【男の子育て日記】(23) ○月×日

さぁ、また愚痴るぞ。おかげ様で、妻は『松竹芸能』所属タレントとして、テレビによく呼ばれる。木曜日朝の『白熱ライブ ビビット』(TBSテレビ系)と火曜日夕方の『キャスト』(朝日放送)がレギュラー。月に2回は『モーニングCROSS』(TOKYO MX)。他にも、『ネプリーグ』(フジテレビ系)で高学歴チームの一員として出させてもらっている。朝の生放送がある日は、前夜から東京入り。夕方までに収録が終わる仕事は日帰りというスケジュール。土日は保育園が休みなので、妻のテレビ仕事が入る日は、僕が1日中一文の世話をすることになる。他のことがしたくてもナーンもできない。もう慣れっこの筈なのに、自分でも訳がわからないぐらい疲れてしまう日がある。人間だもの。オヤジだもの。「収録が終わったら脇目も振らずに帰ってこい」とは言わない。付き合いもあるだろうし。だけど、妻が帰宅しても、こちらの人間ができていないから、ブスッとしてしまう時がある。一文を預けたらとっとと1人で外に出たいのに、「怒っているの?」と訊かれると更に炎上してしまう。あーもー、育児でクタクタなのは一目でわかるだろうから、そんな時まで笑顔を求めないでくれー。気持ちはわかるけど、できないものはできないのだ。「どんなに疲れていても帰ってきたら笑顔で迎えろ」は、貴女の大嫌いな男根主義者とどう違うのか(この連載エッセイ2度目のフレーズ)。

この日に限った話ではない。こちらが育児の愚痴・不満・負担が多いことを零すと、「だったらテレビ局に連れていく」とよく口にするけど、本気で言っているのだろうか。妊娠前にスタジオでしつこい風邪を感染されたことをもう忘れたのだろうか。朝日放送にはお祝いを戴いたので、挨拶に伺ったことがある。確かに、新社屋の楽屋は清潔だし、広々としていた。とはいえ、2時間以上の生放送中、誰があの子の面倒を見るのか。メイクの人? AD? 保育士の免許を持っているの? 赤子を落とす不安は無い? せめて、一文が自分1人でトイレに行けるようになるまでは無理だろう。いっそ、東京に引っ越す話もある。そうなれば、妻の無駄な移動時間・グリーン席の自腹も無くなる。長年勤めていた立命館大学のロースクールの師の職を終えたので、妻にはこちらに留まる理由は無い。勿論、僕にも無い。だけど、東京に戻ったら今度こそ保育園には入れないだろうなぁ。おうよ、イライラした顔や態度を見せて済まないと思うよ。だけど、1日1時間でいいから、1人の時間をちょうだい。で、後日のこと。神戸まで井上よう子展を見に行った為、家を半日空けた。帰宅したら、妻はわかり易いほど疲労困憊していた。家も荒れ放題。我が家の天使ちゃんだけが無邪気に笑っている。「たけちゃんが毎日大変なこと、やっとわかった…」。息絶えた妻に代わり、一文を抱っこする。おぉー久し振りに会うと新鮮。これまで随分と妻には調教されてきたけど、少しはリベンジできたみたい。


樋口毅宏(ひぐち・たけひろ) 作家。1971年、東京都生まれ。帝京大学文学部卒業後、『コアマガジン』に入社。『ニャン2倶楽部Z』『BUBKA』編集部を経て、『白夜書房』に移籍。『コリアムービー』『みうらじゅんマガジン』の編集長を務める。2009年に作家に転身。著書に『日本のセックス』(双葉文庫)・『ルック・バック・イン・アンガー』(祥伝社文庫)・『さよなら小沢健二』(扶桑社)等。


キャプチャ  2016年10月20日号掲載
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