【ヘンな食べ物】(07) イモムシにはご用心

「どんなにゲテモノに見えても、地元の人が食べていたら大丈夫」というのが、私の“食の安全基準”だ。その代表格がイモムシ類。見かけは気持ち悪いが、平気で食べる民族は結構多い。コンゴでは特によく食べていた。例えば、白くて大きなカブト虫かクワガタの幼虫をヤシ油で揚げた料理。油の香ばしさと適度な火の通り方で、生臭さは全く無く、プリッとした歯応えとまったりした味わいはビールによく合った。長さが5㎝、太さが1㎝くらいで、最初は「えっ、かりんとう? こんなところに?」と思ったら黒いイモムシだったこともある。カリカリに乾煎りしているので、味は完全にスナック系。私が遊びに行ったお宅では、若い女の子2人が髪を結いっこしながら、ポリポリとそのイモムシを齧っていた。そんな経験を重ねていただけに、初めてタイ北部のチェンマイに行って、市場で白くて細長いイモムシが山積みされているのを見た時も、驚きは無かった。売り手のおじさんに、片言のタイ語で「これ、美味しい?」と聞くと、おじさんはにっこり笑って「うん、美味しい」。「それじゃ」と私は1匹抓んで、口の中に放り込んだ。ぶちゅっと生臭い汁が弾けた。腐りかけた半熟の黄身を食べているよう。「チェンマイの人は、こういうものが好きなのかな?」と不思議に思った時である。「うわっ!」と売り手のおじさんが驚愕した。私を指差し、大声で何か言っている。周りの人もびっくりして群がってきた。誰かが英語で言った。「駄目よ! それは料理して食べるのよ!」。実は、油でカラッと揚げてサクサク食べるものだったのだ。「えーっ!?」。地元の人に驚かれたら、私の食基準では“アウト”だ。結果的に腹を壊すことはなかったが、その晩、イモムシが胃を食い破って出てくるというホラーな夢に散々魘されたのだった。


高野秀行(たかの・ひでゆき) ノンフィクション作家。1966年、東京都生まれ。早稲田大学第1文学部仏文科卒。『幻獣ムベンベを追え』(集英社文庫)・『アジア未知動物紀行』(講談社文庫)・『世界のシワに夢を見ろ!』(小学館文庫)等著書多数。


キャプチャ  2016年10月6日号掲載
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