【ヘンな食べ物】(09) サハラ砂漠の激甘スイーツ

中東やアフリカ北部の市場へ行くと、よくデーツ(ナツメヤシの実)の砂糖漬けが山のように売られている。実1粒は干し柿を二回りほど小さくした程度で、中には大きな種がある。味は…凄く甘い。スイーツをあまり好まない私には正直、砂糖(若しくはシロップ)の甘さしか感じられない。「よくこんなものを食うなぁ」と聊か呆れていたものだ。その認識が変わったのは、アルジェリアの西サハラ難民キャンプで行われた『サハラマラソン』に出場した時。このレースは、日本で割と有名なモロッコのサハラマラソンとは別物で、私は日本人どころかアジア人としても初出場だった。私はそれまで、最高でも15km程度しか走ったことがないのに、「面白そうだ」という理由だけで、サハラ砂漠を42.195km走るマラソン大会に申し込んでしまったのだ。マラソンのことは何も知らないので、レース当日、他の選手が栄養ドリンクやゼリーを携帯しているのを見て、少なからず動揺した。「そんなもん、必要だったのか!」。しかし、今更遅い。悩む暇も無く、スタートの合図が鳴った。ほぼ2km毎に給水所がある。直射日光と乾燥が酷いので、ここでしっかり水分を取らないと瞬時に熱中症になる。そして、この給水所にはもう1つの補給物資があった。そう、デーツの砂糖漬けだ。10kmも行かないうちにへろへろになった私は、給水所で水をがぶ飲みした後、デーツを食って驚嘆した。物凄く元気が出るのだ。体力が回復するだけではない。その凝縮された甘みと旨味が脳を直撃し、それが末梢神経にまでぶわーっと広がる。目が覚めるようだ。一度、他の選手にスポーツゼリーを分けてもらって食べたが、体力的には効いたのかもしれないものの、あの“目が覚めるような刺激”はまるで無かった。中東の過酷な砂漠地帯。そこでは、デーツの砂糖漬けが必需品だということを、身を以て理解したのである。


高野秀行(たかの・ひでゆき) ノンフィクション作家。1966年、東京都生まれ。早稲田大学第1文学部仏文科卒。『幻獣ムベンベを追え』(集英社文庫)・『アジア未知動物紀行』(講談社文庫)・『世界のシワに夢を見ろ!』(小学館文庫)等著書多数。


キャプチャ  2016年10月20日号掲載
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