【霞が関2018冬】(06) 子育て支援の企業拠出金、日商怒らせた官僚たち

政府は今月6日、保育所に入れない待機児童の解消等を目指す『子ども・子育て支援法改正案』を閣議決定した。この法案の特色の1つは、待機児童解消の財源を企業の拠出金に求めたことだが、その法案作りの過程で思わぬトラブルがあった。大企業グループが早々に了承したにも拘わらず、中小企業の意見を代表する『日本商工会議所』がぎりぎりまで応じなかったのだ。「体力の無い中小企業には厳しい内容だったから」と思いがちだが、それだけではない。「経団連だけじゃなく、日商にもしっかり根回しをしたほうがいいですよ」――。企業に拠出金を求める方向性が政府内で固まりつつあった昨秋、ある厚生労働省の官僚は内閣府の担当者にこう囁いた。「保育所の整備は、人手不足に悩む企業の為でもある」。こんな理屈で企業負担を求める訳だが、政府内には不安もあった。給与総額に応じて負担額を決める拠出金は、大企業よりも経営体力が乏しい中小企業が6割を負担してきた為だ。経団連と日商の対応は分かれた。安倍晋三首相は昨年10月末の『人生100年時代構想会議』で、企業に3000億円の拠出を要請した。これに対し、主に大企業で構成する『日本経団連』の榊原定征会長は、早々に前向きな発言をした。ところが、中小企業を取り纏める立場にある日商の三村明夫会頭は、数日後の記者会見で「聞いていない」と明確に反発。2018年度予算を策定する年末ぎりぎりまで反発は続いた。

保育所の整備は、子育てでキャリアを途切らせない為の大切な施策だ。有望な人材が退職すると穴埋めが聞かない事情は、大企業より中小企業のほうが深刻で、『日本銀行』の調査では、大企業よりも中小企業のほうが人手不足感が強い。こんな事情を考えれば、日商ももう少し前向きな対応ができた筈で、実際に最後は受け入れることで降りた。それでも最後まで反発したのは、「中小企業だから負担の力が無い」という表向きの理由があったからだけではない。霞が関の官僚たちの進め方が拙かった。子育て支援は厚生労働省の所管だが、政策全体は首相官邸を中心に纏めている。待機児童の解消や幼児教育・保育の無償化等が一連の政策パッケージとして、衆院選を前にした安倍晋三政権の目玉政策となっていた。取り纏め担当として内閣府が動くと、厚労省は蚊帳の外になりがちだ。ところが、日商によると「内閣府から事前の根回しは一切無かった」。根回しをして了解を得ておくよりは、政府の方針として伝えるという方策を選んだようだ。抑々、霞が関の総合調整的な役割が多い内閣府は、業界団体との付き合いは他省庁ほど多くない。こんな状況での“ポテンヒット”が日商に不信感を残した。その後、政府は合意形成が間に合わないことを恐れ、11月中旬に担当大臣である茂木敏充経済財政再生担当大臣が三村氏の元へ足を運んだ。ただ、その会談でも三村氏は首を縦に振らなかった。中小企業向けの保育所の整備を支援することを手土産に、年末ぎりぎりに開いた松山政司少子化担当大臣と三村氏の会談で、漸く合意に至った。待機児童ゼロに向け、責任を持っているのは誰か――。霞が関での主導権争いや“お見合い”を続けている限りは、前に進まないことだけは間違いない。 (矢崎日子)


⦿日本経済新聞電子版 2018年2月13日付掲載⦿
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