【霞が関2016秋】(10) たなざらし“脱時間給”…残業規制と矛盾あるか

労働時間ではなく、仕事の成果に給料を支払う“脱時間給制度”を盛り込んだ労働基準法改正案の先行きが怪しい。国会に昨春提出された後、ほぼ審議されないまま1年半も店晒しが続き、今の臨時国会でも成立は見送られる見通しだ。政府が長時間労働是正の旗を振り始めたことで、「残業時間規制と脱時間給は矛盾する」との声も強まっている。「労基法改正案の成立は来秋以降になる」との見方まで出始めた。「この臨時国会できちんと制度化してほしい」。先月末に首相官邸で開いた政府の『働き方改革実現会議』の初回会合で、『日本経団連』の榊原定征会長らは労基法改正案の早期成立を訴えた。労基法改正案には、高所得者の専門職を対象にした“脱時間給”の他、予め想定した労働時間だけ働いたと見做す“裁量労働制”の対象を、専門知識を持つ営業職に広げることが盛り込まれている。対象は数万人ほどとみられるが、「硬直的な日本の労働市場改革の第一歩になる」と国内外の経済界が期待を寄せていた。安倍政権も、2014年6月に『産業競争力会議』が提案した当初は、脱時間給を規制改革の目玉に据えていた。だが、政権がアベノミクスの軸を賃上げ等に移すのに合わせて、労基法改正の勢いも後退。政府・与党が“残業代ゼロ法案”と批判を強める野党との衝突回避を優先したことで、2年続けて通常国会で審議されなかった。今の臨時国会でも成立が難しくなっている表向きの理由は、年金の受給資格期間を短縮する法案等、優先する厚生労働省関連の法案が多く、審議時間が足りない為だ。しかし、野党だけでなく、与党からも「政府が残業規制の旗を掲げているのに、労働時間を規制しない“脱時間給”を審議するのは矛盾しており、整合性が取れない」との声が漏れ始めたことも、大きく影響している。

加えて、残業規制と脱時間給の双方とも、最終的には労基法の改正が必要な点も、この問題をややこしくしている。安倍政権は働き方改革実現会議で、来年の3月末までに残業時間規制の対策を取り纏めて、その後に改正法案として完成させる計画だ。この為、厚労省幹部は、「先ず臨時国会で脱時間給を成立させた上で、残業時間規制の労基法改正に着手したい」との建前を語る。だが、与野党からの“矛盾”批判を受けて、国会審議はこれまで以上に難しい状況にある。「『脱時間給を盛った今の法案を一旦撤回しろ』という声を恐れている」(別の厚労省幹部)というのが本音だ。では、本当に脱時間給と残業時間規制は矛盾するのか。『日本総研』チーフエコノミストの山田久氏は、「新たな残業規制には例外業種が設けられると思うが、脱時間給の対象になるような高所得でスキルの高い仕事は、その例外に入る可能性が高い。脱時間給と残業規制は両立できる」と語る。寧ろ、「労使の代表者が出席する審議会で合意した法案を何年も国会で店晒しにしたり、審議せずに撤回したりするのは問題だ」と指摘する。このままでは、脱時間給や裁量労働制の拡大は順調に事が進んでも、国会審議が始まるのが来年の夏。しかも、野党の反発で審議が難航するのは明白で、成立は秋以降に先送りされる公算が大きい。長時間労働是正との“矛盾論”が更に拡大すれば、完全に廃案になる可能性もゼロとは言えない。産業競争力会議が労働時間改革を提案してから2年超。このスピード感を、国内外の経済界はどう評価するだろうか。 (中島裕介)


⦿日本経済新聞電子版 2016年10月11日付掲載⦿
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