【迫り来る北朝鮮と中国の脅威】(02) 元自衛官が見た中朝の軍事力――磯部晃一×伊藤俊幸×永岩俊道

磯部晃一(いそべ・こういち) 元陸将・『川崎重工』ストラテジックアドバイザー。1958年生まれ。1980年に防衛大学校卒。陸上幕僚監部防衛課・第9師団第9飛行隊長等を経て、2011年に陸将昇任。2013年に第37代東部方面総監就任。2015年退官。

伊藤俊幸(いとう・としゆき) 元海将・金沢工業大学虎ノ門大学院教授・『キヤノングローバル戦略研究所』客員研究員。1958年生まれ。1981年に防衛大学校卒。潜水艦『はやしお』艦長・統合幕僚学校長等を経て、海上自衛隊呉地方総監を最後に2015年退官。

永岩俊道(ながいわ・としみち) 元空将・『永岩アソシエイツ』代表。1948年生まれ。1971年に防衛大学校卒。第2航空団千歳基地司令・航空幕僚監部監察官等を経て、2003年に空将に昇任。2006年に退官。


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伊藤「1月6日の北朝鮮の自称“水爆”実験、2月7日の長距離弾道ミサイル発射と、東アジア情勢が急速に緊迫の度合いを増しています。中国は尖閣諸島付近への侵犯を依然として繰り返し、日本のシーレーン(重要な海上交通路)であるスプラトリー(南沙)諸島に、周囲300kmが探知可能なレーダーを配備する等、軍事要塞化を進めています。そこで今回は、陸海空其々の視点から、日本を巡る周辺諸国の脅威について議論してほしいということですが、先ずは北朝鮮について論じていきましょうか」
永岩「先の安全保障法制に係る議論で決定的に欠けていたのが、日本を取り巻く軍事情勢を真摯に分析するという態度ですね。 北朝鮮についても、先ず、朝鮮半島を取り巻く情勢や南北の軍事バランス等を冷静、且つ正確に掌握しなければなりません。因みに、南北の軍事バランスは、アメリカ軍の関与を加えるまでもなく、通常戦力比較では韓国のほうが有利な状況に推移しています。そこで、北朝鮮は“先軍政治”の下、『核武装こそ、北朝鮮の生き残りに合致した国防政策である』と思い込んでいる節があります」
磯部「そうですね。付け加えるなら、一口に“北朝鮮の脅威”と言っても、相対する国毎にその意味するところは違います。そこを理解しないと、同床異夢のままに北朝鮮に対応することになってしまいます。先ず日本にとっては、ノドンやテポドンのような中距離ミサイルによる攻撃と、特殊部隊による作戦が脅威になります。次にアメリカにとっては、最新型の大陸間弾道ミサイルが本土を狙っていることがポイントです。一方、韓国は常に北朝鮮の圧迫を至近距離で感じています。38度線にある非武装中立地帯の100km以内に、北朝鮮は陸上兵力の7割を集中させています。170mmの火砲、240mmの多連装ロケット等がソウルを狙っているのです。2010年に国境近くの延坪島が北朝鮮に砲撃されたのは、記憶に新しいところです」
伊藤「北朝鮮の軍備を、陸海空で具体的に分析してみましょう」
磯部「北朝鮮は、数の上では世界第4位の兵力を持っています。兵器は旧式ですが、102万人の陸軍を擁し、特殊部隊が10万人はいると言われています。日本の陸上自衛隊は約14万人、海上自衛隊は約4万2000人、航空自衛隊は約4万3000人で、陸海空を合わせても北朝鮮の4分の1以下である23万人を切っています。北朝鮮はミサイル・核兵器だけではなく、生物化学兵器の保有も考えられる。また、コンピューターを使った新しい戦争、即ち“サイバー戦”にも相当な国家資源を投入しています。サイパー戦は、暗号解読・産業スパイ・コンピューターウイルスの作成等多岐に亘り、現代では新たな戦争として各国が鎬を削っている。北朝鮮も例外ではなく、寧ろ費用対効果の面から積極的に力を注いでいると見られます」
伊藤「北朝鮮の軍事システムは旧式で、コンピューター化されていません。逆にそれが利点で、自国はサイバー攻撃を受け難く、攻撃に専念できる訳です」

