【電通の正体】(10) 変革期迎える『電通』、市場開拓で新たな競合も

国内の広告業界では圧倒的なシェアを誇る『電通』だが、日本の広告市場の伸びは低い。海外での企業買収や事業領域の拡大を進める電通は、大きな変革期を迎えている。 (『JPモルガン証券』メディアセクターアナリスト 田中優美)

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日本最大の広告代理店で、企業の広告宣伝活動に関連するサービスを多岐に亘って行う電通は、世界の広告業界で5位の規模を有する。2015年の暦年ベースの連結売上総利益(広告枠の仕入れ費用等を除いた売上高から一部費用を除いた利益)は、7620億円となった。現在、電通の業績を牽引しているのは、売上総利益の5割強を占める海外事業だ。2013年3月、業界内で世界8位の売り上げ規模を有していたイギリスの広告大手『イージスグループ』を約4000億円で買収。それ以前は業績の大半を国内事業が占めていたが、イージスの買収をきっかけに海外展開を加速させ、世界146ヵ国で事業を展開するグローバルエージェンシー(代理店)の一角となった。イージスは電通の海外事業と統合し、社名を『電通イージスネットワーク』に変更した。世界の広告市場の重要指標とされる、昨年12月期連結決算の電通イージスのオーガニック成長率(企業のM&Aや為替変動の影響を除いた成長率)は9.4%と、世界全体の成長率の4.6%に対し、2倍を超える水準だった。海外の売上総利益の地域別内訳をみると、ヨーロッパ・中東・アフリカ(EMEA)が4割弱、アメリカが3割強、日本を除くアジア太平洋(APAC)が3割弱で、特にヨーロッパ及びAPACの取扱高シェアは世界2位と、高いシェアを占める。背景には、ヨーロッパはイージスが元々イギリスを拠点とすることや、APACでは電通・イージス共に長年事業展開していたことがあるとみられる。電通がイージスの買収に踏み切った背景には、市場が成熟した国内の事業展開だけでは成長余地が限られていることがある。日本の広告業界では、電通及び『博報堂DYホールディングス』が4割強のシェアを有し、テレビ広告のみでは両社で約6割を占め、絶大な影響力を誇る。

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しかし、昨年の日本の広告市場の成長率は、2010年以来の高水準だったにも関わらず2.5%となり、アメリカや西欧の4%を超える水準と比べれば見劣りする。国内市場の成長率の低さを考慮すれば、電通が国外に新たな成長機会を求めたことは自然な判断と言えるだろう。イージスの買収金額は、当時の時価総額の1.5倍弱の金額であったことから、当初は割高に見られ、市場では厳しい評価を受けた。だが、2014年3月期の下期辺りから、イージスのオーガニック成長率が他社を大きく上回り始めたことが好感され、株価上昇に繋がっている。世界の広告業界における電通の売上総利益は、世界首位であるイギリスの広告最大手『WPP』の3分の1、世界3位であるフランスの広告大手『ピュブリシス』の半分程度と、世界トップ3との差は大きい。また、電通の海外事業の業績規模が拡大し、成長率が上がり辛くなることから、イージスの経営陣が目指す“市場全体の成長に対し2倍の成長率”の維持は、ハードルが高まっていくとみられる。だが、積極的にM&A等を行い、高成長が期待される国・地域・分野で存在感を高めていることから、当面は競合を上回る成長率を見込めると予想する。近年、急成長している市場がインターネット広告だ。昨年の日本のインターネット広告の市場規模は、前年比10.2%増の1兆1600億円で、テレビ広告の1兆9300億円に次ぐ規模に成長している。電通はインターネット広告の売り上げを開示していないが、国内は単体のインターネット広告の売上高857億円(前年比13%増)に、インターネット広告専業の代理店『サイバーコミュニケーションズ(CCI)』等の子会社の収益が加わり、電通グループ全体での国内シェアは10%台後半とみられる。一方、博報堂のインターネット広告の売上高は1256億円(前年比16%増・暦年ベース)で、売り上げ規模では電通を下回るとみられるものの、今年1~3月期では前年比34%増となり、伸びが加速している。両社のインターネット広告の区分が若干異なる点には留意が必要だが、博報堂が子会社の『デジタルアドバタイジングコンソーシアム(DAC)』を中心に成長を加速させているのに対し、電通の伸びはやや鈍い。

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国内のテレビ広告では4割近いシェアを握る電通だが、インターネット広告の市場においては、プレーヤーの乱立や、インターネット広告を専業とした代理店の台頭により、テレビ広告ほどの圧倒的なポジションは築けていないのが現状だ。電通の今後の戦略の1つとして、単なるインターネット広告枠の仕入れ・販売のみならず、インターネット上での広告宣伝活動を支援するデジタルマーケティング関連のサービス充実が挙げられる。この戦略の中核を担うのが、先月に発足させた『電通デジタル』だ。インターネット広告の運用に加え、マーケティング活動に必要なシステムの開発・実装・コンサルティング等の業務を請け負う。従来型の広告代理店業は顧客の広告宣伝費が主な収益源だったが、サービス領域を拡大し、新たな市場を開拓したい考えだ。だが、システムやコンサルティング関連の業務を担う人材やノウハウの不足が課題とみられ、今後、他社との業務提携やM&Aを通じて補うものと予想される。一方、海外ではより積極的な展開がみられる。今年1~3月期の全社の売上総利益にデジタル領域(インターネット広告を含むデジタルマーケティング全般を指す)が占める構成比は32%だが、その内、国内が19%に対し、海外は48%だ。海外では、日本よりインターネット広告の比率が高い国が多い上、イージスは買収前からデジタル領域に強みを持っていた為だ。また、今年初めからこれまでに発表された買収案件19件の内、大半がデジタル領域であることからも示されるように、デジタルマーケティング関連の代理店を矢継ぎ早に買収している。広告市場が高成長する中南米・アジア・東欧等の新興国で積極的に買収している点が特徴的だ。海外では、『デロイトデジタル』や『アクセンチュアインタラクティブ』等のコンサルティンググループ傘下代理店が、デジタル領域で台頭しつつある。国内外のデジタルマーケティング領域の事業拡大は、電通にとって広告代理店の枠を超えた新たな事業機会を齎す一方、新たな競合との対峙による競争の激化も生んでいる。これまで、日本のマスメディア広告市場で圧倒的なポジションの恩恵を受けてきた電通は、大きな変革期を迎えている。


キャプチャ  2016年8月23日号掲載

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