【Global Economy】(04) 日米欧、低い成長率の背景…需要不足、悩める先進国

日米欧の先進国で経済成長が低迷している。『日本銀行』が金融緩和の継続を打ち出し、アメリカの『連邦準備制度理事会(FRB)』が追加の利上げを見送ったのも、低成長に対応する為だ。「このままでは経済の停滞が長く続く」との観測が増えてきた。 (本紙編集委員 山崎貴史)

20160926 06
「政府には、成長力を高める構造改革を引き続きしっかりやって頂きたい」(日本銀行の黒田東彦総裁)、「連邦公開市場委員会(FOMC)のメンバーは、生産性の伸びが長期に亘って低水準に留まる可能性が高いとみている」(FRBのジャネット・ルイーズ・イエレン議長)――。世界の市場関係者が注目した一昨日の日米の金融政策会合。両中央銀行のトップは会合後の記者会見で、経済成長の弱さを不安視する言葉を其々口にした。2008年のリーマンショック以降、先進国の経済成長率が下がっている。『国際通貨基金(IMF)』の統計によると、先進国(現在は39ヵ国・地域が対象)の平均成長率は、1980年代が3.1%、1990年代は2.7%。2000年代に入って2008年のリーマン危機前まで(2000~2007年)も2.7%だった。ところが、金融危機が一段落した2011~2015年は1.6%に落ち込んだ。IMFは、「2016・2017年も其々1.8%に留まる」と見込む。危機後のアメリカ経済について、経済学者のローレンス・サマーズ元財務長官は、「有効な対策を取らなければ景気低迷が続く」とする“長期停滞論”を唱えた。現在の欧米の経済は、日本のバブル崩壊以降の姿に似ている。これを、欧米の経済学者は“ジャパナイゼーション(日本化)”と呼ぶ。日本も欧米も、企業が工場を建てたり機械を購入したりする設備投資や、個人が買い物をする消費等の“需要”が伸びない。工場や店がモノやサービスを提供できる量を示す“供給能力”が“需要”を上回る“デフレキャップ”が存在している。需要が増え、デフレギャップを解消できれば、成長率は高まる。東京大学の福田慎一教授は、日米欧に共通する需要不足の理由として、①バブル経済の崩壊の後遺症②人口の伸び悩み・高齢化③台頭する新興国経済の影響――があると分析する。日本のバブル景気は、1980年代後半から1990年代初めに生じた。アメリカでは、2007~2008年に低所得者向け住宅融資『サブプライムローン』の焦げ付きの急増やリーマン危機が起き、バブル崩壊の影響はヨーロッパにも及んだ。ヨーロッパでは、2010年前後にギリシャ等の債務危機も深刻化した。

バブル崩壊で痛手を負った日米欧の企業の多くは、経営に慎重になった。新規ビジネスよりも財務リストラが得意な人材が経営トップに選ばれるようになった。設備投資や従業員の賃金アップを抑え、儲けを貯め込む傾向も強まった。各国の金融当局はバブル景気の再発を防ぐ為、金融機関に対する規制を厳しくした。銀行は、嘗てのようにお金をジャブジャブとは貸さなくなった。人口問題も大きい。ヨーロッパは、流入する移民は若い世代が多いものの、全体としては日本と同様に高齢化が進む。アメリカでは、日本の団塊の世代に当たるべビーブーマー世代の大量退職が2010年頃から始まった。高齢化社会を迎え、人々は老後の娯楽や医療・介護費に備えて節約に努めている。市場が縮小するので、企業は国内への投資を控えがちだ。格差の拡大も、消費にマイナスだ。特に、アメリカでは産業のIT化が進み、組み立て等の工場は新興国に移転しつつある。工場労働者等の中間層が職を奪われて所得が減る一方、極一部の富裕層は株式の配当等で巨額の収入を得るようになった。富裕層は、いくら収入が多くても消費額は限られる。貧困層は、所得の内消費に回す割合が多いが、金額は少ない。この為、国全体の消費は増え難い。新興国の景気後退も影響している。資本主義は、“フロンティア(未開拓の新分野)”を市場として切り開くことで拡大してきた。15世紀以降、スペイン、ポルトガル、オランダ、イギリスがアフリカ、アジア、アメリカ大陸に植民地や交易基点を広げたのが、その代表例だ。21世紀に入り、地球上の最大のフロンティアは、経済が急成長する中国だ。各国は、「中国と良好な関係を築けば、貿易や投資の拡大が大いに見込める」と考えた。オバマ大統領は、2009年の就任直後から中国との関係強化に力を入れた。イギリス、ドイツ、フランス、イタリアのヨーロッパ諸国は、中国が主導して今年1月に開業した国際金融機関『アジアインフラ投資銀行(AIIB)』の創設メンバーになり、中国に近付いた。中国は、リーマン危機後に4兆元(当時の為替レートで約60兆円)の景気対策で世界経済を支え、海外から投資を呼び込んだ。しかし、中国共産党の1党独裁の下、国有企業のリストラや投資環境の整備は進まない。今や、景気が減速して、世界経済の足を引っ張っている。先進国は、人口が急増するアフリカを「新たなフロンティア」(安倍首相)として期待する。だが、アフリカでは民族紛争が多発し、政情の安定に向けた道程は遠い。歴史的に、欧米は“フロンティア”の経済ルールを自分たちの都合のいいように変えて、収益源としてきた。先進国が描く投資環境がアフリカで整う前に中国も参入し、大混戦だ。アフリカが成長のエンジンとなるには、かなりの時間を要しそうだ。

20160926 07
■新しい産業開拓がカギ
日米欧が経済成長率を高めるには、どうすればよいのか。カギとなるのは、地理的なフロンティアとは別に、これまでにない産業やサービス分野での“フロンティア”を開拓できるかどうかだ。現在、世界の産業界でフロンティアの有力候補とされるのは、“第4次産業革命”と呼ばれる取り組みだ。家電・自動車・家具等、あらゆるものをインターネットで繋ぐIoT(もののインターネット)や、コンピューター自らが考えるAI(人工知能)等、既存の業界の枠組みを超えた開発競争が激化している。将来の産業を育てるには、国が教育や研究開発向けの施策を進めることも重要だ。高齢化への対応・地球環境保全・再生可能エネルギー等、人類にとって欠かせない分野もビジネスチャンスが広がる。『ニッセイ基礎研究所』の矢嶋康次氏は、「中央銀行の金融政策と財政政策だけでは、(経済の実力を示す)潜在成長率は高まらない。国が規制緩和で企業の活動のフィールド(範囲)を広げ、企業が競争力を高めることが何より大切」と指摘する。


⦿読売新聞 2016年9月23日付掲載⦿
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