【霞が関2016秋】(03) 農業改革「韓国に習え」で論争、前農相の真意は?

「先行する韓国、遅れる日本」――。農業改革を巡り、農林水産省がこんなキャンペーンを始めた。『環太平洋経済連携協定(TPP)』を機に農業の体質強化を目指す日本にとって、2012年発効の『米韓自由貿易協定(FTA)』で大胆な構造改革に踏み切った韓国は“お手本”という論理の組み立てだ。尤も、『JA(農協)グループ』や一部の農林族議員の間では抵抗感が強く、着地点は尚、見通せない。農林関係者の間で、前農林水産大臣の森山裕議員が韓国農業の実態調査の為に同国を訪問することが、大きな話題となっている。関係者によると、今月21~23日に韓国を訪れるという。随行するのは、JAグループが擁立した山田俊男・藤木真也両参議院議員。山田・藤木両氏は、抜本的な農業改革の阻止を強く訴えてきた経緯がある。森山氏は“農林族のドン”と言われ、影響力は大きい。農水省や自民党農林部の小泉進次郎会長は、韓国との比較を通じて日本の農業の弱点を炙り出し、関連業界の再編等の具体策を今年11月に纏める方針を示している。第1弾として農水省は今月13日、自民党の『農林水産業骨太方針策定プロジェクトチーム』(小泉進次郎委員長)に、肥料・農薬等農業資材に関する日本と韓国の比較調査結果を示した。調査結果の肝は、「日本の農業は韓国より高コスト体質である」と断じた点だ。例えば肥料。日本は銘柄数が約2万種に及ぶのに対し、韓国は約5700種しかない。メーカーが多品種・少量生産を続けてきた結果、販売価格は韓国の1.7~2.1倍にもなる。農薬でも、日本はメーカー数が韓国の2.4倍で、販売価格は韓国の最大3.3倍に達する。

これに対し、訪韓する3氏には「韓国の農業が日本とは置かれた状況が違うことを確認し、農水省や小泉氏が進めるコスト削減路線に反証する材料を集める狙いがある」とみられる。森山氏の訪韓については、「新たな抵抗勢力の出現か?」との声も漏れる。3氏の内の1人は最近、「使い勝手が悪く、埃を被ったまま放置されている東アジア製の農機の写真を地元農家から取り寄せた」という話もある。問題は、韓国の農業が参考になるのかどうかだ。農水省は「気候や稲作主体の構造が似ている韓国が比較し易い」と説明するが、韓国はオランダのような農業大国ではないのは確かである。農林水産業の生産額(名目)は世界22位と、日本の世界10位より低い上、韓国産の農産物が日本市場を席巻している訳でもない。今月13日の自民党のPTでは、「韓国と比べることは適切なのか? 日本は、資材の質の高さが農産物の輸出に繋がっている」等と牽制する声が相次いだ。「コスト削減によって食の安全性が脅かされる」と主張する議員もいる。だが、コスト削減悪玉論の行く先は、現状肯定に落ち着いてしまうのではないか。肥料・農薬・飼料メーカーの供給過剰の状況は、資材の流通をほぼ独占するJAグループが長年続けてきた慣行によるところも大きい。『全国農業協同組合中央会(JA全中)』の奥野長衛会長は、一連の改革について「痛みを伴うものだ」と認める。何より、「高く資材を売りつけるJAなんて必要無い」(千葉県の農家)と話す農家が出始める中、JAグループと取引先との“馴れ合い”が農業に良い影響を齎す筈もない。韓国を巡る一連の論争は、国内農業の強化に向けて素通りできないポイントと言える。 (中戸川誠)


⦿日本経済新聞電子版 2016年9月21日付掲載⦿
スポンサーサイト

テーマ : 経済・社会
ジャンル : ニュース

轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

广告
搜索
RSS链接
链接
QR码
QR