【経済の現場2016・動乱再び】(06) 政治リスクこそ“好機”

20160531 03
今月初め、ドイツのフランクフルトで開かれた『アジア開発銀行(ADB)』総会。各国の代表だけでなく、金融機関の幹部も駆けつけた。「イギリスのヨーロッパ連合(EU)離脱問題に対して、参加者の多くが重大な関心を寄せていた」。日本の大手銀行トップは肌で感じ取った。“Britain(イギリス)”と“Exit(退場する)”を合わせて“Brexit(ブレグジット)”と呼ばれる。イギリスで来月23日に予定されるEU離脱の是非を問う国民投票は、結果次第でヨーロッパのみならず、世界の金融市場に大きな影響を与えかねない。大手証券のトレーダーは言う。「先行きが見えず、市場全体が“イギリス離れ”を進めている」。市場の懸念材料は他にもある。アメリカ大統領選の行方だ。「アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長は共和党員ではない。だから、交代させる」――。アメリカの投資ファンド幹部は、共和党候補の指名を確実にしたドナルド・トランプ(69)の発言に耳を疑った。「思いつきで何をするかわからない。政策の展開が読めず、安心して投資を増やす雰囲気ではない」。“トランプ大統領”誕生に、どのような戦略で臨むか決めかねているという。尤も、政治リスクは強かな投資家にとってチャンスに映る。

2年前の2014年5月下旬。バンコクに拠点を置く『ブルッカースコタイファンド』の投資責任者であるエイドリアン・ダン(54)は、香港の大口投資家のオフィスにいた。「絶好の機会です」。ダンの説得に、相手は拠出額を増やすことに同意した。タクシン元首相派と反タクシン派の激しい対立で混乱が続いていたタイでは、直前の22日にクーデターが起きていた。株価は急落したにも拘らず、「国内情勢を落ち着かせる材料」と見たダンは、逆に株を買い進めた。読みは当たる。株価は反転し、2014年のファンドの運用利回りは4割を超えた。市場が荒れた今年1月。シンガポールの投資ファンド『APSアセットマネジメント』は、値下がりした中国企業の株を買い集めた。「安く買い、高く売る。簡単な話だよ」。こう話す創設者のウォン・コック・ホイ(60)は、企業の将来性や経営の健全性を調べ上げる。株価が割安と判断すれば、買うことを躊躇わない。ファンド設立時に1500万ドル(約16億円)だった資産運用額は、28億シンガポールドル(約2200億円)まで膨張した。1990年代後半のアジア通貨危機、2008年のリーマンショック…。危機の度に資産を増やしてきたウォンの自信は揺るがない。「予測に時間は費やさない。結果として、株価が本来の価値を下回れば、買うだけだ」。政治リスクに身構える投機筋が多い中で、長期運用に徹するウォン。こうした投資家の台頭で、市場は新たな局面に差し掛かろうとしている。 《敬称略》


⦿読売新聞 2016年5月17日付掲載⦿
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