永岩「空軍全体の近代化は殆どなされていないと評価します。極めて旧式の装備品を限定的に保有している状況で、また、パイロットに必須の練成訓練時間等も極めて少ないのではないかと見積られています」
伊藤「海軍も同様に、大した戦力とは言えません。潜水艦は小型で、基本的に夜間に特殊部隊を送り込む為の任務に使用されます。韓国海軍との海戦を想定し、海軍力を整備しているとは言い難いのです」
永岩「空軍の旧式輸送機であるAN-2辺りも、状況によっては、宵闇に紛れての特殊潜入作戦に活用されるかもしれません。一方、国家サイズから考えると、際立っているのがミサイルです。これまでスカッドミサイルを改良し、1993年に実験に成功したノドン(射程距離300km)を皮切りに、テポドン(同1500km以上)・ムスダン(同2500~4000km)等を次々と開発してきました」
伊藤「約20年前にノドンが日本列島を射程に収めた時、自衛隊内部では『大変なことになった』と戦慄が走りました。この『北朝鮮からの直接的脅威が存在している』との認識は、未だに日本人一般に共有されているとは言い難い状態です。北朝鮮が日本を本気で攻撃しようと思えば、無論、事前通告などありません。夜中に秘密裡に車載のミサイルを出してきて発射するのです」
永岩「何と、メイドインチャイナのTFL(輸送起立発射機)を使っている」
磯部「そうです。ミサイルによる奇襲攻撃の可能性が生まれたことは衝撃的でした。そして、7年前には遂に、アラスカを射程に捉えたミサイルの開発に至りました。それが、2009年頃に開発されたテポドン2(同8000km)です。そして、その派生型(同1000km)ではアメリカ西海岸も射程に捉えました」
伊藤「この2月に実験が行われたミサイルは、12000~13000kmの射程を持っていると推定されています。核実験も4回行っていますから、ミサイル搭載できるようになった可能性も否定できません。つまり、実際にこれらの能力があるか否かは別にしても、アメリカに対するブラフとして、『近い将来、相互確証破壊が可能になるぞ』との強いメッセージになりました。『日本列島を超えて飛んでいくのだから、日本には直接の関係が無い』という考えも当然、間違いです。アメリカの北朝鮮に対する抑止力が弱まったことを意味しており、それは即ち日本の危機に他ならない」

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永岩「では次に、日本にどのようなBMD(弾道ミサイル防衛)体制が必要かを考えてみましょう。システム的には、探知・識別・追尾・対処を切れ目なく整える必要があります。本来であれば、日本防衛の為に日本独自のシステムで構成できればいいのですが、現段階ではその多くをアメリカ軍と共同で整えている状況です。探知・識別・追尾フェーズでは、アメリカ軍の早期警戒衛星・海自のイージス艦・空自の地上レーダー等が連携して対処することになります」
伊藤「監視の段階としては、通称“亀の子レーダー(ガメラレーダー=FPS-5)と呼ばれる巨大なレーダーが、佐渡や鹿児島等4ヵ所に設置されており、航空自衛隊が24時間監視しています」
永岩「通常の警戒監視レーダーは、侵入する経空脅威を全周探知するようになっていますが、弾道ミサイルを長距離で探知する為には、レーダーの電磁波を徹底的に絞り込んで、電磁エネルギーをミサイルに集中させる必要があります。今回のような平時におけるミサイル発射の場合は、その日時・場所・方向等を事前予告してきたので、比較的容易に追尾・対処できましたが、有事となればそうはいきません」
伊藤「日本が持っている迎撃システムの第1段階はイージス艦で、SM-3(艦船発射型弾道弾迎撃ミサイル)が装備されています。これは、大気圏外を飛行するミサイルに対処でき、日本列島を広範囲で守ることができますが、港を出港し、指定海域で事前待機する必要があります。イージス艦はBMDだけが任務ではありませんし、通常の訓練もしなければなりません。奇襲攻撃に対しては、イージス艦では“対処”できない場合があると言わざるを得ません」
永岩「第2段階が、ペトリオットミサイル(PAC-3)です。このミサイルは拠点防空用のミサイルで、有効射程は数km程度と極めて限定的と認識しておく必要があります。探知から対処まで、システム的には一応完整していると言えますが、現在の防衛体制で十分という訳ではありません。例えば、在韓アメリカ軍が配信しようとしている長射程のTHAAD(終末高高度防衛)ミサイルの重畳的な装備化等の必要性についても、議論をしておく必要があります」
伊藤「THAADは、東アジアのミサイル抑止の最重要ポイントになっています。韓国への配備について、強硬に中国が反対をしているのです」
永岩「中国の王毅外交部長(外務大臣)は、『(THAADは)中国を攻撃する為の剣だ』と批難しています。北朝鮮のミサイル攻撃に対処する為に配備しようとしているTHAADシステムに対して、中国が咋に反対しているのです」

