【水曜スペシャル】(15) 駒澤大学に忍び寄る中国の影…瀋陽と駒大を繋げる黒幕、北海道系列校“無償譲渡”を巡る謎

2019-04-10T23:33:39+09:00

Posted by George Clooney

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教育





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「マー君の高校が乗っ取られる」――。今年1月19日に開かれた駒澤大学野球部創部70周年を祝う会の席上、一部の参加者がこんな話をしていた。マー君とは『ニューヨークヤンキース』の田中将大投手のことであり、彼の出身校である駒澤大学附属苫小牧高校(※右画像)が乗っ取られるというのだから、話は穏やかではない。東京の『明治記念館』で開かれたこの会合に参加したのは、野球部関係者やOBのプロ野球選手だけでなく、学校側関係者や同校の設立母体である宗教法人『曹洞宗』の僧侶・関係者も多数いた。こうした学校関係者が警戒しているのは、忍び寄る“中国の影”。駒澤大学や曹洞宗の周辺で、ここ数年、中国絡みの出来事が相次いでおり、辿っていくとあるキーマンが浮かび上がるのだ。発端は2017年1月、駒大が系列の苫小牧駒澤大学を学校法人『京都育英館』に無償譲渡することを決定したことだった。大学の定例理事会の冒頭、須川法昭理事長が突然、京都の学校法人に譲渡する内容の声明文を読み上げ始めた。出席者の殆どは当初、何が起きているのかわからず、理事長の声明を聞くばかりだったという。須川氏とこれに関与した幹部の準備は周到だった。声明文を読み終わるや、唖然とする理事らに、移管協定書案やスケジュール等を記した分厚い資料が手際良く配布された。厚さ数㎝にも及ぶその資料の量から推測しても、相当以前から準備していたと思われる。内情を知る駒大の関係者が語る。「須川理事長と数名の幹部らが極秘裏に進めていたようだ。しかし、僧侶である須川氏は実務的なことは全く知らないので、これを仕切る有力者と一緒に計画を進めていたんだろう」。

苫小牧駒澤大が開校したのは、約20年前の1998年。定員の200人を満たしていたのは当初だけで、早くも2000年頃から定員割れが始まり、2017年度の入学者数は57人にまで落ち込んでいた。前出の関係者によると、この十数年は駒大が運営費の内、凡そ2億円を負担していたという。重荷であったことは間違いないが、“無償”というのは果たして適切だったのか? 譲渡されたのは、苫小牧駒澤大学の敷地凡そ15㏊。この内、10㏊は開校時に苫小牧市から提供されたもの。残り5㏊についても、同市から無償貸与されてきた。これに加え、校舎、図書館、備品類等もあり、総資産は約50億円と見積もられる。一方、譲渡された側の京都育英館は2013年4月に設立された学校法人。傘下には京都看護大学や、苫小牧市に隣接する白老町の北海道栄高校がある。ここを設立した親法人に当たるのが、やはり京都の学校法人『育英館』だ。京都市内の『京都ピアノ技術専門学校』と『関西語言学院』の他、高知県の『四万十看護学院』を運営する。育英会の最大の特徴が“中国とのパイプ”だ。関西語言学院は、中国人を受け入れる為に設立された日本語学校。中国の高校や大学を卒業した学生の受け皿となり、教育を施した上で日本の大学や大学院に進学させている。また、育英館は1998年、遼寧省瀋陽市に現地の学校と共同で『東北育才外国語学校』を設立している。ここは日本語教育を行なう中高一貫校で、卒業生が前述した関西語言学院に留学するケースも少なくない。育英館の大きな役割は、中国、特に瀋陽の学生の受け皿となることであり、傘下法人が苫小牧駒澤大学の譲渡を受けたのも、その一環とみられる。育英館の法人登記によれば、理事の内、2人は中国人であり、共に中国共産党の党員である。駒大側には誤算もあった。譲渡契約が終了した直後、同大にやって来た京都育英館関係者が、然も当たり前のように「次は高校をお願いします」と声をかけてきたのだ。これが冒頭の駒大苫小牧高の話である。大学附属の同校は、経営的には未だ安定しており、全国的な知名度もある為、手放す気などさらさらない。経営の行き詰まった系列大学を放り出して一安心した途端、相手が附属高校にまで手を伸ばしていることを知り、慌てふためいたのである。では何故、須川理事長らは育英館への無償譲渡に動き出したのか? 前出の駒大関係者は、こう指摘する。「駒大や曹洞宗に強い影響力があり、中国にもパイプを持つ有力者がいる。その人が何がしかの尽力をされたんじゃないか…」。この関係者が指摘する“有力者”とは、弁護士の雨宮眞也氏のことである。千代田区日本橋にある『雨宮眞也法律事務所』のホームページによると、雨宮氏は1959年に司法試験に合格したベテラン弁護士。1994年には駒澤大学の副学長に就任し、1998年から2002年までは学長を務めていた。学長を降りた後も駒大の顧問弁護士を務める等、学校と深い関わりがある。

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一方で、雨宮氏は2003年に遼寧大学の名誉教授になっている。そして、2006年には瀋陽市に『雨宮眞也法律事務所瀋陽代表処』という事務所を開設しているのだ。この情報は嘗てホームページに記載されていたが、現在では何故か削除されてしまっている。瀋陽といえば、先にも触れた通り、学校法人育英館が学校を設立した場所である。これは単なる偶然なのだろうか? 雨宮弁護士の周辺には未だ興味深い点がある。雨宮氏の娘・真歩氏は同じ事務所に所属する弁護士であり、曹洞宗と顧問契約を結んでいるという。曹洞宗関係者によれば、真歩氏には中国人の夫がおり、その人物が駒澤大学の非常勤講師を務めているという。更に、この中国人の夫は現在、曹洞宗の永平寺別院(東京都港区)で住職の資格を取るべく、“安居”という修行をしているのだ。安居を実施するには本来、相当期間、寺に入らなければならないが、仕事を持つ者等に対して“特別安居”という救済の道も用意されている。これは、年に1ヵ月の修行を6年に亘って続けるもので、これが曹洞宗の最低限のラインだ。しかし、雨宮家の婿であるこの中国人に対しては特別な配慮がされているようで、1日でも修行をすると、それを積算していく方式がとられている。関係者によれば「特例中の特例」だという。そこまでして住職の資格を得る目的は何なのか? 余談ではあるが、住職の資格がなければ、曹洞宗の宗議会議員や役員への道も開かれていかない。北海道の大学譲渡、京都の学校法人と瀋陽の語学学校、そして曹洞宗――。一見、何の脈絡もないものが、雨宮弁護士を通すと繋がりが浮き上がってくる。最終的な目的は駒大苫小牧高校なのか、更にそれ以外の事柄もあるのか。未だ全体像は見えてこない。


キャプチャ  2019年3月号掲載




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