国鉄分割民営化から30年、社員も社長もどんどん自殺――政府のカネすら貪る“守銭奴”JR東日本・東海ブラックビジネスの正体

1987年、『日本国有鉄道』は6つの旅客会社と1つの貨物会社に分割民営化され、JRとなった。それから30年、資本主義のモンスターのように急成長した『JR東海』と『JR東日本』。だがその実態は、社員どころか社長さえも自殺する超絶ブラック企業だった――。 (取材・文/フリージャーナリスト 小石川シンイチ)

20161021 01
「(リニア新幹線で)人の流れが根本的に変わる。世界中から沢山の観光客がやって来ると確信している」――。そう演説するのは安倍晋三首相だ。参院選対策(7月10日投開票)に打ち出したのは、自身の経済政策であるアベノミクスを「もっと力強く前に進めていくこと」。その象徴として掲げたのが『リニア中央新幹線』である。JR東海のリニア計画では、総長286kmを40分で結ぶ東京(品川)-名古屋間の路線が2027年に開業予定。既に同区間では、2014年10月に国の認可を得て建設工事が始まっており、総工事費は同区間で約5兆5000億円を見込んでいる。更に同計画では、2045年までに大阪までの延伸区間を完成させる予定で、東京-大阪までの全区間となると総工事費は約9兆円に上る。JR東海は、東京-名古屋間の開業後、財務力や経済力を回復させる為に、大阪までの延伸工事の着工まで、約8年間の猶予期間を置く計画となっていた。ところが安倍政権は、この2045年完成予定のリニア中央新幹線の大阪延伸開業の前例しを表明し、JR東海への支援策の具体化に着手した。国の資金を民間銀行より大幅に低い金利で貸す財政投融資を活用し、3兆円規模を年利0.3~0.4%程度で貸すことで、JR東海の負担を軽減する案も飛び出している。「2030年度の北海道新幹線の札幌延伸や北陸新幹線の整備と共に、公共事業によって景気を拡大させようという狙いです。日本海側を経由し、関西・九州を結ぶ“山陰新幹線”構想の動きも活発化している。安倍政権は、整備新幹線をきっかけに、外国人観光客を更に日本中に招こうというのです。しかし、都市部に人が集中すると、単なる新幹線の通過点でしかない地方は疲弊しかねません」(交通ジャーナリスト)。

新幹線は、政治家にとってはパワーの源だ。支持団体の建設業者は新幹線工事に、有権者は新幹線による外国人観光客の来県に金儲けの夢を見るのだ。勿論、夢から覚めれば借金の山が残るだけだ。しかし、JR東海は元は国鉄だったとはいえ、今は民間企業。政府が全面的にバックアップするのは不自然ではないか。「JR東海の葛西敬之名誉会長は、安倍晋三の熱心な後援者の1人で、安倍政権に強い影響力を持っている財界人。籾井勝人のNHK会長就任は、葛西の強い推薦で実現したとされるほど。原発支持者で、原発とのセットで新幹線輸出を画策している」(同)。葛西名誉会長は1940年生まれ。東京大学法学部卒業後、国鉄に入社し、膨大な赤字を抱えた国鉄の分割民営化を実現させた“国鉄改革3人組”だ。「分割民営化を推進した臨調委員の瀬島龍三氏は、大戦中は大本営作戦参謀、戦後は伊藤忠商事会長等を歴任し、中曽根康弘首相(当時)とも関係が深く、“昭和の参謀”と評されていた人物。この瀬島氏と葛西名誉会長の関係は親密で、国鉄の分割民営化は、瀬島氏の威光をバックに推し進められたのです。葛西氏は、国鉄の組合を潰した論功行賞として、一番利益が転がり込む“ドル箱”東海道新幹線のあるJR東海の取締役を引き受け、金儲け最優先の企業に仕立て上げたのです」(政治ジャーナリスト)。以降、JR東海は自民党政治と限りなく近い経営を行ってきた。「しかし、葛西氏は最近でも『インド辺りで戦争が起きてくれれば、我が国としては一番有り難い』という発言を過去にしたことが暴露されたように、かなりのタカ派であることは間違いありません。葛西氏は、東大法学部で机を並べた親友の与謝野馨氏(※中曽根康弘氏の秘書だったこともある)を橋渡し役に、安倍氏に接近。2000年に安倍氏を支える“四季の会”を立ち上げ、幹事長を務めるほどです」(同)。この四季の会のメンバーには、『東京電力』の勝俣恒久氏・『新日本製鐵』(現在の『新日鐵住金』)の三村明夫氏、そして『三菱重工業』の社長に就いたばかりの西岡喬氏等、財界本流の面々が名を連ねている。政権を投げ出した後も安倍氏を励まし続け、“再登板”を働きかけてきたほどで、安倍政権の中心とも言っていい人物なのだ。こうした政府にベッタリの関係を見ても、安倍政権がJR東海を徹底的にサポートするのは当然と言える。