伊藤「若し今後、『自衛隊や在日アメリカ軍にもTHAADを配備する』という議論になれば、間違いなく中国は猛反発するでしょうね」
磯部「防衛網の整備と合わせて考えなければならないのは、北朝鮮に核開発やミサイル開発をどうやって断念させるかです。第1回の核実験が2006年に行われ、以後、2009年・2013年・今年と3~4年おきに実験が行われています。その間、国際社会は国連安保理決議を採択し、制裁をしてきましたが、一向に効き目が無い。私が危惧するのは、北朝鮮の核実験やミサイル実験に、日本を含めた世界中が慣れてしまうことです。『あぁ、またいつもの実験か』と言っているうちに、気が付けば、北朝鮮がれっきとした核保有国になっているかもしれません」
永岩「北朝鮮は、10年・20年かけて核やミサイル開発を進めてきました。将来の戦力化に対し、日本も相当の準備期間が必要になるかもしれません。平成28年度の予算請求で、“弾道ミサイル防衛関連経費”として2244億円を請求しているのを見ればわかりますが、ミサイル防衛システムの完整には莫大な時間と予算が必要なのです。一方で、冷静且つ現実的な判断も必要です。歴史的に見て、核弾頭は兎も角、通常弾頭の弾道ミサイル攻撃のみで戦争の相手国が屈服した事例などありません。適切に対処し得る信頼性の高い防空システムを提示することが出来れば、一種の抑止効果があるということになります」
伊藤「しかし、朝鮮半島の問題は、日米韓が協調して対処すべきものですが、現在、このトライアングルが歪な形になっていることも悩ましいですね。実質的には、日米同盟と米韓同盟の2つが合わさったに過ぎず、日韓の連携が欠けている。日韓間では、幕僚レベルがお互いに行き来して、年に一度程度、意見交換するスタッフトークス(幕僚協議)を行ってきましたが、国土防衛等について突っ込んだ議論をしたことはありませんでした。情報はアメリカを介しているのが現状です。そこで重要になるのが、日本が韓国に早期締結を呼びかけ続けているGSOMIA(軍事情報包括保護協定)です」
磯部「外交当局のみならず、軍事当局でも軍事情報のやり取りは必要です。それをやり取りする際、第三国へ漏れないよう協定(GSOMIA)を結んでおく必要がある。日米は2007年に締結済みですが、韓国は中々応じようとしません」
伊藤「北朝鮮と韓国は同一の民族で、スパイや脱北者への聞き取り等のヒューミント(人的情報活動)から、日米が持っていない北朝鮮情報を多く保有している筈です。それをもっと共有し、役立てたい」

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永岩「日韓間のGSOMIAの議論は、一時、成立寸前まで行きましたが、韓国政府のポピュリズムによって消散してしまいました」
伊藤「2012年、李明博政権末期の頃でしたね。私も磯部さんも直接担当していたので、よく覚えています。韓国軍も外交通商部(外務省)も『よし、やろう』と殆ど意見集約は終わっていました。ところが、青瓦台(大統領府)に話が上がった途端、ひっくり返りました」
磯部「韓国政府内で、与党対策・世論対策が十分に行われていなかったようですね」
伊藤「日本に対する根強いアレルギーが、安全保障の為の日韓連帯を妨げています。私と磯部さんは50代後半ですが、我々世代の現場は、日韓共にGSOMIAの必要性を共有していました。ですから、2012年6月、韓国政府からNOが出された際、韓国軍の部長たちが『すまん!』とバツが悪そうに会合に現れたのをよく覚えています」
磯部「本来、更に一歩進んで、物資の相互融通の協定であるACSA(物品役務相互提供協定)を結ぶことも、視野に入れるべきなのですが」
永岩「中国が世界有数の軍事大国であることは、論を俟ちません。人民解放軍は230万人を擁し、軍事費はこの20年間で毎年10%以上の伸びを示してきた。今時、あの巨大国家を軍事攻撃しよう等という周辺国は皆無にも関わらず、です。陸海空だけではなく、サイバー戦・ミサイル開発・宇宙開発等、あらゆる面で時代錯誤とも思える軍拡を重ねています」
伊藤「人民解放軍の軍拡の特徴は、どこにあると見ておられますか?」
永岩「ナショナリズムをかき立てる形での軍拡が行われている節があります。例えば中国は、ウクライナから廃船寸前の“ワリヤーグ”という空母を『カジノ船にする』と言って取得しましたが、ものの見事に前言を翻し、2012年に空母“遼寧”に改装し直しました。その頃、私が大連を訪ねた際に、最終侵入経路上の飛行機の窓から、大連港で改装中の遼寧の姿が丸見えでした。国家最高機密の兵器を作るのに、通常、民間航路の真下で行うことなど考えられませんが、中国人に話を聞くと、『中国は大国だから当然、空母を持つのだ』と鼻高々でした」

