【人が集まる街・逃げる街】(12) 鳩山ニュータウン…嘗て栄えたニュータウンで深刻化する“孤立化”

東武東上線の高坂駅からバスで10分。1970年代から1990年代にかけ、『日本新都市開発』(※2003年に特別清算)が開発・分譲した埼玉県内有数の住宅街『鳩山ニュータウン』がある。高坂駅から池袋駅まで急行で52分。東京駅近辺の都心に出る為には、バスや乗り換え時間を含めて1時間半ほどかかる距離だ。鳩山ニュータウンが売り出されたのは、日本経済が急成長を遂げた時代。その街並みの美しさが人気を博し、数々の賞も受賞した。分譲末期の1990年代に売り出された同ニュータウン内の松韻坂地区の住宅は、1戸当たり1億円を超える分譲価格がついた。国土交通省によれば、全国に鳩山ニュータウンのようなニュータウンは2009ヵ所、面積は合計で18.9万haに及ぶ。その多くが1970年代後半から1980年代前半にかけて建設された街だ。そんな輝かしい実績を持つ鳩山ニュータウンは今、容赦ない人口減の波に襲われている。鳩山町の人口統計によれば、ニュータウンを構成する松ヶ丘・楓ヶ丘・鳩ヶ丘の3地区の人口は、2000年に9979人だったのが、2017年末に7256人に。17年間で27%もの人口が減った。今後も減少の一途を辿り、2040年には5100人にまで減少する見込みだ。問題は人口減少だけではない。住民の高齢化も著しい。総人口に占める65歳以上の高齢人口の割合は、2015年時点で44%に達しており、この数値は全国平均の27%を大幅に上回っている。

2040年にその数値は53.9%となり、住民の過半が高齢者になると予測されている。ニュータウンが属する鳩山町の空き家の割合は8.9%(※2013年住宅・土地統計調査)と、県全体の空き家率10.9%を下回る。しかし、今後高齢者層が一斉に亡くなると、多くの住宅が空き家になることが予測されている。人口減少や高齢化、それに住宅の空き家化が重なれば、タウン内の商業施設撤退の要因となる。加えて、学校の統廃合や医院の閉鎖等も、こうした郊外住宅地では確実に起こってくる。今、地方で深刻化している街の“孤立化”が、遠くない将来、首都圏のニュータウンでも着実に生じるのである。鳩山ニュータウン内の瀟洒な家を眺めていると、「ここで育った子供や孫は何故、故郷に戻ってこないのか?」との疑問が生じる。だが、彼らの多くは親の世代とは異なる共働き世帯。子供を保育所に預け、1時間半をかけて都心に通勤するという選択肢は取り難いのが現状だ。こうした状況は不動産価格にも如実に反映される。鳩山ニュータウンの中古戸建て住宅の売り出し価格は、場所や物件にもよるが、現在では600万円台にまで落ち込んでいる。この街の住民の多くが住宅を買い求めた時代。日本中の都市で、人々は都心から放射状に延びる鉄道沿線の郊外住宅を買い求めた。そこでは1時間以上の通勤に耐えることと引き換えに、多くの人が“家”という財産を手にした。しかし、時代は変わった。そうした郊外のニュータウンで育った子供は故郷に帰らず、残されたのは老朽化した住宅と老いた住民ばかり。鳩山ニュータウンは今後、どのようにして街としての持続可能性と不動産価値を保っていくのか? 2020年以降の街の絵姿は見え難いのが現実だ。


牧野和弘(まきの・ともひろ) 不動産事業プロデューサー。1959年、アメリカ合衆国生まれ。東京大学経済学部卒。『第一勧業銀行』(※現在の『みずほ銀行』)や『ボストンコンサルティンググループ』を経て、1989年に『三井不動産』に入社。『三井不動産ホテルマネジメント』に出向した後、2006年に『日本コマーシャル投資法人』執行役員に就任し、J-REET(不動産投資信託)市場に上場。2009年に『株式会社オフィス・牧野』、及び『オラガHSC株式会社』を設立し、代表取締役に就任。2015年に『オラガ総研株式会社』を設立し、代表取締役に就任。著書に『なぜビジネスホテルは、一泊四千円でやっていけるのか』(祥伝社新書)・『2020年マンション大崩壊』(文春新書)等。


キャプチャ  2018年2月3日号掲載
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