【教科書に載らない経済と犯罪の危ない話】(20) テロリストの資金源にもなる原油ビジネスと暴力団の蜜月

「石油の一適は血の一適に値する」――。1917年、第1次世界大戦でドイツの侵攻を受けたフランス。当時の首相であるクレマンソーが石油の供給を要請する為、アメリカのウィルソン大統領に宛てた電報の一文である。21世紀に入り、原油価格が40ドル台と低迷している今でも、石油は人類にとって最も重要な資源に変わりはない。現代でも、石油は世界各国の外交・軍事に直接的な影響を与えている。石油産出国の集中する中東地域の情勢は、いつでも世界の関心事なのだ。20世紀は、石油を求めて世界中が争った。ところが、21世紀は争う為の資金を石油で賄う集団が現れた。『IS(イスラミックステート)』だ。アメリカの財務省によると、ISの石油収入は年間で5億ドルにも上る。ISはシリア北部に幾つもの油田を所有し、石油企業から技術者を集め、独自に原油の生産をしている。その原油をトルコ等周辺諸国やアジア地域へ販売して、豊富な活動資金を得ているのだ。これがISの活動と勢力拡大を支える原資となっているが、問題はそれだけでない。より多くの原油を販売する為に法外なディスカウントを行い、原油市場へ悪影響を与えているのだ。ISの生産する原油は、事実的に価格維持を目的としたカルテルである『石油輸出国機構(OPEC)』に干渉される事も無く、自由な価格競争を行える。当然、国際的な原油取引において、価格の決定基準となるマーカー原油の価格より相当安い。原油取引には、毎月一定量を長期間売買するターム契約と、その都度、単発で売買するスポット取引がある。ISの売る原油は、このスポットもので、長期間の安定供給という責任を負う必要もない。

このスポット原油の取引価格を決定する際、中東であればドバイ産原油が指標となる。この指標となる原油をマーカー原油と呼ぶ。スポット原油は、単発であるが故に扱い易く、定則的な引き渡しに必要な決済や、輸送の手配に神経を使わなくて済むのだ。通常の原油取引にある、仕向け地の変更や、第三国への転売を禁止した、仕向け地条項に縛られることもない。つまり、ISの原油取引は、国際的なルールを無視した密輸なのである。このように、国際的ルールを守らなくていい原油取引を犯罪組織が放っておく筈がない。カネさえ払えば誰でも、市場より安く原油が買えるのだ。原油を売って活動資金にするISと、それを転売して莫大な利益を上げようと目論むマフィアやブローカーの利害が一致するのは必然だ。こうして、国際的ルールから逸脱した“ディスカウントオイル”が流通し、正常な価格競争に悪影響を与えている。しかし、筆者が求めたのはスポットものではなく、ターム契約による取引だった。日本の暴力団が原油に目をつけた当初、殆どがバイヤーサイド(買い手)を探すことから始めた。筆者は逆に、セラーサイド(売り手)を探すことを考えた。2004年頃のことで、原油の需要が増し、価格の高騰が確実視され、売り手市場になることが予想できたからだ。事実、買い手は幾らでもいた。特に、中国の企業や軍関係からは買い注文が殺到していた。「このままでは需給が逼迫する」という状況下なら、売り手についたほうが有利なことに間違いは無い。筆者は石油取引に詳しい友人に、マレーシアの『ペトロナス』(国営の石油会社)重役を紹介してもらうことになった。88階建ての『ペトロナスツインタワービル』、正面向かって右が日本のゼネコン『ハザマ』が建設したタワー1。左が『サムスン物産』(韓国)の建設したタワー2。筆者が向かったのは、タワー1の72階だった。 (http://twitter.com/nekokumicho


キャプチャ  2016年10月25日号掲載
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テーマ : 国際問題
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