「中台、冷静な対応を」「天然独(生まれながらの独立派)は自然なこと」――台湾・蔡英文総統インタビュー

【台北=向井ゆう子・北京=竹腰雅彦】台湾の蔡英文総統は昨日の本紙東京本社編集局・溝口烈局長とのインタビューで、台湾に対する圧力を高めている中国について、「我々は我慢強いが、対岸(中国)はより多くの知恵を絞ることを希望する」と中国に冷静な対応を呼びかけた。独立志向を封印した今年5月の就任演説を引き合いに、「“現状維持”の約束は守る」と述べ、一定の対中配慮も改めて示した。

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察氏は、自身の総統就任後暫くは、中台双方が「冷静で理性的に中台関係を処理できた」との認識を示し、中国にそのスタンスへの復帰を呼びかけた。“1つの中国”原則を巡る『1992年合意』の受け入れを迫る習近平政権に対し、前提条件無しの建設的な中台対話の実現も訴えた。また、「中国と台湾は別である」と考える“天然独(生まれながらの独立派)”と呼ばれる若い世代について問われると、「自然なことだ」と共感を滲ませた。中国本土の若者との交流が「両岸関係を考える上での助けとなる」との認識を示し、「中台双方の指導者が交流を奨励すべきだ」との考えを示した。蔡氏は、こうした若い世代が「自由民主の環境で育った」と述べ、中台が異なった政治制度や価値観に立っていることを改めて指摘し、「彼らには自分たちの考え方があり、指導者が価値観を押し付けることはできない」と述べた。民主主義が定着した台湾の若者を通じ、中国に影響を与える考えもある模様だ。ただ、習政権は、蔡政権が『1992年合意』を受け入れない限り、対話を拒否する姿勢で一貫している。

習政権の対応は、当初の様子見から揺さぶり・圧力の強化に移っており、習政権が求心力を必要とする来年の中国共産党大会に向け、圧力を一層高める可能性がある。蔡氏の主張する“現状維持”に対しても、将来の中台“統一”を目指す習政権は、「民意を盾に、“現状維持”で関係が固定化されることは認めない」(台湾問題専門家)との立場だ。中国は、今年6月に当局間の連絡・交流停止を発表後、台湾で8年ぶりの政権交代の高揚感が冷める時期を見計らったように、①台湾の国連機関へのオブザーバー参加禁止等国際空間での圧迫強化②台湾経済に影響する大陸からの旅行の調整――等を打ち出してきた。先月末の『国際民間航空機関(ICAO)』総会への参加問題では、台湾の国際活動は「“1つの中国”を堅持する前提下でのみ可能」と強調。今後、他の活動も認めない立場を鮮明にした。観光客急減に伴う台湾観光業者の大規模デモでは、「蔡政権の対中政策への“反対票”だ」と評価し、揺さぶりを強めた。これらとは別に、中南米等、台湾と外交関係のある国への経済援助を通じた切り崩しも加速しているとみられる。一方で、先月には国民党中心の県・市の首長の訪中団を受け入れた。中台関係の緊張が、蔡政権の一層の日米傾斜に繋がることへの警戒もあり、当面は決定的な対決は避けつつ、硬軟を織り交ぜて段階的に圧力を強めるとみられる。

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蔡英文総統とのインタビューの要旨は以下の通り。

【日台関係】安倍首相と連携しながら関係を更に強化し、地域全体の平和と安定の為に寄与したい。日本との“海洋協力対話”に期待している。具体的な日程は決まっていないが、今月中の開催も排除しない。沖ノ鳥島を巡り、日本と台湾の立場は異なるが、台湾の総統として最も関心があるのは、台湾の漁民が周辺海域に自由に入って操業できるようにすることだ。この問題が議題に盛り込まれることを望む。

【中台関係】私は5月20日の就任演説で、台湾社会の最大限の柔軟性と最大公約数の意見を提示した。その後暫く、中国は理性的で冷静な対応を取ったが、再び古いやり方に戻り、台湾に圧力をかけている。こうしたやり方は、双方の利益にならない。台湾と台湾人が圧力に屈服することはあり得ない。我々は、「1992年に両岸の窓口機関が共通認識に達した」という歴史的な事実を尊重する。中国には、前提を設けずに、建設的な対話と交流を通して双方の対立を解決することを呼び掛けたい。台湾で生まれ育った若者が、台湾に対する意識や愛情を抱くこと(天然独)は自然なことで、変えようがない。両岸が健全な交流を維持し、双方の若者が触れ合うことができれば、若者たちが両岸問題を考える上で大きな助けとなるだろう。

【東・南シナ海】多国間による協議を通した平和的な解決を主張する。台湾は、これらの海域における利害関係者だ。我々も、多国間の紛争解決メカニズムに平等な立場で参加するべきだ。南シナ海問題は、「係争の棚上げと共同開発」という手法で解決できる。(台湾が実効支配している)太平島を人道救助や科学研究の基地にしたい。

【経済政策】台湾経済は、過度に中国市場に依存していた。双方は相互補完の関係だったが、現在は競合の関係になった。私たちは相互補完性の強い国を探し、経済関係を強化する必要がある。東南アジアや南アジアの多くの国がそうだと思っている。研究開発や科学技術の面で相互補完できる日本や欧米との経済関係も強化する。その上で中国との経済関係を持続させることは、台湾の経済発展の安定的な基礎となる。

【米台関係】アメリカでどの候補者が次期大統領に選ばれても、この地域の平和と安定を維持する決意を変えず、『台湾関係法』に基づく責任を引き続き履行することを期待する。アメリカが私たちの防衛に必要な援助を提供してくれることを信じている。自主防衛の精神で、①軍事訓練強化②最新鋭の武器調達と自主製造の推進③情報戦対策の強化――を進める。


⦿読売新聞 2016年10月7日付掲載⦿

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