伊藤「私のように潜水艦艦長をしていた者から見ますと、空母はその大きさ故に遠距離から探知でき、しっかりと護衛されていない限り、保有することに戦術的な意味はありません。東南アジア諸国には一定の影響力を与えるでしょうが、本来はアメリカ軍の空母のように、他国の近傍から空襲し続ける、所謂“パワープロジェクション能力”により、一国の意思を変えることができる戦略兵器である点が重要なのです。『アメリカ軍に追いつけ追い越せ』で軍拡し続けると、ソビエト連邦崩壊のような結果になるかもしれませんね」
永岩「中国は、鄧小平時代には“韜光養晦”ということで、低姿勢の謙虚な戦略を展開していましたが、習近平体制になってからの中国は、『パワーバランスが有利になった』と認識したのか、“積極有所作為”と極めて攻撃的な戦略に転じ、野心を露わにし始めています」
磯部「中国は、北にロシア、西にチベットや新疆ウイグル自治区、南にインド、東に日本と、全方位で懸案を抱えています。自国の安全を確保する為に躍起になっているというのが実情ではないでしょうか」
永岩「中国国防大学の教授でもある海軍の張召忠少将は、『中国は、南シナ海周辺の国々に対して、“キャベツ戦略”で臨むべきである』と臆面もなく主張しています。狙いを定めた島々に漁船を送り込み、それを守る為に民兵や公船を送り込み、仕舞いには海軍艦艇が周囲を取り囲む。そして、いつの間にか中国の主権下に置いていく。まさに、キャベツの葉っぱを1枚ずつ剥がすかのように、他国の領域を侵食していく戦略を中国は取るべきだというのです。中国は、国境の概念が極めて希薄な国です。その時々の国力の及ぶ範囲を国境と認識している節があるのです」
磯部「中国は、隙あらば常に他国の領土・領海にその手を伸ばしてきます。例えば、ベトナムとの間で紛争になっているパラセル(西沙)諸島には、1950年代にフランス軍が撤退した直後に進出し、1974年、ベトナム戦争のアメリカ軍撤退後に完全に占領しました。また、スプラトリー(南沙)諸島は、在越ソ連軍が縮小した1980年代半ばに間隙を突いて占領が行われています」
永岩「アメリカのCSIS(戦略国際問題研究所)によれば、スプラトリー諸島にあるクアテロン礁等7つの人工島の内、4ヵ所にレーダー基地が建設されていることがわかっています。高さ20m級のポールが何本も設置されており、これらは高周波レーダーの一部だとされています。既に3000m級の滑走路も整備していますし、若し300kmを超える範囲の監視が可能なレーダーが設置されたなら、大きな脅威になります」

伊藤「我が国が中国との間で抱えている一番の問題と言えば、尖閣諸島でしょう。昨年度上半期の空自の中国軍機に対するスクランブル発進は231回と、2001年の統計開始以降最多で、前年同期比で24回も増加しています」
磯部「九州から与那国島までの約1000kmに及ぶ南西諸島方面に防衛力の空白があり、そこを中国が突いてきているのは明らかです。現在、自衛隊の基地は沖縄本島に集中していて、尖閣付近は手薄です。今年から漸く与那国島に駐屯地ができ、宮古島や石垣島にも駐屯地を作る計画が進んでいますが、それでもまだまだ防衛基盤が少ないと感じます」
永岩「南西諸島防衛を全うする為、宮古島や石垣島の民間空港等も、有事となれば活用できるようにしておく施策も必要となります。例えば、宮古列島の下地島には3000m級の立派な滑走路がある。ところが、沖縄県議会の決議で軍用には使わせないことになってしまっています。警戒監視レーダーも同様に、更なる配備が必要です」
伊藤「尖閣諸島について、『あんな小さな無人島はくれてやればいい』という意見を耳にすることがありますが、資金をかけてでも石油等の海底資源を確保するという強い意志も含め、中国人の感覚は、日本人のそれとは全く違う意味を持つことを忘れてはなりません」
永岩「2003年頃、私は西の空の守りの要である西部航空方面司令官を拝命していましたが、その時分、日中の中間線辺りに、中国が石油採掘用のプラントを造り始めました。当時、『これは大変な現状変更だ』とメディアに強くアピールしたのですが、メディアは『今時、そんなことに日本国民は関心がありませんよ』と記事にもなりませんでした。中国は本当に強かな国だと思うのですが、この数年の日中関係悪化に乗じて、何と、当時は4基程度だったプラントが一気に16基にも増えている。これらのプラントは、単に石油採掘の為ではないと思われます。レーダーを配備すれば、立派な軍事施設になり得てしまう。中国は、有事に備えて後方支援基地の整備を着々と進めています。尖閣諸島から約300kmのところにある南麂諸島には、何と10個ものへリポートが電源施設等の付帯設備も含めて急速造成されています」
磯部「沖縄本島から尖閣諸島は約400kmあります。この100kmの差は大きいですね」

