【霞が関2016秋】(07) 税制103万円の壁見直しで現れたもう1つの“壁”

厚生年金や健康保険といった社会保険に加入して保険料を徴収される基準が一昨日、年収130万円から106万円に下がった。社会保険料を納めると将来貰える年金が増える効果があるが、パート労働の主婦が社会保険料の発生を嫌って就労を調整する“130万円の壁”に代わって、“106万円の壁”が登場するとも言える。政府・与党は、主婦の就労を巡るもう1つの壁である所得税の配偶者控除を見直す議論に着手したが、どう整合させるのだろうか。サラリーマン世帯の主婦が税制を意識して就労を抑えるのは、“年収103万円の壁”。妻の年収が103万円以下だと、夫の給与所得から38万円の配偶者控除を受けられるからだ。政府税制調査会は配偶者控除を見直し、共働き夫婦にも適用する夫婦控除と呼ぶ税優遇を設ける案を示している。政府税調の案が実現すると、結婚世帯は高所得層を除いて、皆同じ税優遇を受けられることになる。パート主婦の増収で、夫の所得税が増える心配は無くなる。女性の労働意欲を妨げない税制を作り、安倍晋三首相が力を入れる働き方改革を後押しする構えだ。尤も、社会保険の壁が106万円まで下がった結果、税制103万円の壁が撤廃されたとしても、パート主婦はその恩恵を感じ難くなった。

将来貰える年金が増えるという見返りがある社会保険は税制と異なる負担だが、目先の家計を助ける為に働くパート主婦にとって、「税も社会保険も負担は負担だ」とも映る可能性が高い。一部のメディアは先週末、「配偶者控除の対象者を広げて、103万円の壁を引き上げる案が政府内に出ている」と報じた。壁が上がると、パート主婦は今より沢山働き易くなる。与党内に燻る慎重論を踏まえて抜本改革を諦め、現行の配偶者控除を微修正する考え方だ。この場合、税制の壁が社会保険の壁よりも高くなり、金額の上下が入れ替わる形で2つの壁が存続することになる。「衆議院解散・総選挙が近い」という観測が流れる中、「たとえ一部でも、増税世帯を生む所得税の見直しは、来年以降に先送りする」という政治判断もあり得ない訳ではない。ただ、税制103万円の壁を放置すると、政府が今年の優先課題と位置付けた働き方改革の本気度や実効性が疑われるだろう。図らずも、年末に向けて税制論議が佳境を迎えるのと並行し、社会保険料の対象拡大への反響もじわじわ広がっていく。今秋の所得税改革は、「税制と社会保障を合わせた国民負担の在り方がどうなるのか」という視点からも注目を浴びる。配偶者控除を見直すにしろ残すにしろ、一歩間違えば批判を浴びかねない、舵取りが難しいテーマになってきた。 (上杉素直)


⦿日本経済新聞電子版 2016年10月3日付掲載⦿
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