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【仁義なきメディア戦争】第2部(05) バイラル御三家のカネと内情

一時期は大手レガシーメディアよりも読まれる記事を配信していた『ハフィントンポスト』や『バズフィード』等のバイラルメディアが苦境にある。広告によるマネタイズ手段が縮む中、次の打ち手は――。

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「我々の記事は今、最も多くツイッター上で拡散され、グーグルで検索されている。デジタル事業は5億ドルに達し、バズフィード等ライバルたちの事業を全て足した数字を、大きく上回った」――。2017年に『ニューヨークタイムズ』が発表したレポートには、“完全勝利宣言”にも等しい言葉が並んだ。2011年、月間ユニークユーザー数(※サイトへの訪問者数)で『ハフィントンポスト』に負けたニューヨークタイムズは、バイラルメディア勢を再度蹴散らした。一方、敗れたバズフィードは、今年予定していたIPO(※新規株式公開)を延期し、本社スタッフのレイオフを実施。ハフポストも海外支社の閉鎖等を余儀なくされている。一度は逆転した筈の新旧メディアの序列。一体、何が起こっているのだろうか? ジャーナリストで政財界の重鎮と近いアリアナ・ハフィントン氏、『AOL』出身のベンチャーキャピタリストのケネス・レーラー氏、それにSNSで“バズる”技術で有名だったエンジニアのジョナ・ペレッティ氏。この3人が2005年に創業したハフポストは、バイラルメディアの走りであり、“西海岸テック系”と“東海岸レガシー系”の完璧な結婚の産物だった。検索で上位にヒットし易い記事と見出しを生むシステムと、これに対応したCMS(※記事入稿システム)を使い、ページビュー(※PV)を伸ばし、広告収入を稼いだ。独自ニュースを強化し、記者を正社員で抱え、社会派記事も多く掲載した。2011年にはAOLが3億1500万ドルもの高値で買収する等、順風満帆だった。だが、状況が変わってきた。アメリカのインターネット広告市場で、『グーグル』と『フェイスブック』というプラットフォーマー2社の寡占が進み、2017年時点で2社のシェアは実に63%に達した。広告で稼ぐ仕組みの根幹をプラットフォーマーに握られる限り、大きな収益を上げ続けることはできなくなってきたのだ。ハフィントン氏が2016年に退任した後、独自記事が減り、まとめ記事が目立ち始めたハフポスト。日本版も、編集長の交代が相次いだ後、「バーティカル(※分野を絞ったスポンサー付きのテーマ特集記事)によるマネタイズを重視し、独自ニュースはほぼ諦めている」と元社員は嘆く。

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一方、ペレッティ氏とレーラー氏が、2006年にハフポストの技術とCMSを持ち込んで創業したのがバズフィードだ。アドテクやバナー広告には手を出さず、自社でコントロールできる“ネイティブアド”と呼ばれる記事風のタイアップ広告を主力とした。但し、ネイティブアドは、取材をして記事を書く手間とコストが発生する労働集約型ビジネスで利益率は低い。更に、全体のバランスを考えると、数を増やし過ぎることもできないジレンマがある。因みに、アメリカでは新しい広告として熱烈に支持されたネイティブアドは、日本では昔から“記事広告”という名で広く普及している。「ブランドがある新聞や雑誌の記事広告よりも、バズフィードのネイティブアドのほうが先進的で効果があると評価され、高く売れるということは特にない」と、大手広告代理店幹部は膠もなく評価する。バズフィードは近年、マネタイズができそうな新規事業に、のべつ幕なしに手を出している。小売り事業やテレビ番組制作に続き、これまで回避してきたバナー広告にも参入すると表明。更に、有料課金記事の導入も検討しているという。日本支社の人員規模は、ハフポストや後出の『ビジネスインサイダー』よりも大きいが、将来の課金を念頭に置いてか、高い専門性を持つ記者を積極的に採用しているバズフィードジャパン。しかし、これまで不特定多数にバズる無料記事のみを狙ってきたメディアが、実際に読者がお金を払ってくれる記事を生み出せるかは未知数である。ハフポストやバズフィードよりも規模は小さく、最も遅い創業にも拘わらず、早々に黒字化したのがビジネスインサイダーだ。取り扱うトピックをビジネス関連に絞り、途中でドイツのメディア企業『アクセルシュプリンガー』の傘下に入って有料課金記事を始めた。レガシーメディアと同じ事業に回帰したわけである。ハフポストとバズフィードが依存してきた“技術でバズらせて広告でマネタイズ”のモデルに限界が見えた今、バイラル御三家の看板はくすんだ。お金を取れる独自記事を強化して報道機関路線を目指すのか、はたまたコストを切り詰め、戦線を縮小して黒字化を目指すのか。バイラル御三家も岐路に立たされている。


キャプチャ  2018年10月27日号掲載
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テーマ : テレビ・マスコミ・報道の問題
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