【反基地とヘイトと“ナンクル”の知事】(下) ハワイの歴史と重なる沖縄と日本

20161025 06
沖縄県で日本人女性を暴行・殺害した上、遺体を遺棄した疑いでアメリカ軍属が逮捕された事件。勤務時間外の犯行だった為、『日米地位協定』の定める特権の対象とならず、犯人は日本の警察によって逮捕され、日本の裁判所によって裁かれようとしている。だが、公務中のアメリカ軍人・軍属の犯罪について、アメリカ側に第1次裁判権を定めた協定を改定するかしないかの問題は残る。普天間飛行場の辺野古への移転も、反対運動の激化で負傷者でも出れば、収拾できないほどの運動になるだろう。そうこうする内に、経済発展した中国に魅力を感じる県民は増えていく。中国でも反日デモが起きる度に、“琉球を取り返そう”式のプラカードが掲げられる。アメリカ大統領候補のドナルド・トランプが沖縄について不用意な発言をすれば、事態は更に錯綜するだろう。沖縄と日本の関係は、ハワイとアメリカの関係を思わせる。カメハメハ王朝が1893年、アメリカの官民軍が一体となった動きで倒され、その5年後にハワイはアメリカに併合された。沖縄は独立した琉球王国として、中継貿易で繁栄したが、1609年に薩摩藩に武力で制圧され服属。薩摩と清朝の双方に朝貢するようになった。明治維新後の1879年には、日本に併合されている。第2次世界大戦末期、沖縄は日本防衛の最前線に立たされて、4人に1人が殺される惨い運命をも味わった。カメハメハ王朝打倒から100周年の1993年、アメリカ議会は王朝を倒したを謝罪する決議を採択した。とはいえ、ハワイの独立はもう無いだろう。若し独立すれば、アメリカは太平洋の制海権を失う。独立したハワイも、現在の安定と繁栄を維持するのに苦慮することとなるだろう。沖縄の独立も、ハワイの独立と同様の重みを持つ。慎重且つ率直な議論が必要だ。

沖縄が台湾の東まで連なる先島諸島をも伴って独立すると、その意味合いは更に大きくなる。現在、中国の海・空軍は、先島諸島によって太平洋への出口を塞がれている。平時には出られても、有事には海峡を封鎖されてしまう為、西太平洋での覇権を唱えられないでいる。若し沖縄が中国に傾くと、日米中の間のバランスは逆転してしまう。「西太平洋で中国が覇権を確立しようが、仲良くやっていけばそれでいいじゃないか」と思う人もいるだろうが、中国は一筋縄ではいかない国だ。尖閣諸島や南シナ海での領有権紛争だけでなく、次から次へと自分の都合を周辺国に押し付けてくるだろう。アメリカも自国の都合を他国に押し付ける点では同じだが、中国の場合、法律やルールの軽視が目立つ。中国は米欧日等からの直接投資に恣意的に課税し、資産没収をしても恥じなくなるだろう。沖縄も、中国との関係は綺麗事では済まない。沖縄に進出する中国人との間で激しい利権争いが起きるだろうし、中国は沖縄に自国軍の基地を置こうとするだろう。他面、中国国内で権力闘争と経済悪化が絡んで情勢が荒れることとなれば、沖縄には中国の海賊・暴力団・難民が押し寄せる。中国との関係は沖縄自身だけでなく、日本全体、更には西太平洋地域全体と世界にとって重大な意味を持っている。沖縄の社会では、利権と政治的打算の相克が激しい。基地問題が絡んでいるだけに、他県より遥かに複雑・深刻でもある。アメリカ軍基地についても、それで収入を得ている者と被害を受けるだけの者の間では、利害が異なる。基地移転問題等については、県内建設業者、そして政治家の利益が絡む。基地反対・反米運動には、県外から運動家が多数入り込んでいる。幾つかの政党にとっては、沖縄での反米・反基地運動は数少ない“地盤”となっている。問題は、沖縄のこうした現実を正面から議論するより、アメリカ軍基地を巡って“反米”とか“親米”とかシンボル化された言葉・レッテルの貼り合いが横行していることだ。県民の多数意見の実態や、日本全体にとっての沖縄の意味等について、本音の議論をあまり見ない。現状からの漸進的な改善か、それともアメリカ軍基地撤退か、将又“独立”か――。地に足を着けた率直な議論の場を確保してほしい。 (本誌コラムニスト・外交アナリスト 河東哲夫)


キャプチャ  2016年7月12日号掲載
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テーマ : 沖縄米軍基地問題
ジャンル : 政治・経済

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