【Global Economy】(05) OPEC減産、8年ぶり合意…原油安、負のスパイラル

『石油輸出国機構(OPEC)』が、低迷する原油価格を反転させる為、8年ぶりに減産することで合意した。原油安は、金融市場のマネーの流れに変調を齎し、世界的な株安と景気減速を引き起こしてきた。だが、原油市場は需要が伸びない一方、供給は増え易い構図が続く。OPECの思惑通りに原油価格を上向かせられるかどうかは見通せない。 (本紙経済部デスク 中沢謙介)

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OPECの合意を受け、原油価格は1バレル=47ドル台まで上昇した。しかし、歴史的に見れば未だかなりの低水準だ。原油安は本来、日本等資源を輸入に頼る国にとって、原材料費や輸送コストを押し下げ、景気のプラス要囚となる。だが、2014年以降の原油安の長期化は、日本を含む世界経済を不安定にしてきた。原油価格が下がると、産油国は原油を輸出して得られる収入が減り、景気が後退する。“オイルマネー”を運用している産油国の政府系ファンドはリスクを取り難くなるので、世界の株式市場に投じていた資金を引き場げ、各国で株安が加速する。投資家は、比較的安全な資産とされる円を買い、円高が進む。日本の輸出企業は業績が悪化し、景気を下押しする。原油安の背景には、幾つかの要因がある。その1つが、中国経済の減速による需要の落ち込みだ。中国は、2008年のリーマンショックを受けて、大規模な景気対策を実施した。その際に行った大規模な設備投資が今も残り、“過剰生産設備”となって、中国の経済成長率は徐々に低下している。アメリカの中央銀行である『連邦準備制度理事会(FRB)』が昨年12月、大規模な金融緩和に区切りをつけて、9年半ぶりに政策金利を引き上げたことも影響した。ブラジル等新興国に向かっていた投資資金が、より有利な運用先を求めてアメリカに還流した為、新興国の景気が後退し、原油の需要が低下した。こうして原油価格が下落したことで、OPEC加盟国だけでなく、ロシア等の産油国も景気や財政が悪化した。今回の減産合意が、原油安による負の連鎖を食い止め、世界経済が好転に向かうかどうかは不透明だ。それを妨げる様々な要因があるからだ。その1つは、世界的な石油の供給量が増え易いことだ。アメリカで産出されるシェールオイルが存在する為だ。シェールオイルは生産コストが高いことから、アメリカの開発企業は原油価格の急騰で採算が悪化し、苦境に陥っていた。アメリカの1日当たりの原油の生産量は、昨年4月に約962万バレルを記録した後は減少傾向が続き、今年6月には約10%減の約870万バレルとなった。

今回の合意を受けて原油価格が上昇すれば、シェールオイルの開発企業は採算が改善するので、再び生産を増やすとみられる。しかし、原油生産量が増えて、価格がまた下落する恐れがある。実際に、原油価格が持ち直した今夏以降、アメリカの石油業界は息を吹き返しつつある。アメリカの石油会社『べーカーヒューズ』によると、アメリカで稼働する石油の掘削装置は、5月下旬に300基余りだったが、今月23日時点では418基に増え、約7ヵ月ぶりの高水準に達した。『アメリカ石油価格情報サービス』のトム・クローザ氏は、「アメリカののシェール業者の半分以上は、原油価格が1バレル=35~45ドル程度の水準になれば、利益を稼げる。原油価格が上昇すれば、中断していた生産が再開される」と分析する。原油安の反転を妨げているもう1つの要因は、OPEC加盟国同士の深刻な対立だ。サウジアラビアとイランは、共にOPEC発足時からのメンバーだが、長年、中東で覇権を争ってきた。両国は共にイスラム教が主な宗教だが、サウジはスンニ派が多数派を占める一方、イランはシーア派が主導する。主な民族が、サウジはアラブ人、イランはペルシャ人という違いもある。今年1月には、サウジがシーア派の法学者を処刑したことをきっかけに外交を断絶し、緊張が高まった。原油の生産量を巡っても、両国は対立関係にある。イランは、核開発に絡んで、欧米から科されていた経済制裁が今年1月に解除されたばかりだ。経済の再生を国家の重要課題としており、制裁中に減らした生産量の回復は譲れない目標だ。一方のサウジは、イラン抜きで増産の凍結や減産に踏み切ると、イランは増産できて収入を増やせる為、宿敵を利することになる。サウジにとって、イランを減産の例外とする今回の合意は苦渋の決断だった。サウジは、国の歳入の約8割を石油に依存しており、原油安による財政悪化が限界に達しつつある。今回の合意は、サウジの原油安に対する嘗てない危機感が齎したとも言える。イランと激しく対立する構図は変わらない。『石油天然ガス・金属鉱物資源機構』の野神隆之氏は、「OPECは漸く結束を示したが、今回の合意を実際に実行できるかが重要だ」と指摘する。世界経済の低成長が続いて、原油の需要が伸びない中で、供給量は減り難い。OPECの減産合意は、原油価格の底割れを防ぎこそすれ、反転させるには力不足と言える。

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■増減産で価格調整困難に
『石油輸出国機構(OPEC)』は1960年、主要産油国のサウジアラビア、イラン、イラク、クウェート、べネズエラの5ヵ国が設立した。当時、世界の原油市場は『エクソン』や『モービル』等、“セブンシスターズ”と呼ばれる7大石油企業(メジャー)が国際カルテルを結び、石油を低価格で大量に販売していた。産油国は不利な条件を押し付けられ、利益が少なくなりがちだった。OPEC設立は、原油の価格決定の主導権を取り戻す狙いがあった。OPEC加盟国は、メジャーが持つ石油利権に対する資本参加や国有化を進め、程無く市場支配力をメジャーから奪い返していった。OPECの存在感の大きさを示したのが、第1次石油危機(1973年~)と第2次石油危機(1978年~)だ。何れも原油の供給が大きく減り、OPECは原油価格を大幅に引き上げることに成功した。しかし、1980年代に入ると、価格の上昇を背景に原油の需要が低迷し、原油価格は低下基調に転じた。OPEC各国は軒並み原油収入が減り、経済に打撃を受けた。その後、OPEC以外の原油生産量が増えたこともあり、OPECの価格支配力は次第に低下した。1980年代後半以降は、需要と供給に基づいて原油価格が決まる“市場の時代”となった。2000年代に入ると、へッジファンド等が投機の対象とするようになり、需給だけでなく、金融市場の動向によって価格が大きく変動する“金融商品化”が進んだ。更に、2010年代にはアメリカで、技術的に難しかったシェールオイルの生産が本格化した。OPECの存在感は一段と下がっており、加盟国による増減産だけで原油価格を大きく動かすのは難しくなっている。


⦿読売新聞 2016年9月30日付掲載⦿

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