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【進む格差の固定化】(14) アンダークラスに大打撃…切り下げられる生活保護費





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低所得のアンダークラスの命を守る最後の砦が切り崩されている。政府は生活保護費の内、食費や光熱費等の生活費分(※生活扶助費)を今年10月から段階的に下げ、3年かけて国費を160億円削減する。生活保護世帯の67%が減額になる見通しで、減額幅は最大5%に上る。中でも大きな影響を受けるのが、子供を複数抱える世帯と高齢者だ。子2人(※中学生と小学生)を持つ40代夫婦は月18.5万円から17.6万円に、子2人(※同)を持つ40代母子世帯は月15.5万円から14.7万円に、高齢単身世帯は65歳の場合、月7.9万円から7.5万円に減る(※母子加算と児童養育加算を除いて計算)。生活保護基準は総務省が行なう全国消費生活実態調査の結果を参照して、5年置きに見直されている。前回も2013年度から3年間に亘って段階的に引き下げられた。子2人の40代母子世帯の場合、今年10月の引き下げも踏まえると、2012年度比で1割以上も下がることになる(※右図)。一方で、子1人の30代母子世帯や50代夫婦世帯のように、今回の見直しで引き上げになる世帯もある。が、2012年度比ではどの世帯も切り下がるのが実態だ。また、2015年度には生活扶助に含まれる冬季加算(※寒冷地を中心とした暖房費等冬の出費増加に対する加算)や住宅扶助も引き下げられた他、生活保護費を算出する際に多人数世帯でのスケールメリットを考慮する為に用いられる係数が見直される等、目立ち難い引き下げも多数行なわれてきた。

引き下げの予定が公表されて以後、生活保護世帯の人々からは「もう節約の余地がない」「世の中から死ねと言われているようだ」といった声が数多く聞かれる。影響を受けるのは、実は生活保護世帯だけではない。生活保護の収入基準は、個人住民税の非課税限度額の設定に使われている。つまり、生活保護水準が下がると住民税の非課税限度額も下がって、無税だった世帯が課税されたり、医療・介護・教育等で低所得者向けの減免を受けられなくなったりする可能性があるのだ。こうした生活保護基準と連動する国の制度は47もある上、地方自治体には独自の制度がある。政府は「できる限り影響が及ばないように対応することを基本的な考え方」としているが、低所得層の不安は拭えない。更に現在、物議を醸しているのが、政府が提出した生活保護法の改正案だ。後発医薬品の使用を原則とすることに関心が集まっているが、それ以外に筆者が注視しているポイントは2つある。1つ目は、生活保護世帯の子供への進学支援だ。子供の貧困問題の解消は、政府の重点的な取り組みの1つとなっている。現在の生活保護制度は、子供が高校卒業後に働くことが前提だ。大学等に進学する場合には世帯分離して子供を生活保護から外し、家族の保護費を減らす。こうした事情もあり、生活保護世帯の子供は低学歴になり易い。大学へ進学しても、生活費や学費等は自らアルバイトで稼がないといけない。足りない分は『日本学生支援機構』の奨学金等を借り入れる必要がある。子供たちは心身の負荷と不安に耐えながら、苛酷な学生生活を送っている。政府案には、大学進学時に自宅通学で10万円、自宅外通学で30万円の一時金を給付する施策が盛り込まれている。また、生活保護法の改正とは直接関係ないが、日本学生支援機構が今年度から最大月4万円の給付型奨学金をスタートする等、子供の貧困を解消する為の施策は打ち出されている。ただ、高校卒業後に働く前提は維持される見通しだ。世帯分離をして生活費と学費を稼がないといけない状況の中では、一時金として最大30万円を貰っても抜本的な改善にはならない。その上、生活保護世帯の親にとって喜べない話もある。現在は現金で給付されている学習支援費(※小学生2630円~高校生5150円)が、10月から実費ベースの後払いとなる。用途もクラブ活動と教科外活動に限定され、これまで認められていた絵本代や参考書代には使えなくなる。「科学の好きな我が子に図鑑を買い与えたい」といった親の希望すら叶えられないのだ。しかも申請が必要で、手続きが困難な事情を抱えた親の子供は、事実上の対象外になりかねない。政府案が実現しても、生活保護世帯に生まれ育った子供たちにとって、所得の高い世帯と比べて勉強に打ち込む環境を得るのが難しい状況は変わらず、貧困から脱却するのは容易ではない。野党6党は先月29日、政府案に対抗する法案を共同で提出した。政府案の意図を実現させず、生活保護基準及び児童扶養手当等関連する給付制度の引き下げに歯止めをかけることが狙いだが、成立は不透明だ。

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2つ目は、受け取り過ぎた保護費(※過誤受給)の天引き徴収だ。生活保護費の返還には、生活保護法63条に基づく過誤受給の“返還金”と、78条に基づく不正受給の“徴収金”の2つがある。徴収金は保護費からの天引きが認められているが、返還金については本人の意思による返還が原則だ。ところが、政府案では返還金も天引きが可能になる。例えば、福祉事務所の手違いで少しだけ多く給付されていたにも拘わらず、返還を求められ、保護費から天引きされる事態になったら、受給者の生活は一気に苦しくなる。更なる懸念は、返還金が徴収金と同じように非免責債権になる可能性があることだ。現状、返還金は自己破産すると免責されるが、天引きでは済し崩しで非免責として扱われかねない。こうした論理が罷り通るようになった場合、筆者が恐れる最悪のシナリオの1つは、日本学生支援機構の奨学金が非免責債権になることだ。多額の奨学金を返還できずに自己破産し、生活保護を受給することになっても、保護費から天引きで回収されるとなれば、まさに“人生が詰んだ”状態だろう。因みに、アメリカでは教育ローンの多くが「政府からの助成金が財源になっている」という理由で非免責債権となっており、大学教育が低所得層の人生設計を狂わせることの一因となっている。ナショナルミニマム(※国民に保障される最低限の生活水準)である生活保護水準を切り下げることが本当に正しいのか? 貧困の連鎖を断つ上でも、改めて考える必要がある。 (フリーライター みわよしこ) =おわり

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「繰り上がりの足し算ができない」「九九の6と7の段が言えない」――。さいたま市で学習支援教室を開くNPO法人『さいたまユースサポートネット』に取材に行った時に、中学生の子が冒頭のような問題を抱えていると運営の方に聞きました。それも1人や2人ではありません。生活困窮世帯の生徒向けの学習支援教室とはいえ、私の想像を遥かに超えており、とても驚きました。今回の特集では、そういった子供の学力や貧困、教育格差の現状を炙り出すと同時に、何故格差が生まれるのか、どうしたらよいのかを専門家等に取材し、検証しました。後半はデータを用いて、格差の固定化や階級社会の現状を見ています。 (本誌 富田頌子)

中間層の没落と格差の拡大は、先進国では広く見られます。企業活動のグローバル化とデジタル化により、賃金の高い仕事と低い仕事への二極化が進んだ結果です。AIやロボットの導入が広がれば、その傾向は更に強まるでしょう。富が上層に集中する社会では、消費が益々停滞するのは自明のこと。この流れを止める為には、機械に代替されない力を備えた人材の育成が欠かせません。教育投資によって労働力の質を高めなければ企業の競争力は上がらないし、購買力を備えた消費者だっていなくなります。子供の貧困の解消は、経営者にこそ切実な問題の筈です。 (本誌編集長 西村豪太)


キャプチャ  2018年4月14日号掲載
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テーマ : 貧困問題
ジャンル : 政治・経済

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