【新聞ビジネス大崩壊】(03) もはやブラック職種…今時の新聞記者の取材力低下が止まらない!

ドラマや映画で見る正義感溢れる新聞記者の姿は、もう過去のものかもしれない。コミュニケーション能力の低下やコピペ記者の増加で、報道の現場は大混乱している。現在の新聞記者が抱える問題をレポートする。 (取材・文/ノンフィクションライター 窪田順生)

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2012年7月21日、読売新聞西部本社がある“スクープ”を放った。福岡県警の警部補が、指定広域暴力団『工藤會』の関係者に捜査情報を漏らし、その見返りに現金を受け取った疑いがあるというものだ。警察の不正を暴く社会的意義の高い調査報道だが、これにはちょっとしたケチが付いてしまった。実は、この取材を行った記者(当時33)が、警察内部から入手した極秘情報を含む“取材メモ”を、同僚や上司にメール一斉送信をしようとしたところ、間違って『福岡司法記者クラブ』に加盟する13社の記者に“誤送信”をしてしまったのだ。メモを読めば、このスクープのネタ元(情報源)が誰なのかは、ある程度特定ができてしまう。県警関係者に伝われば、“内部告発者”は直ぐに炙り出され、針の筵だ。最悪、捜査情報を外部に漏洩させたことで処分を受けることもある。“取材源の秘匿”という調査報道の根幹を脅かす“失態”と言えよう。これは偶々、“メール誤送信”というわかり易い形で露呈をしてしまったが、警察や官庁間からすれば珍しい話ではないようだ。嘗て、某紙の“特ダネ”に協力をした経験を持つ経済産業省の中堅官僚が語る。「こちらは信頼して資料や情報を出した。『どこから漏れるかわからないので、入手先は最小限で止めてほしい』とお願いしたのですが、結局、ダダ漏れでした。同じ社の同僚記者だけではなく、他紙の記者も私の関与を知っていた。皆、口が軽いというか、情報源を大切に扱ってくれない」。新聞記者のキャリアパスにおいて、“特ダネ”が何よりも欠かせないのは言うまでもないだろう。その生命線とも言うべき“ネタ元”を何故、このように雑に扱うのか。理由の1つには、全国紙記者特有の“赴任サイクル”がある。某全国紙のデスク(40代後半)が明かす。「3年サイクルで配属先が変わっていくので、自分で一から情報源を作っていたら効率が悪い。なので基本、ネタ元も前任者から引き継いで次へと回していく。だから、“自分のネタ元”という意識がどうしても低くなる。特に、最近の記者は情報源と小まめに会って情報交換したりもしないので、“前任者から紹介された赴任中に世話になる人”くらいの感覚になってしまう」。

ネタ元の軽視――。嘗て、ある県庁内の不正を厳しく追及していた県議会議員も、「全国紙にはそのような空気がある」と指摘している。「協力していた全国紙記者からいきなり、『本社へ配属になったので、今後の情報提供は後任の記者へお願いします』というメールがあって、それっきり。仕方がないので後任者に連絡したのですが、引き継ぎが全くなされておらず、話が通じない。私が何者で、どういう経緯で協力しているのかを一から説明しました(苦笑)。バカにしていると思ったので、それからは地方紙の記者に協力するようにしましたね」。このように聞くと、「最近の若者は…」という憤りと共に、「新聞記者というのは何と不誠実な人間なのか」という印象を受けるかもしれないが、勿論、彼らにも言い分がある。「こちらだって、やれることならば後任者と1人ひとりの情報源を引き合わせたいが、他の引き継ぎ業務もあるし、夜討ち・朝駆けもある。兎に角、時間が足りないのだ」――。そんな悲鳴が聞こえてきそうなほど、今の新聞記者の労働環境は“ブラック”になっている。それを象徴するのが、『日本新聞協会』の調査だ。昨年の記者数は1万9587人。10年前(2005年)は2万315人なので、700人程度が減っている。ただ、実は2005年調査では71社が回答しており、昨年は93社なのだ。これを1社当たりの平均記者数として出せば、昨年は210人、2005年は286人となる。1社当たり平均70人の記者が減っているのだ。これで現場が疲弊をしない訳がない。「今はインターネットにも配信されるので、嘗てのように新聞用記事だけ書いていればいい訳ではなく、やらなくてはいけない仕事は格段に増えている。その為、若い記者たちには兎に角、効率化を目指す」(前出の全国紙デスク)。ただ、“報道”というのは調査や取材を行い、それに基づいて原稿を執筆するという極めて属人的なノウハウに基づく仕事である。それを他業種の感覚で“効率化”を追求してしまうと、必ず“歪み”が生じる。その代表が、今から2~3年前に続発した“コピペ記事”問題だ。2012年6月、『時事通信社』がライバルの『共同通信社』のニュースをそのまま盗用した。共同のワシントン支局特派員が執筆した「アメリカ政府がヨーロッパの金融機関に対して過去最大の罰金を課す」という記事をコピペし、そのまま“共同電”のクレジット入りで配信したのだ。実は、時事には前年1月にもスキーW杯で共同の記事を盗用していた“前科”があったということで、社長が辞任する事態に追い込まれたのだ。一般人の感覚では「そんな杜撰なことをする記者がいるのか」と呆れるかもしれないが、実は、このようなコピペ体質は、現場の“効率化”を追求した徒花のようなものなのだ。「忙しい中で記者が一番避けたいのは、デスクから“書き直し”を命じられること。そこでどうするのかというと、自社の過去記事や他社記事をベースにして“微調整”をするのです。自社でも他社でも、一度世に出た記事というのは、どこかのデスクがOKをしたものなので、“書き直し”のリスクが低い。効率良く記者をするには、コピペは避けられません」(同)。

