【電通の正体】(05) 電通伝説の虚実――記事揉み消しで“飴と鞭”、メディアの忖度が圧力助長

“電通のメディア支配”というイメージを育んだのは、『電通』の“圧力”とメディアの“忖度”、それに一部の電通マンの慢心だ。 (後藤逸郎・池田正史)

20160927 04
「政府や大企業に不都合な記事は電通が揉み消すので、報道されることはない」――。“電通がメディアを支配している”という見方は、世間やインターネット上に事実のように氾濫している。ジャーナリストの田原総一朗氏が指摘するように、電通は本社を築地に置いていた頃、“築地編集局”や“築地CIA”と呼ばれた。新聞社や出版社の発行前の校正刷りが集まると、そんな風に囁かれたという。「企業の増資を巡るスキャンダル記事を載せようとした経済誌に対し、企業に泣きつかれた電通が広告引き揚げの圧力をかけて記事をボツにした代わりに、雑誌を数百部買い上げた」。そんなイメージ通りの情報を、今回の特集取材で掴んだ。しかし、肝心の編集部の証言が得られず、しかも10年以上前の話だったこともあり、電通の圧力とは断定できなかった。「記事を載せない見返りに、スキャンダルを起こした企業のグループ社の広告を載せた」(大手週刊誌記者)、「広告出稿を増やし、出版社を黙らせた」(元電通マン)。現在も電通の圧力はあると考えることはできるが、当事者全てが表沙汰にし難い構造の為、真実として報道するのは至難の業だ。この構造に、メディアの“忖度”が加わる。「あるサブカルチャー系週刊誌は、いい内容・悪い内容に関わらず、電通と博報堂を“大手広告代理店”と記述する自主規制を持つ」。出入りのライターの証言と、出版社社員からの自主規制の存在確認、“大手広告代理店”という表記と、電通・『博報堂』以外の広告代理店の実名表記が混在する誌面の現物も確認できた。当該週刊誌の編集長は本誌の取材に対し、自主規制を否定した。本誌編集部は、真実性・公共性・公益性を満たす為、実名報道の方針だったが、圧力の事案を実名で伝えない以上、この件も匿名とした。この事例が示すように、“触らぬ神に崇り無し”というメディアの忖度が、圧力を実物以上に膨らませている。また、メディアが報道の是非を判断する過程は通常、読者や視聴者に見えないことも大きい。「電通社員が逮捕されても、名前はおろか社名も報道されないのは、電通がメディアを支配しているから」――。実際、インターネット上では、逮捕者が後に電通勤務と判明した事例が流れている。メディア支配の都市伝説は、事件報道の仕組みを読者・視聴者、そして一部の電通社員も知らないことが生み出している。

昨年7月8日、大手フィットネス業『ライザップ』から現金を脅し取ろうとした恐喝未遂容疑で、警視庁は3人を逮捕したと発表した。毎日新聞やNHK等マスコミ各社は短い記事で伝えた。逮捕者の名前が出たのは1人だけだ。しかし、他の逮捕者の内の1人は現役の電通社員だったことが、本誌の取材でわかった。やはり、電通はメディアを支配しているのか? 警視庁新宿署は同日、容疑者3人の実名を記載した広報文をマスコミ各社に配布した。電通社員の職業は“会社員”となっていたという。事件報道の大半は、警察発表が起点となる。メディアは会社名等を警察から取材する。警察は常に社名を答える訳ではなく、「この時は社名を出さなかった」(警視庁担当記者)。有名企業が被害者だったので報道したが、犯罪容疑が比較的軽い為、大ニュースとして扱わなかった。文章を短くする為、電通社員の名前を結果的に伝えなかった。元々、事件報道は犯罪の度合いや被害者のプライバシーに配慮する為、たとえ広報文が実名でも匿名で伝えることはある。この事件の場合、電通が警察側に働きかけた可能性は消えない。だが、メディアが電通の圧力に屈した可能性は極めて低い。こうした伝説を広めているのは、他ならぬ電通社員だ。元電通社員の藤沢涼氏は在職中、痴漢容疑で同社の部長級が逮捕されたのに社名が報道されなかったことをよしとせず、同僚に同意を求めたところ、「それが電通の特権だろう」と言い返されたという。また、元博報堂社員でウェブニュース編集者の中川淳一郎氏は、「広告代理店は取引先が多いから、それだけメディアに身内が多く、“圧力”が通じる面もある」と話す。その上で、自らが“圧力”をかけた体験談を明かした。「ステマ(ステルスマーケティング=隠れ広告)で、下請けの吉本興業を脅したことがある。TBSテレビの番組のゲームコーナーにキリンの飲料水を使った。吉本は頑張って企画を出してくれた。ところが、VTRを見た博報堂の営業が『飲み物を床に置いちゃ駄目だ』と譲らず、仕方なくモザイクをかけることにした。制作会社は面倒臭がったが、『“CMを落とす”とTBSに言うぞ』と脅して対応させた。博報堂の部長がキリンに不手際を謝罪すると、キリンは『何でモザイクをかけるのか? うちの商品とわからなくなる』と文句を言った」という。「『商品を地面に置いてはいけない』と広告代理店が忖度した結果、誰も望まない“圧力”が起きた。ただ、所詮は広告主の御用聞き。クライアントの意向を勝手に忖度して、頑張り過ぎてしまう面もある」(同)。電通伝説が蔓延る限り、メディアの信頼性は損なわれる。報道現場が凛とした態度を先ず示すことが、社会や電通そのものの健全化に繋がる。過去にあった電通・メディア・読者・視聴者の無自覚な対応は、何れ自身に跳ね返るだろう。

20160927 05
■「社会を裏から操る怖い印象」「電通から圧力は一度もない」  『特命係長 只野仁』作者・柳沢きみお氏
漫画『特命係長 只野仁』は、『週刊現代』で1998~2001年まで連載された。現在、続編4本目を『日刊ゲンダイ』で連載中である。同作の主人公は、大手広告代理店『電王堂』のサラリーマン。表の顔は冴えない窓際係長だが、裏の顔は会長の特命で社内外の不祥事や問題を解決する。あるジャーナリストは、「電通には不祥事を処理する“特命”を帯びた社員が実際にいる」という。その存在は、同社内でもー部しか知らないそうだ。作者の柳沢氏(右写真)に、同作の舞台裏を尋ねた。

――大手広告代理店の漫画を描いた理由は?
「原案は週刊現代編集部で作って、私に依頼してきたのです。そこで、電通のような会社に勤務する主人公となった。モデルはいません」

――作品では、カネ・女・クスリのトラブルが多い。
「裏も表も、色々な組織と絡んでしまう会社体質ですから、『色々な問題が起きるだろうな』とは思っています」

――電通のイメージは?
「『何だか、超優秀な人間が集まっている』という怖い印象です。大衆社会を裏から操っている怖さを感じますね」

――主人公は作中でモテモテだが?
「女性も憧れる有名会社で、容姿まで優れていたらモテますよ」

――単行本が絶版となったが、電通からの圧力はあったか?
「一度も無いです。高が漫画ですから、問題視されるなんて無いです」


キャプチャ  2016年8月23日号掲載
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