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【ある意味犯罪は希望だ】(12) 万引きの社会学

是枝裕和監督の映画『万引き家族』(ギャガ)が、『カンヌ国際映画祭』で最高賞のパルムドールを受賞した。万引きをしながら暮らす家族の物語だが、実際にある様々な犯罪の中でも、万引きは最も身近なもののひとつである。捜査関係者は語る。「大方の万引きは、大きくいって3つのパターンに分けられる。先ずはカネ。欲しいけど買うカネが無くて盗る。次は嫌がらせで、個人的な店主への恨み等。そして病気。スリルやストレス解消が目的で、悪いとわかっていてもやってしまう」。だが実のところ、万引きの全体像は誰も掴めていない。それは、あまりにもこの犯罪の規模が大きいからだ。例えば10年程前、経済産業省の統計を基に国内の万引き年間被害額を4615億円とした推計がある。この額を日本の人口で割ると3600円程。これは毎年、全国民が3600円分の万引きをしているという数字なのだが、実際には万引き犯はごく一部。どれだけ繰り返し万引きをしているかがおわかりだろう。やられる側もたまったもんじゃない規模である。裏にはこんな事情もある。「食うに困って盗みやって懲役行きました。仮釈もらって出たんですけど、手に職があるわけでもないし、体も動かない。結局、仕事を見つけることができないです。だから、メシと寝床がある刑務所に戻りたいと思ってしまいます。人を傷付けたりしたくないし、強盗なんてとてもできない。だからまた万引きするんです。中々見つからなくて困ることもあるくらいで…。生きる為にこれからもやるしかない(70代男・前科4犯)。

犯罪防犯カメラや防犯ゲート等、万引き対策の技術が発達・普及し、犯行が抑止されるようになったこともあり、検挙数はここ10年で減少傾向を見せる。一方、ここ5年程、若年者の検挙数を年寄りが逆転。仕事も身寄りもない老人が不安の中で向かう先に万引きがあるという構図が、そこにはある。映画『万引き家族』は、万引きを繰り返しながら繋ぎ止められる、今にも壊れそうな家族の生活と絆を描く中に、現代社会の絶望と希望を炙り出した作品だ。一方、現実の万引きはそんなフィクションとしての家族ではなく、どこにも居場所を見い出せない老人の“姥捨て山”である。犯罪はある意味、希望だ。そうしなけば生きていけない人間がいる。勿論、犯罪を肯定することはできないが、少なくとも犯罪に希望を持っている人間はどんな環境にいて、どんな問題を持っているのかを知ることは大切だ。それは自分を守ることでもあるからだ。普段、ニュースで見聞きする流行犯罪は、“安心安全な街”の中に必ず潜み、誰もがちょっとしたきっかけで直面する。「真っ当な生活をしている自分は、こういった犯罪に関わることなどない」という人がいるが、真っ当な生活など簡単に崩れるものだということは何となくわかっている筈だ。カネが無い、人と上手く話ができない、ストレスが溜まる、体が動かない、ぶさいく――。犯罪に繋がる理由など無数にある。その時代に生きる人間が抱えている“病”から、犯罪は生まれる。そして“病人”の数が増えると、それが流行犯罪として爆発的に広まっていくのである。 =おわり


開沼博(かいぬま・ひろし) 社会学者・立命館大学衣笠総合研究機構准教授・東日本国際大学客員教授。1984年、福島県生まれ。東京大学文学部卒。同大学院学際情報学府博士課程在籍。著書に『“フクシマ”論 原子力ムラはなぜ生まれたのか』(青土社)・『漂白される社会』(ダイヤモンド社)等。


キャプチャ  2018年8月号掲載
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