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伊藤「今、沖縄県のアメリカ軍普天間飛行場の辺野古への移設を巡る国と県の代執行訴訟が続いており、日本国内における大きな係争になっていますが、アメリカ海兵隊が沖縄に存在することで中国に与えている抑止力について、全く議論がなされていない気がします。仮にアメリカ軍が撤退したり、極端な兵力削減を行った場合、間違いなく中国は即座に尖閣に手を伸ばしてくるでしょう」
磯部「肝心のアメリカは、オバマ 政権になって以降、対中戦略が必ずしも確固たるものではなかった気がします。しかし、1月末には西沙諸島をイージス艦が航行する“航行の自由作戦”を敢行する等、一時よりは厳しい対応が増えてきました」
伊藤「昨年5月に日系人(横須賀生まれで父親がアメリカ人・母親が日本人)として初めて、在日アメリカ軍も含めたアジア太平洋地域全てを統括する太平洋軍司令官に、ハリー・ハリス海軍大将が就任した意味は大きいと思います」
磯部「ただ、アメリカの来年の国防予算要求を見ると、戦略的チャレンジの筆頭がロシアとなっています。中国・北朝鮮はその次に来ており、対東アジア政策の優先順位が低くなっている。日米調整を深める必要があります。それと、これは昨年退官したからこそ言えることですが、自衛隊の体制整備を見ていると、『日本人は本当に真面目だな』とつくづく感じます。ミサイル防衛・サイバー戦・南西諸島防衛等、現出してくる全ての課題に対してフルメニューで揃えてきたのが日本の自衛隊です。しかし、フルメニューにした為、1品1品の料理のボリュームが少ない。次々と新しい課題が生まれる中、人員も予算も潤沢とは言い難く、あらゆる課題に薄く広く整備するので精一杯なのが現状なのです。今後は弾薬備蓄や継戦能力をつけて、抑止を高めることが必要です」
伊藤「特に、海上自衛隊は新たな任務が目に見えて増えてきました。人員が全く増えないのに任務だけが増大すれば、当然、現場は疲弊し始めていると正直言わざるを得ません。しかし、地方公務員が増員される一方で、国家公務員は総人件費改革の範疇にカウントされ、自衛官や海上保安官の定員は全く増えないのです。国民からの強い要請があるなら、これも変わるのかもしれませんが」
永岩「パイロットひとつとっても、戦闘機同様、減耗ということを考える必要があります。色々難しい面もありますが、民間航空会社の保有する能力の有効活用も含め、オールジャパンで如何に日本を守るかという議論がそろそろ必要な時期に来ています」

磯部「国民のサポートが無いと、自衛隊は役に立つことはできません。例えば、書店等に行くと“日中若し戦わば”といった類の本が溢れています。闘牛場で牛と牛を戦わせて“勝った、負けた”と騒いでいるようなもので、防衛に対してどこか他人事の雰囲気を感じます」
伊藤「嘗て、チャーチルは『安全保障は軍人如きがするものではない』と刺激的なことを言いました。安全保障の本質は、国民1人ひとりが真剣に考えて向かい合うべき高次元な知的作業なのだということです」
磯部「私は自衛隊に35年間勤め終えた今だからこそ、『自衛隊はハイエンド(最高級)な組織だった』と言えます。アメリカ軍と共に訓練に明け暮れた冷戦時代は、兄弟で言えば腕っ節の強い長男と末っ子くらいの差があると思っていました。ところが冷戦後、他の様々な国の軍隊を見る機会が増えて感じたのは、ヨーロッパの軍にも負けず劣らずの特筆すべき作戦遂行能力を自衛隊が持っていることでした」
永岩「最後に、“覚悟”ということで言えば、国民の負託に応えるということで、自衛官の諸官はとっくの昔に腹を括っていますが、今、問われているのは、日本国民自身の国を守る“覚悟”ではないかと思います。『自衛隊は、国を守るお手伝いができる程度の組織なのだ』と謙虚に認識する必要があります。ジャパンワンチームの“覚悟”が必要なのです。今ほど、憲法問題も含め、“変わる勇気・変える決意”が問われている時代はありません」


キャプチャ  2016年4月号掲載

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