【憲法考・改正の論点】(07) 法案成立を参議院が翻弄、“政党”位置付け明記無く

20160531 02
昨年9月上旬。安全保障関連法案の参議院での採決日程を巡り、国会は緊迫していた。「“60日ルール”も視野に入れないといけない」。自民党国会対策委員会の佐藤勉委員長が、こう語り始めた。法案採決に踏み切らない参議院に業を煮やし、衆議院での再議決をちらつかせたのだ。60日ルールとは、衆議院を通過した法案が参議院で60日以内に採決されない場合、「否決した」と見做すことができる憲法59条の規定だ。その後、衆議院での再議決で3分の2以上の賛成が得られれば、法案を成立させることができる。参議院に対する“衆議院の優越”の1つだ。但し、これを使って法案成立を確実にするには、与党が衆議院で3分の2以上の議席を持つことが前提だ。また、2007年から2013年まで続いた、衆参で多数派が異なる“ねじれ国会”で混乱が繰り返されたように、参議院が政治的な思惑で審議をサボタージュすれば、衆議院は最大60日間、手も足も出せない。憲法は衆議院の優越を定めているにも拘らず、参議院は法案の“生殺与奪”を握り、時に政治の停滞を招いた。安保関連法については、参議院は60日ルールが適用可能となってから5日後に可決・成立させ、60日ルールが使われることは無かったが、今も“強過ぎる参議院”が健在であることを示すエピソードだった。「憲法を改正して“強過ぎる参議院”を見直すべきだ」との意見は、有識者から繰り返し主張されている。東京大学の北岡伸一名誉教授は「再可決要件を3分の2から2分の1に緩和すべきだ」とし、政策研究大学院大学の竹中治堅教授は「みなし否決をするのに必要な日数が長過ぎる。30日に改めることを検討するべきだ」と指摘する。だが、国会では参議院改革の議論は足踏み状態だ。

国会での議論がままならないのは“政党”も同じだ。憲法には、政党を明文化した規定は無い。21条の“結社の自由”に根拠があるとされ、最高裁判所の「憲法は政党の存在を当然に予定しており、政党は議会制民主主義を支える不可欠の要素である」(1970年八幡製鉄政治献金事件判決)との判断が定着している。政党に関わる法律は、政党助成法・政治資金規正法・公職選挙法等があるが、定義が微妙に異なり、統一的に定めた法律は無い。政党を憲法に位置付けるかどうかは、長く議論されてきた。1964年の内閣憲法調査会報告書では、賛否両論が併記された。自民党は、以前から政党条項の新設を提案し、2012年の憲法改正草案では「国は、政党の活動の公正の確保、健全な発展に努めなければならない。政党の政治活動の自由は、保障する」と定めた。当時、与党だった民主党内でも前向きな意見があった。同年8月の衆議院憲法審査会では、民主党の鷲尾英一郎議員が「与党の意思決定が、政権の意思決定として日本の在り方を左右することを考えると、憲法論の観点からも重要な課題として検討されるべきだ」との考えを示した。これに対して公明党は、「明文改憲をしてまで憲法に明記する必要は感じられない」と慎重で、共産・社民両党は反対している。京都大学の大石眞教授は、「政党は国会や内閣等を動かしていることもあり、普通の結社とは異なる」と語る。その上で、「政党には公私の二面性がある。公的側面は政党助成金等の公費で賄う必要がある以上、憲法に政党の役割やあるべき姿を明記し、その重要性を確認してもらうことが大事だ」と指摘する。政治の土台である憲法をどう見直すか。その責任は政党に突き付けられている。 =おわり

               ◇

白石洋一・足利浩一郎・米川丈士・藤本将揮・福田麻衣・重松浩一郎・小池勇喜が担当しました。


⦿読売新聞 2016年5月13日付掲載⦿
スポンサーサイト

テーマ : 憲法改正論議
ジャンル : 政治・経済

轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

广告
搜索
RSS链接
链接
QR码
QR