仕込みで逮捕、瀕死の重傷でも労災下りず――現役テレビマンが明かす本当にあったAD残酷物語

視聴率低迷の原因は、こういった過酷過ぎる労働環境も影響しているのではないか? そう思えるほどに、殺される寸前まで酷使され、疲弊する若手テレビマンたち。現在のテレビ番組がこういった人災の上に成り立っているのはわかるが、彼ら業界を去った者たちが浮かばれないことだけは間違いないだろう――。 (取材・文/フリーライター 片岡龍夫)

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俗に“AD残酷物語”等と揶揄されるほどに、その過酷な日々が兎角“ネタ”にされがちなADことアシスタントディレクター。バラエティー番組等では“駄目な若手スタッフ”として芸人たち等からコケにされたりと、されたい放題ではあるものの、将来、番組制作の重要な担い手として、その活躍が期待される彼らは、本来、局や制作会社にとっては“金の卵”。軈てディレクターへと出世し、更にプロデューサーにまで上り詰めれば、まさに“天上人”としてタレントたちを意のままに操る立場になる重要な存在だ。だが、やはりというか、そうした出世街道の途上においては、彼らの大半が過酷過ぎる日常を送っている。それが最高レベルまで達した際に、ドロップアウトを余儀無くされてしまうのが実情なのだという。「毎年、沢山の人が入って、そのままいなくなる。それの繰り返し。完全な“多産多死型”の業界ですね」。そう語るのは、現在、制作会社所属のディレクターとしてキー局のバラエティー番組の現場で制作に従事しているという中堅ティレクターのY氏(41)。今でこそ若手タレントたちとほぼ同格の目線でものが言えるようになり、安定した収入が得られるようになっているという彼だが、嘗ては過酷な毎日で思い悩み、「辞めよう」と思ったことが何度もあるという元ADの1人だ。「5分・10分寝ただけで殴られるような世界なんで、そりゃあ、辞めたいことなんて何度もありましたよ。けど、自分の場合は未だに残っている。若手の頃は、まさか自分が生き残るなんて思いもしなかったですけどね」。何をしても怒鳴られ、上司や先輩の機嫌が悪ければ、理不尽な暴力すら当たり前に見舞われる。当然、そんな状況下が続けば、真面な神経の持ち主ならば耐えられる筈もない。事実、彼の同期は素より、その前後5年にADとして入社したスタッフたちは、今では誰一人として存在しないという。

「本当に誰もいない。上は10歳以上離れているし、下はどんどん入っては辞めを繰り返すから、やっぱり10歳以上離れている。普通の業界じゃ考えられないことですよね(苦笑)。まぁ、それだけキツい仕事だということかもしれないです。何せ、精神病にかかるヤツとかめっちゃ多いですから」。Y氏が業界入りしてから今に至るまでの約20年間、そのあまりに過酷な毎日故に、同僚たちの多くは心身共に不調を来し、ひっそりと業界を去っていった。鬱状態やノイローゼになって精神科送りになる者は後を絶たず、酷いケースになると、事務所での仮眠中に同僚スタッフからレイプされたという若い女性ADが、半狂乱の状態で刃物を振り回す騒ぎすらあったという。「本当に犯されたかどうかはわかりませんけどね、そういうのは結構あるんです。女っていうだけで、服やズボンの中にいきなり手を突っ込まれて、おっぱいやお尻を触れたりなんていうことはしょっちゅうだし、レイプ紛いのセクハラやトイレの盗撮なんていうのも当たり前に起きる。女性にとっては更に過酷な仕事じゃないですかね」。そうした極めて劣悪な環境下で、昼夜を問わず働き続けて精神を病む一方で、バラエティーの現場では、そんな事情すら真面に理解していないような若い女性タレントや芸人たちから、玩具のように扱われる…。その状況を思えば、彼らの離職率が異常に高いのも頷けるところだ。「でもね、そういうレベルで収まっていれば未だ御の字なんです。何せ、悪意たっぷりに使い捨てされる業界なんで。例えば、自分と同期のSというヤツの場合は、かなり気の毒なケースでした。決して珍しいケースではなかったんですけどね」。Y氏の話によると、彼と同期入社だったというS氏(当時24)は、フリーターからの転職組だったが、入社するなり、真面な知識も無いままに過酷なロケスケジュールを熟すように命じられ、瞬く間に肉体も精神も触まれていったという。元ラガーマンということもあって、所謂“ガチムチ系”だったというその体は、瞬く間に痩せ衰えて老人のようになり、血色の悪い肌には湿疹が出るほどであったという。「最後のほうは只管、真夜中にデスクでぶつくさと独り言を呟いているような状態でした。眠ることはおろか、何日も横になることだってできないから、体もどんどんおかしくなっていくし…。そりゃあ、事故も起こすだろうと。ただでさえ心身共におかしくなっている中で、あの事故は致命傷でしたね」。

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過酷な毎日で心身の不調を訴えてはいたものの、「進行の都合」(Y氏)で上司から無謀なスケジュールを押し付けられたS氏。彼は、ある番組のロケハンに出かけた際に、長時間、不眠不体で雪道を運転させられ、事故を引き起こしてしまった。幸いにも一命を取り留めはしたものの、下半身不随の後遺症が生じ、もう二度とADとしては働けなくなってしまったという。だが、そんな彼を病室に見舞ったプロデューサーは、信じられない言葉を口にする。「『労災にはならないから』と。本来であれば、上司や会社の責任じゃないですか。けど、飽く迄もSの場合は、私用で会社の車を使って出かけて、勝手に自己を起こした扱いにするように厳命されたんですよ。本当に酷い話です」。Y氏の話によると、そのプロデューサーはお見舞いとして番組予算から3万円を渡したものの、その後はよもやの雲隠れ。S氏が現場に復帰できないことを確認した上で、敢えて快復後の復帰を口約束し、彼を自主退社させたのだという。「Sは、上司からの『完治したらディレクター待遇で採用する』という口約束を信じて、結局、自己都合で退社することになリました。勿論、そんなの嘘八百です。上司は彼が回復しないと読んで、そういう空手形を渡して自己保身に走ったんです。そういう尻尾切りは彼らの常奪手段で、Sの他にも、犯罪ドキュメントの為に密着をやらせて、売人から大麻を買うように仕向けられた別のADが、ガチで逮捕された時も知らぬ存ぜぬでした。まぁ、その時は『いざという時の為だから…』とかって言って、予め辞表を書かせていた。中々の策士ですよ」。その後、S氏はプロデューサーの言葉を信じて懸命にリハビリに励むも、結局、それ以上体調が回復することもなく、復帰を断念。そのまま郷里の家族に引き取られていったという。また、逮捕されてしまったという別のADについても、出所後は無視。だが、Y氏によると、こうしたケースはほぼ、どこの局や制作会社でも日常的に行われていることだそうだ。逆に言えば、「こうした悲劇に見舞われず、過酷な日常に耐え続けた者だけが、生き延びられる業界なのではないか」とY氏は語る。「自分の場合は偶々ラッキーだっただけ。過酷ではあったけど、今まで致命傷は負わなかったので。辞めたい? うーん、どうだろう。自分は、単に『辞める』と上司に言い出せるだけの勇気が無かっただけなのかもしれません」。その明るく楽しい雰囲気で、多くの視聴者を喜ばせているテレビ業界。しかし、その笑顔や喜びは、そうしたものとは一切無縁の、彼ら最下層労働者の流した血と涙と屍の上に築かれている蜃気楼のようなものなのかもしれない――。


キャプチャ  第3号掲載

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