分のカネを抜き取る程度で、今ほど普及していなかったクレジットカードを狙うなんて“高度な技術”だった。しかし、その頃より今は便利な世の中になった。多くの人が財布にクレジットカードも電子マネーも忍ばせ、街に行けばいつでも銀行口座からカネを下ろせるATMがある。これを狙っているのが外国人の女たちだ。「エステでもスナックでも皆やってるよ。1人40万~50万、良い時は1日で200万くらい稼いだこともあった。酔ったらわからなくなる男、日本にいっぱいいるよ。同じ人から2回盗ったこともあるね」。東京都内の連れ出しスナックで働く30代の中国美女は、こう語る。「酔わせて空の瓶をテーブルに並べて会計すれば払う。ベロベロだったらATM連れて行く。それだけ」という。勿論、この昏睡強盗には、裏人脈とパイプを持って仕組まれるケースも多い。「いけると思ったら昏睡やっている店に連れて行って、あとは向こうの判断で自由にして下さいって。俺は、上手くいったら“売り上げ”の1割を取っている感じ」(前出のキャッチ)。嘗ての昏睡強盗は睡眠薬を入れるのが定番だったが、薬を使うと逮捕されるリスクが格段に上がる。「だから、ちゃんと接客してベロベロにさせる」(前出のスナックの女)というから、寧ろタチが悪い。今は、昔のように札束持ってキャバクラで豪遊するのが格好いい時代ではない。「昏睡強盗は、逮捕されずに客から手っ取り早く高額のカネを盗れる唯一の手段」という声もある。言ってみれば、夜の街の“荒んだ希望”だ。繁華街の景気は悪化する一方だ。リスクがあっても昏睡強盗に希望を見出す夜の世界の住民の未来は、どこに向かうのだろうか――。


開沼博(かいぬま・ひろし) 社会学者・立命館大学衣笠総合研究機構准教授・東日本国際大学客員教授。1984年、福島県生まれ。東京大学文学部卒。同大学院学際情報学府博士課程在籍。著書に『“フクシマ”論 原子力ムラはなぜ生まれたのか』(青土社)・『漂白される社会』(ダイヤモンド社)等。


キャプチャ  2018年1月号掲載
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