【霞が関2016夏】(19) 金融庁長官の“新憲法”…処分庁から育成庁

「過去に成果を上げたからといって、従来の検査・監督のやり方をそのまま続ければ、却って弊害が生じかねない」――。金融庁の森信親長官は今月24日、新たな金融検査・監督の枠組みを議論する有識者会議の初会合で、こう強調した。金融庁は、『金融検査マニュアル』に代表されるようなルールに従わせる行政から、金融機関の主体的な取り組みを促す行政への転換を進めている。麻生太郎大臣は、「金融処分庁から金融育成庁への転換」と表現する。森長官が立ち上げた有識者会議には、「この流れを一過性で終わらせない」との強い思いが滲む。森長官は会議で、「金融庁は発足以来、個別の貸し出しが不良債権かどうか、銀行員に個別のミスが無いかだけに情熱を注いできたかのような印象が強いのではないか」とも語った。銀行側からすれば、「リスクを取った貸し出しが不良債権化し、金融庁から融資判断の妥当性を激しく追及されるくらいなら、リスクの少ない大企業や自治体向け融資を増やしたほうが得策」との考えが強かった。ただ、人口減少が進み、国際的にも低金利が続く中、こうした手法は成り立たなくなりつつある。それに合わせ、「金融機関の行動を大きく規定する金融庁の検査・監督手法も見直す必要がある」というのが、有識者会議の立ち上げの根底にある考えだ。金融庁は既に、銀行の個別の貸出資産の査定を止めており、検査官は銀行経営者と持続可能なビジネスモデルの在り方について議論している。金融機関に留まらず、その先にいる企業に対しても、初めて大規模な聞き取り調査を実施する等、新機軸を打ち出している。だが、森長官自身が「金融庁内・金融界共に、新しい取り組みが必ずしも十分に浸透していない」と漏らす。ある幹部は、「森長官をトップとする体制が代われば、形状記憶合金のように、再び“処分庁”に逆戻りするかもしれない。『ならば、やり過ごしたほうがいい』という意識が庁内外にある」と解説する。金融庁長官は絶大な権限や影響力を持っているが、民間企業のトップと違い、在任期間は歴代の最長でも3年だ。「事務方トップが代われば方針も変わる」と思われれば、森氏自身、“道半ば”と認める新しい取り組みは簡単に後戻りしかねない。金融庁として新たな検査・監督を体系立てて整理できれば、今後、何代もの金融庁長官の下でも憲法のような理念にもなる。有識者会議が年内を目途に纏める“考え方”は、憲法素案になるかもしれない。 (亀井勝司)


⦿日本経済新聞電子版 2016年8月26日付掲載⦿
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