【アメリカ大統領選2016・現場から】(04) 通商政策…自由貿易へ“怒り”拡大

20160830 04
「自分たちは自由貿易の被害者ではないか」――。嘗て製造業等で栄えたが、経済のグローバル化で衰退した東部から中西部。“ラストベルト(錆び付いた工業地帯)”と呼ばれるミシガン、オハイオ、インディアナ州等では、中小企業や白人労働者層の間にこんな疑念が渦巻いている。「アメリカには安い製品がどんどん入ってくるが、こっちは輸出できないじゃない」。ラストベルトの一角であるニューヨーク州北部のローム市にある銅加工会社。営業担当者のエイミー・オシャウネシーさん(38)は吐き捨てた。同市は嘗て、全米の銅製品生産額の1割を占め、“銅の街”と呼ばれた。オシャウネシーさんの会社は、創業215年の老舗だ。だが、2000年頃から製品の納入先が次々と人件費の安いメキシコや中国に移転し、工場の閉鎖等で、500人以上の従業員の内、約170人がクビになった。同市の工場を案内してもらった。金属がぶつかる乾いた音と共に、手のひらほどの大きさの銅板を生産する機械が稼働していた。だが、その横では、生産縮小に伴い、幅3~4m・奧行き十数mの大型機械の廃棄に向けた洗浄が進められ、もうもうと蒸気が上がっていた。「ヒラリーが当選したら更に4年間、この状況が続く。負け組になった中間層の味方はトランプ氏」。オシャウネシーさんは20年近く民主党を支持してきたが、今回は同党候補のヒラリー・クリントン前国務長官(68)でなく、共和党候補のドナルド・トランプ氏(70)に投票するつもりだ。

20160830 05
民主党の支持基盤の労働組合にも、同様の声が広がる。「北米自由貿易協定(NAFTA)が仕事を奪い、貧困を齎した。環太平洋経済連携協定(TPP)もそうなる。だからトランプ氏を支持することにした」。ペンシルベニア州ミラーズバーグ市の工具メーカーで労働組合長を務めていたロバート・ハーシュさん(54)は語る。395人いた従業員は、この十数年で、ハーシュさんを含め約4分の3が一時解雇された。「ここでは碌な仕事は見つからず、現実から逃避する為、酒や薬物に溺れる者が出た。その結果、犯罪も増えた」。ハーシュさんは、「自由貿易が地域を荒廃させた」と怒りを隠さない。自由貿易について、オバマ大統領は「アメリカの21世紀の繁栄を支える雇用や経済成長を生み出す為、アメリカ製の商品を輸出する新しい市場を世界で創出することが不可欠だ」として、推進する立場を取ってきた。だが、生産拠点の移転等で2000年以降、アメリカの貿易赤字は高止まりし、安価な中国製品等の輸入増加や工場の海外移転で、恩恵を実感できない国民が増えている。トランプ氏は、こうした有権者に狙いを定め、過去の選挙で民主党の勝利が続いてきたラストベルトの接戦州をひっくり返し、勝利する戦略を描く。共和党は自由貿易を擁護してきたが、トランプ氏はNAFTAやTPPを「雇用を無くす協定だ」と批判し、「クリントン氏は支持してきた」としつこく攻撃している。クリントン氏は批判を躱す為、TPP反対を明確にした。両候補は今後も保護主義的な姿勢を強調するとみられ、世界最大の経済大国であるアメリカの通商政策の在り方が大きく転換する恐れが現実味を帯びている。 (有光裕)


⦿読売新聞 2016年8月22日付掲載⦿
スポンサーサイト

テーマ : 国際ニュース
ジャンル : ニュース

轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

广告
搜索
RSS链接
链接
QR码
QR