20161021 02
そんな“金儲け至上主義”のJR東海の労働環境はどうか。当然ながらブラックだ。2005年に死亡者107人を出したJR福知山線脱線事故の『JR西日本』でも、“日勤教育”とされるパワーハラスメントが行われたことがあったが、JR東海はそれ以上にブラックである。「JR東海では、不条理で過酷な労務管理から自殺者が続出しています。特に、2006年10月に静岡駅で、2007年7月に小田原駅で、JR東海社員の新幹線飛び込み自殺が相次いだ時は、各方面に波紋を呼びました。更に、2013年1月には滋賀県内の山林で、JR東海に入社して2年目の21歳の男性が自殺する等、深刻なブラックぶりが窺えます」(前出の労働ジャーナリスト)。自殺した21歳の男性は、定時の1時間前に出勤するよう“奨励”されていたというが、その内容は明らかにパワハラである。「失踪する数日前、男性は定時の20分前に出勤しましたが、上司は1時間前に出勤しなかったことを理由に“出勤遅延未遂”と指摘。理由を明らかにするように、プライベートを含めて、前日からの行動記録を提出するよう求めました。提出期限は男性の休日でしたが、職場に来て提出するよう約束させました。しかし、男性は期限に現れず、寮から姿を消し、行方がわからなくなりました。その数日後に遺体となって発見されたのです」(同)。また、JR東海と言えば、“奇跡の職場”と言われる新幹線清掃が注目されたことがある。「東海道新幹線は、1日に336本運行しています。その内、最も需要がある東京-新大阪間は250本運行しています。この掃除を東京駅でしているのが、JR東日本テクノハートTESSEI(右写真)です。新幹線を7分で清掃する技は“7ミニッツミラクル”と言われ、経済産業省の2012年度“おもてなし経営企業選”にも選ばれたほどです。しかし、このスタッフの平均年収は200万~250万円程度。1日の実労働は4時間程度で、会社側に都合のいいシフトに左右される、事実上のスタッフの使い捨てを行っているのです」(同)。