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斯くして新聞記者たちは、データベースから似たような“トーン”の記事を見つけたり、同じニュースを報じた他社記事を“ソフトにパクる”というテクニックを習得していくという訳だ。事実、時事の不祥事の少し前にも、朝日新聞大阪本社生活文化グループの男性記者(当時47)が共同通信の記事を流用したとして、停職3週間の処分を受けた。朝日の社内調査では、「共同通信の記事を参考にした為、表現が引きずられた」と記者が釈明したそうだが、これこそが“参考”という名の下で記事のコピペが常態化している証左であろう。新聞記者たちの疲弊する現場が生み出した“歪み”は他にもある。それは、“心の病”だ。記者の数が減った結果、1人当たりの負担が重くなる。その中で、「“スクープ”という結果を出さなくてはいけない」というプレッシャーに曝された人々が、メンタルヘルスの問題を抱える恐れが高いというのは、容易に想像できるだろう。30代の全国紙記者が言う。「基本的に真面目な人間が多いので、ちょっとしたミスや人間関係で心がポキンと折れてしまう。毎年、何人かは新卒でも心の病で辞めていきます」。辞めていくだけならば未だマシで、中には“破滅”してしまう記者も少なくない。2012年2月18日、警視庁渋谷警察署が覚醒剤取締法違反(使用)の疑いで逮捕したのは、朝日新聞東京本社文化くらし報道部の記者(当時33)だった。2001年4月に『朝日新聞社』に入社。高知支局・大津総局・西部本社報道センター等を経て、2010年6月から東京本社文化くらし報道部へ異動となり、美術と囲碁を担当していた。人柄は物静かで几帳面。何故、薬物に手を出したのかは本人しかわかり得ないことだが、覚醒剤事犯の多くが“心”の問題を抱えていることが多いのは、過去のケースからも明らかだ。また、これは新聞記者ではないが、ハードワークで精神的に追い詰められたことで、卑劣な犯罪に走ってしまう新人記者もいた。2005年4~5月にかけて、NHK大津放送局の記者(当時24)が放火を繰り返したのだ。入局したばかりのこの記者は、新人記者の登竜門である“サツまわり(警察担当)”をしていたが、固有名詞を間違えたり、虚偽の取材結果を報告する等のミスを連発。上司や先輩記者から厳しく叱責され、ストレスを感じ、「気が紛れるかも」とライターで廃材等への放火を始めたという。先程も述べたように、この事件があった2005年当時から現在、記者数は大幅に削減されている。それはつまり、このNHK記者のように、ストレスを抱えながら“心”を蝕まれている記者も加速度的に増えている可能性があるということだ。これだけ社会が大きく変化している中で、新聞記者の労働環境は旧態依然としている。昼は記者クラブに詰めて発表原稿で、夜討ち・朝駆けでスクープ競争――。このワーキングサイクルは、戦後から殆ど変わらない。“歪み”が出て当然だ。新聞記者の働き方を根本的に見直す時期にきているのかもしれない。


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