日本企業襲う空売りファンド、理はどこにあるのか――日本企業が相次ぎ標的に、どぎつい手法に割れる賛否

20160830 06
「事実誤認の多さや下品な表現を見て、非常に驚いた。当社のビジネスモデルも全く理解されていない」。『サイバーダイン』の山海嘉之CEOは、困惑を隠し切れない。「世界で最も途方もなく低価な株券」――。今月15日、日本の有望ベンチャー企業の1つとされるサイバーダインに突然、こんなリポートが突き付けられた(右写真)。発行したのは、アメリカに拠点を置く『シトロンリサーチ』。証券会社等から株を借りて売却し、値下がり後に買い戻して利益を得る“空売りファンド”だ。リポートの内容は、競合企業と比較して株価の割高感を指摘するもの。中には同社株を排泄物に擬える等、あまりに品位に欠ける表現も含まれる。だが、市場は敏感に反応した。翌16日のサイバーダインの株価は、一時、前日比225円安の1852円まで売り込まれた。19日にはサイバーダインが「事業特性を理解せず、分析が非常に浅い」等詳細な反論書面を公開したが、株価の反発力は鈍い。6月にサイバーダイン株の空売りを表明していた香港に拠点を置くファンド『オアシスマネジメント』創業者のセス・フィッシャー氏は、「サイバーダインの反論には新しい情報が殆ど無い」と冷ややかだ。空売りファンドが日本企業を標的にするケースは、初めてではない。先月27日には、『グラウカスリサーチ』が『伊藤忠商事』についてのリポートを発行。伊藤忠の株価は一時、約10%下落した。伊藤忠の会計処理が、減損損失を意図的に回避する等、“不正に”操作されている可能性を指摘するものだった。今月2日、伊藤忠の鉢村剛CFOが、第1四半期の決算説明会で「減損等は全て、監査法人から適正意見を貰い、処理している」等と反論したが、今月23日時点でリポート発行前の株価水準を取り戻せていない。ある市場関係者は、こう解説する。「空売りファンドは違法ではなくとも、“グレー”な部分を指摘し、それで株価が下がればいい。多数の投資先を持ち、複雑なグループ内取引がある商社や、将来性を見極め難い技術系ベンチャー等は標的になり易い」。イギリスの調査会社『アクティビストインサイト』によれば、2010年からアメリカの417社が空売り目的の調査リポートのターゲットになっている。

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世界を見渡せば必ずしも珍しい存在ではないが、“どぎつい”手法に初めて直面した日本の株式市場が動揺した。独立系運用会社『ミョウジョウアセットマネジメント』の菊池真代表は、「これまでに無いファンドの登場で、投資家が相当動揺したのだと思う。投資家が慣れれば、徐々に空売りファンドの株価への影響は小さくなるのではないか」と見る。果たして、空売りファンドに理はあるのか。見方は分かれる。空売りファンドが提示するのは、飽く迄も特定銘柄の株価についてのファンドとしての見立てだ。市場が反応して株価が下落すれば、手仕舞いして利益を確定する。サイバーダインの山海CEOは、「シトロンとサイバーダインの問題という以上に、証券市場と空売りファンドの問題。それだけに、『毅然と対応する必要がある』と考えて、反論を出した」と説明する。『日本取引所グループ』の清田瞭グループCEOは、伊藤忠とグラウカスの事例を受けて、「倫理的に若干疑問がある」と発言した。伊藤忠は、「グラウカスは、台湾で2014年に風説の流布等で訴えられ、損害賠償の支払いを命じられている」(広報)と指摘。グラウカスは否定しつつ、こう反論する。「エンロンの粉飾事件に最初に警鐘を鳴らしたのは、我々空売りファンドだ。市場は幅広い投資家を必要としている」(同社リサーチディレクターのソーレン・アンダール氏)。空売りファンドの“襲来”が齎している教訓は何だろうか。「伊藤忠は付け込まれる余地があった」。株式市場には、そんな声がある。例えば、伊藤忠は今年1~3月期にヨーロッパのタイヤ事業や青果のドール事業の減損等で、約900億円の損失を追加で計上。岡藤正広社長は、『三菱商事』と『三井物産』が減損で最終赤字に転落する見通しとなり、「急遽、落とせるものは落とした」と記者会見で打ち明けた。今年3月期の業績で商社トップの座を維持できる範囲で、恣意的に減損処理したと受け取られかねない発言だ。「日本企業は情報開示が不十分で、市場が非効率的なので、標的になり易い」(アクティビストインサイトのジョシュ・ブラック編集長)。『東芝』の不正会計で、企業の要求に監査法人が抗い切れない実態が明らかになり、日本市場の信頼感を損なった後遺症は大きい。企業は、標的とならない為にどうすべきなのか。IR(投資家向け広報)支援会社『ジェイユーラスアイアール』の岩田宜子代表取締役は、「透明性を持ったガバナンス体制を作り、日頃から投資家の信頼を得ておくことに尽きる」と指摘する。 (広岡延隆・大竹剛)


キャプチャ  2016年8月29日号掲載
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