【霞が関2016秋】(06) 経産系と文科系…“AI研究所”は2つも必要か

実用化で先行するアメリカを始め、世界各国が凌ぎを削る人工知能(AI)の開発競争。政府内では経済産業省・文部科学省・総務省が共同で戦略会議を立ち上げ、人材育成策等を検討している。一方、政府が資金を出す研究拠点は2つに分かれ、早くも“縦割り”の弊害を懸念する声が出始めている。1つ目の研究拠点ができたのは昨年5月。経産省が所管する『産業技術総合研究所(産総研)』が、東京都江東区のお台場地区に『人工知能研究センター』(以下『産総研AIセンター』)を立ち上げた。169人の研究者を含む348人の規模で、主に産業用ロボットや医療用の画像診断等を研究している。そこに、文科省所管の『理化学研究所(理研)』の新たな拠点構想が加わった。『革新知能統合研究センター』(以下『理研AIセンター』)だ。『トヨタ自動車』や『NEC』等、産官学から精鋭100人を集め、来年1月にも本格的な研究を始めるという。「今ある技術を明日にも使えるようにするのが産総研、今は無いが10年先に使える技術を開発するのが理研の抑々の役割だ」。理研でAI分野を統括する理研AIセンター長の杉山将氏は、2つの出身母体の特徴を引き合いに出しながら、「AI分野での棲み分けができる」と強調する。言い換えれば、技術の原理や開発の仕方等といった“基礎研究”に強いのが理研で、企業が製品開発に転用できる技術を開発する“応用研究”で定評のあるのが産総研ということになる。

例えば、自動運転車に関する研究開発では、理研AIセンターが歩行者を認識する際の原理を研究し、産総研AIセンターがAI技術を自動車に組み込む可能性を探る…といった分担になりそうだ。ただ、こうした役割分担は外部からは見え難い。経産省は、産総研AIセンターの設立・研究費用に約100億円を投じており、文科省も来年度予算の概算要求で、理研AIセンターの設立費用50億円を要求している。巨額の費用を使うからには、別々に拠点を造る必要性や、其々の研究内容の意義をわかり易く国民に示す必要がある。その一例が、センターの立地拠点だ。理研AIセンターは、大手外資系金融等も入居する中央区日本橋の高層ビルに入る見通しだ。文科省は「国内外からトップレベルの研究者を呼び易い場所を探した結果だ」と説明するが、都心の一等地に拠点を設ける必然性がどの程度あるのか。元々、昨年に産総研AIセンターを立ち上げる際、「産総研が理研に『一緒にやらないか?』と声をかけたが、断られた」(経産省幹部)経緯がある。産総研AIセンター長の辻井潤一氏は、「『似たような拠点ができて無駄だ』という印象を与えると、AI技術の重要性自体にも疑念を抱かれかねない」と懸念する。大量の画像や音声等のデータから、自力で特徴を見つけ出す“深層学習”の発展によって、AIの研究開発は実用段階に急速に進みつつある。ただでさえ周回遅れの日本が産学官の力を結集できなければ、世界との差は一段と開きかねない。双頭の司令塔は、そんな懸念を払拭する為にも、注ぎ込んだ資金に見合った成果をきちんと出す必要がある。 (光井友理)


⦿日本経済新聞電子版 2016年9月27日付掲載⦿
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