NTTドコモ、M&Aでまた“勉強代”60億円

2018-02-20T23:25:21+09:00

Posted by George Clooney

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経済

20180220 07
「うちはそこまで軽くみられていたのか」――。有機・低農薬野菜等の食品宅配大手『らでぃっしゅぼーや』(東京都新宿区)の関係者から恨み節が聞こえてくる。親会社の『NTTドコモ』が、保有するらでぃっしゅ株を、今月末までに同業の『オイシックスドット大地』に売却すると発表したことに対してだ。1988年設立のらでぃっしゅは、全国16万世帯の会員に1万1000品目の農畜産品等を届ける。生産者と直接契約し、通常のスーパーマーケットに無い食品を取り揃えるのが特徴だ。嘗てはニッチとされた有機食品市場だが、東日本大震災で原発事故が起きると、日本でも食の安全に対する関心が高まった。ここに目をつけたドコモが、2012年にらでぃっしゅを買収した。ドコモは2011年に策定した2015年までの中期計画で、M&Aをてこに食や健康等通信以外の事業領域の拡大を掲げていた。らでぃっしゅの買収は、そのはしりだった。通販サイト『dショッピング』の立ち上げを控え、食の安心・安全を訴求すれば新サイトの目玉にできる。全国約2400店の携帯電話販売店『ドコモショップ』を通じて客を呼び込むことも想定していた。

一方のらでぃっしゅ側にとっては、携帯最大手のドコモ傘下になることで、顧客基盤の拡大という期待があった。だが、思惑は外れた。買収以降、らでぃっしゅの売上高は横這い続き。同業のオイシックスが売上高を約6割伸ばしたのとは対照的だ。官報掲載の決算公告によると、らでぃっしゅは2度に亘り営業赤字を計上した他、資産価値の見直しで減損処理を迫られ、買収前に39.4%あった自己資本比率は、2017年2月時点で5.4%まで落ち込んだ。買収後5年半で手放すことについて、ドコモの吉沢和弘社長は「食の事業領域で経験を積むことができた」と一定の成果を強調するが、らでぃっしゅ側には複雑な思いがある。「ドコモに巨大な顧客基盤があっても、有機食品に興味を持つ客は限定的だった」と関係者は唇を噛む。今回、ドコモはらでぃっしゅをオイシックスに売却するのに合わせ、オイシックスが実施する第三者割当増資を引き受け、3%を出資する。食品宅配事業は継続し、「市場拡大に努めていく」(吉沢社長)とするが、果たしてその狙い通りになるのか? ドコモのM&Aは苦い経験の連続だ。2000年代にアメリカの『AT&Tワイヤレス』等に計約2兆円を投じたが、約1兆円の巨額損失を計上して撤退。インド最大の財閥である『タタグループ』の通信会社への出資も失敗に終わった。「海外投資は事実上凍結している」(ドコモ関係者)状態にある中、代わりに将来の成長の柱と見込んだのが、国内の異業種買収戦略だった。その象徴的案件だったらでぃっしゅの買収と売却で、差し引き60億円に上る“勉強代”を支払った。M&Aで中々成果を出せない“買収下手”を露呈したドコモは、いつまで勉強代を支払い続けるのだろうか? (取材・文/本誌 高槻芳・藤村広平)


キャプチャ  2018年2月19日号掲載
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