「新宿駅が生まれ変わります」と大々的に宣伝され、この春、新宿に登場したのが、『JR東日本』の商業施設『NEWoMan』だ。同施設は、JR東日本が建設した複合施設『JR新宿ミライナタワー』(JR新宿駅新南口)の商業施設部分(1~4階・M2階・7階)で、店舗数は102店、初年度売上目標は200億円となっている。「同施設を経営するのは、JR東日本の子会社であるルミネ。同社は、新宿にいてルミネ新宿店(ルミネ1・ルミネ2)とルミネエスト店を展開し、売上は900億円ほどあります。これにNEWoManが加わることで、1000億円を超える規模になることは間違いありません。私鉄各社の乗降客数を合わせると、新宿は1日の乗降客数が約360万人という世界でもナンバーワンの乗降客数を持つ駅。新宿駅東口で5000億、西口で4000億、これに南口の1000億が加わり、結果的に年間商品販売額1兆円という日本最大の小売販売額を持つ商圏規模となっています。つまり、JR東日本だけで、その利益の1割を独占することになります」(経営ジャーナリスト)。東京・神奈川・埼玉等の14店で展開するルミネは、経営方針として、年間に15~20%近いテナントを入れ替えて、常に旬なイメージを打ち出していこうとしている。そして、テナントに稼がせて、売上高に連動した賃料を取っているのだ。その為に、飲食店『ベルク』や沖縄料理店『ナビィとかまど』の立ち退き問題等、トラブルも多い。JR東日本という公益性の高い企業が親会社であり、駅に隣接する謂わば公共スペースでビジネスを展開するルミネは、JR東日本のボロ儲けの別働隊と言える。「120万人を超えるルミネカードの会員数は、年齢層が若い。嘗ての丸井のように、若者をカード潰けにしてボロ儲けです。丸井と違うのは、丸井は駅前だったのに対して、ルミネは駅そのものだという点です」(同)。昨年3月には、「大丈夫だよ~吉野さんは需要が違うんだから」「変わりたい、変わらなきゃ、ルミネも変わる」と嘗ての丸井のようなバブルCMが、「セクハラコードに引っかかる」と猛クレームを浴びたこともある。また、お洒落なルミネらしからぬ社長の自殺もあった。「元々、ルミネは成果主義で社員に厳しい企業。そのプレッシャーに耐え切れなかったのか、2011年5月には、ルミネの谷哲二郎社長が葛飾区の河川敷で首を吊る事件が起きました。所持品の中に遺書のようなものがあり、自殺とされました。同年9月にはJR北海道の社長だった中島尚俊氏も水死自殺する等、JRは呪われたように自殺が多いのです」(同)。国鉄総裁が怪死した戦後の国鉄怪事件の1つである『下山事件』以来の伝統か、社員どころか社長さえも自殺するのだ。

20161021 03
ルミネのボロ儲けもあって、JR東日本の売上高は連結2兆6718億円、営業利益は連結3975億円(2013年3月期)と、売上高でだけで見ると、JRグループ各社の中でも断トツの1位だ。しかし、この好業績を上回るのがJR東海である。売上高は連結1兆6722億円ながらも、営業利益は連結5065億円と、営業利益が高いのだ(昨年3月期)。この数字を、ある経営ジャーナリストが分析する。「JR東海には東海道新幹線があり、運輸事業の収益性が非常に高い。近隣人口や営業キロ数は小さくとも、営業利益が高いのはその為です。特に、この10年は利益率が大幅に上昇しています。JRグループ各社は鉄道事業だけでなく、運輸事業・流通事業・不動産事業・その他事業も行っています。特に不動産事業は、土地を買って、鉄道を敷いて、駅や駅ビルを建設して、駅ビルを賃貸する。つまり、JRグループ各社の保有する不動産は必然的に駅前の土地になるので、必ず立地が良くなります。その為、不動産事業の利益率は高くなりがち。JR東日本は、びゅうフォレスト喜連川・パストラルびゅう桂台・びゅうヴェルジェ安中榛名といった宅地事業を展開するほどです。バブル崩壊後、リゾート投資に失敗したJR北海道(2014年度は約400億円の営業赤字)を切り捨てて、大成功した訳です」。1987年4月、大赤字の国鉄は6つの旅客会社と1つの貨物会社に分割民営化された。それから30年、資本主義のモンスターのように急成長したのが、新幹線ビジネスのJR東海とルミネビジネスのJR東日本である。進化の形は違うが、“人々を食い物にし続ける”という意味では変わっていないのだ――。


キャプチャ  第14号掲載

スポンサーサイト

テーマ : ブラック企業
ジャンル : 就職・お仕事

轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

广告
搜索
RSS链接
链接
QR码
QR