【Jazzyの裁判傍聴ライフ】(11) 妄想に取り憑かれた男たち

妄想性障害や統合失調症等による精神疾患から、通常の判断ができずに罪を犯してしまうケースがあります。薬物の影響・遺伝・ストレス等、発症の原因は様々ですが、幻覚・幻聴・妄想の恐怖と危機感の中で止むを得ず凶悪犯罪に走ってしまう事案では、刑事責任能力を問えるかの判断が難しい裁判になります。今回は、そんな妄想に駆られた2人の男性のお話です。

■テレビに操られた母を殺そう
30代の男は、16歳から30歳までの間に、大麻・シンナー・LSD・コカイン・覚醒剤等を使用。自宅に引きこもり、毎日酒浸りの生活を送っていたところ、幻聴と妄想が出現。その症状は次第に悪化し、「俺はテレビに監視されている!」「母親が認知症になった!」と不安な毎日を過ごしました。犯行当日、「母親までテレビに監視され、操られている!」という妄想が生じ、「これでは母親が可哀想! 自分は母親を介護することができないし、自分1人で生活することも不可能」と思いを悪化させ、「母親を殺して自分も死のう」と決意。そして、母親の頸部を包丁で切りつけ、頭部を鍋やカナヅチで数回殴打しました(母親は何とか一命を取り留めたそうです)。裁判所は、「被告人は犯行当日、多剤使用による精神障害の為に心神耗弱状態だった」と認定。「健常者と同等に、被告人を強く非難することはできない」として、執行猶予付きの有罪判決に。

■自分は天界から指名された悪魔退治エージェント
30代の男は、同居する弟のことを“悪魔”と思い込んでいました。彼は「弟に殺される」という恐怖に脅えながら、自室のカーペットの下に塩を敷き詰め、カーテン等には鉄製の針を仕込み、“結界”を作って生活。軈て現れた第2妄想では、「お稲荷さんから“神のエージェント”として選ばれた自分が悪魔を倒すのだ!」と思い込み、「弟を悪魔に育てた祖母もまた悪魔であり、世の為に退治しなければならない」と妄想。彼はハンマーとナイフ、そして鉄の抗を用意。抗は、お稲荷さんから指示を受けて悪魔を消滅させる為に準備したもの。犯行当日、男は弟と祖母の顔面・頸部・腹部等を何度も繰り返し突き刺し、動かなくなった2人を徹底的に攻撃して止めを刺しました。1審では精神疾患が認められたものの、懲役8年の実刑に。しかし、控訴審では「あまりにも執拗・過剰で、異常な態様を照らすと、妄想の影響が圧倒的に大きかったとするのが自然。原判決には事実誤認がある」とされ、1審判決を破棄して被告人を無罪としました。このように、被害結果や周囲に与えた影響が重大でも、被告人に責任を問えない事件は、とても複雑な気持ちになります。「テレビに監視されている!」「悪魔を倒す!」等の文言は、通常の裁判は勿論、日常生活でも先ず聞くことがありません。被告人が抱えていた苦しみは、想像を絶するものだったでしょう。若し、家族や周囲の人が彼らの異変に気付き、適切な治療を受けていたら…。司法は「この2人の被告人に服役はさせない」という判断でしたが、自らが犯した罪と向き合って、一生をかけて償っていってほしいと思います。


キャプチャ  2016年10月17日号掲載
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