【崩壊する教育現場】(15) 事前対策が当たり前に…迷走続く全国学力テスト

20180212 17
「都道府県対抗、市町村対抗、そして学校対抗の競争に終始している。学力テストの為の勉強に授業時間を割くのは本末転倒だ」――。秋田県のある教員は、そう不満を口にする。文部科学省は先月28日、今年度の『全国学力・学習状況調査』(※以下“学力テスト”)の結果を公表した(※右表)。学力テストの対象は全国の国公立校、及び参加を希望した私立校に通う小学6年生と中学3年生だ。秋田県は毎年全国トップクラスの成績を収めており、成績を上げたい他県から“秋田詣で”が相次ぐ。成績が良かったある学校には、年間60回の視察があったという。ところが、その実力が本物なのか判然としない。『秋田県教職員組合』が実施したアンケートによれば、今年度は県内の小学校の92.2%、中学校の74.2%が対策を実施していた。普段の学習で身に付いた力が発揮されて好成績に繋がっているのか、或いはテスト対策によって嵩上げされたものなのか、不透明なのだ。「そろそろ止めたらよい。学力テストに関する労力は大きい。多忙化に繋がる」。アンケートからは教員たちの本音が浮かび上がる。実際、対策にかかる負担は小さくない。主に授業時間内に行なわれる為、通常授業が遅れる。学校によっては、それを回避する為に、総合的な学習の時間を削って手当てしている。対策の中心は過去問だが、出題傾向も毎年変わっていく。その為、授業だけではなく、宿題という形で児童生徒に問題を解かせているケースもある。そのチェックや指導等をするのは教員だ。テストの採点業務も負担の増加に繋がる。採点やデータの作成は国が行なっており、その結果が届くのは8~9月だ。ところが秋田県では、国に提出する前に答案のコピーを取って学校で先に採点し、分析を行なっている。学力テストが行なわれるのは毎年4月。新しい学年や学級になったばかりで、只でさえ忙しい時期に、こうした事務作業が上乗せされることに、教員たちは苦痛を感じているのだ。学力テストの結果が県の宣伝材料になっている面があり、「知事や教育長等が点数や順位に拘り過ぎているように思える」との声も上がる。低い点数だと指導を受けるといったことも少なからずあるようだ。

学力テストは基本的に国語と算数(※中学生は数学)の2教科だが、来年度は3年ぶりに理科が実施される他、2019年度からは英語が導入される(※理科・英語とも3年に1回実施)為、更に負担が重くなるとみられる。秋田県以外にも学力テスト対策を行なっているところはある。だが、「全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握・分析し、教育施策の成果と課題を検証し、その改善を図る」というのが学力テストの本来の趣旨だ。小学校の出題は1~5年生の履修範囲を対象としている。直前にテスト対策を行なうのではなく、それまでの授業の中で様々な問題に対応できるような学力を身に付け、学力テストで確認するのが理想的な使い方だ。ところが現状は、対策をして高得点を取ることが目的化している面が否めない。学力テストで競争が激化するのは今に始まったことではない。学力テストには前身がある。1956~1966年に実施された『全国学力調査』だ。この調査は、地域間・学校間での競争が激化し、1966年に旭川地方裁判所が国による学力調査は違法と認定(※最終審では「違法性は無い」と認定)したこともあって、中止された。ところが、2007年度に復活している。『経済協力開発機構(OECD)』が3年に1回行う『学習到達度調査(PISA)』において、2回連続で順位を落としたことがきっかけだ。文科省は過度な競争やテスト対策を問題視している。専門家会議によって示された今後の改善の方策についても、「数値の上昇のみを目的とした行き過ぎた取り扱いは、趣旨・目的を損なうものである」と厳しく批判している。文科省学力調査室の担当者は、「学力テストの目的に沿って、小6・中3だけではなく、他学年も含めた学校全体で取り組みが行なわれれば、対策は必要ない」と話す。出題される問題には、「“こういう力を付けてほしい”というメッセージも込められている」(同)という。学力テストは、この10年で様々な試行錯誤が行なわれてきた。2010~2013年度には、競争の緩和を狙って、テストを行なう学校を抽出して調査する方式を導入。ところが、1人ひとりの躓きを解消する為として、2014年度に全学校を対象にする方式に戻した。結果の開示方法に関しても、過度な競争を促さないように、正答率は小数点以下の開示を止め、整数表示にする等している。また、学校側に結果を提供する時期の変更等も含め、様々な検討を進めているという。10年間で浸透した競争や対策への現場の意識を変えるのは、そう簡単ではない。児童生徒の学力向上の為に、最善の形式はどれなのか? 文科省の模索が続く。 (取材・文/本誌 藤原宏成)


キャプチャ  2017年9月16日号掲載
スポンサーサイト

テーマ : 教育問題
ジャンル : ニュース

轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

产品搜索
广告
搜索
RSS链接
链接
QR码
QR