【霞が関2016秋】(05) 財務省に忍び寄る3次補正の足音

事業規模28.1兆円と、史上3番目の規模に膨らんだ先月決定の経済対策。今日召集の臨時国会で、経済対策の裏付けとなる今年度第2次補正予算案の審議が始まろうとする中、財務省には早くも“3次補正”の足音が聞こえ始めた。「状況次第だ。補正のシナリオは否定できない」。財務省幹部は、第3次補正予算が来年の通常国会冒頭に提出される可能性について、こうした認識を示す。今年度の歳出総額は、96兆円の当初予算に、熊本地震の復旧費を盛り込んだ1次補正と経済対策の2次補正で、3年ぶりに100兆円の大台に乗っている。通常は他省庁の歳出拡大に睨みを利かせる財務省だが、省内からは3次補正について、半ば諦めの声が漏れる。背景には、3つの特殊要因がある。第1の要因は、12月15日に予定される日露首脳会談だ。安倍晋三首相の地元である山口県にプーチン大統領が訪問する日程が既に固まっており、日本側では北方領土問題でも前進を期待している。首相は今月2日の首脳会談で、エネルギー等8項目の対露経済協力案を示しており、プーチン大統領は記者会見で「政治的な問題の解決の為にも極めて重要だ」と、経済協力の重要性に言及した。こうした背景から、民間エコノミストの1人は、「補正を出すとすれば、経済協力案件を柱とした“ロシア補正”となるだろう」との見方を示す。経済協力は民間企業が主体となるものが多いが、ロシア企業への出資や融資等、財政措置を伴う項目もある。ロシア企業への出資なら、建設国債の発行で財源を賄うことが可能で、自民党内に抵抗が強い赤字国債も回避できる。第2の要因は、予算制度の仕組みにある。政府は当初予算で事業費と税収の見積もり等を決めて、年度を通じて予算の執行状況を確認していく。経済環境の変化や事業の進捗状況によって、実際の歳入や歳出にはぶれが生じる為、毎年秋頃に収支の帳尻を合わせる“事務補正”と言われる補正予算案を提出するのが通例だ。

しかし、今年度は2次補正案を編成するタイミングが早かった為、こうした事務処理を未だ終えていない。内部的には、来年1月召集の通常国会冒頭への事務補正提出が既定路線となっている。「事務補正だけでは終わらせない」。事情を熟知する自民党幹部は、こう鼻息を荒くする。政府関係者によると、現在の金利水準が続けば、来年1月までに予定していた国債発行の不要額が数千億円程度生まれるという。日銀の金融政策の基本方針が大きく揺るがない限り、当初予算の国債費で想定した1.6%の想定金利を、実際の金利が下回る状況が続く。経済成長率が高まらない中、事務補正に合わせて数千億円という規模の財源を、景気浮揚の為に活用したいのが議員心理だ。首相の経済ブレーンで積極財政派である京都大学の藤井聡教授は、早くも「3次補正を今から検討しておくことが重要だ」と布石を打っている。これに拍車をかける第3の要因が、永田町で囁かれ始めた“早期解散説”だ。公明党の井上義久幹事長は今月17日の党大会で、次期衆院選について「現行の区割りの下で行われる可能性は十分ある」と、早期解散の可能性に言及した。事務補正の提出時期と丁度重なる来年1月に、衆議院解散に打って出る説が取り沙汰されているという。安倍政権の衆議院解散と補正予算を見てみると、強い相関関係があるのは明白だ。2014年12月投開票の衆院選では、翌年1月に総額3兆円の補正予算を閣議決定。自民党が政権交代を果たした2012年12月投開票の衆院選でも、翌年1月に総額13兆円もの補正予算を策定した。何れも選挙戦で安倍首相がアベノミクスの実現を訴えた形を取っており、家計等に恩恵が十分に行き渡っていない経済情勢は、現在の情勢と一致する。ただ、補正予算は緊急的な編成理由がある時にのみ認められ、連発すれば「経済政策の失敗だ」と批判されるリスクもある。3次補正を編成することになれば、東日本大震災で年度を通じて第4次補正予算まで組んだ2011年度に次ぐ回数だ。「今はじっくり状況を見極めるしかない」(財務省幹部)。更なる財政出動に動くのか。足音の正体が明らかになるのは晩秋だろうか。 (重田俊介)


⦿日本経済新聞電子版 2016年9月26日付掲載⦿
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