【小池流の行方】(03) 「グシャッとされた」

20161027 03
先月29日午後に開かれた『東京オリンピック・パラリンピック組織委員会』の理事会では、反発の声が相次いだ。「積み上げたものをいきなりグシャッとされた」。同日午前、都知事の小池百合子(64)が任命した調査チームが、都が担当する3つの競技施設について、建設中止を含めて計画を見直すよう提案した為だ。大会関係者は、「ある程度の計画変更は予想していたが、建設中止まで踏み込むとは想定外だった」と振り返る。同日朝、文部科学省でのオリンピック調整会議。小池と会った組織委会長の森喜朗(79)は、「国際オリンピック委員会(IOC)の理事会で決まったものをひっくり返すことは極めて難しい」と釘を刺した。しかし、都庁に戻った小池は、調査チームから報告を受け、「爆弾を頂戴した。これを起爆剤にして総合的に判断したい」と評価した。「負の遺産を都民に押し付ける訳にはいかない」。小池にとって、オリンピック経費の見直しは知事選の最大公約の1つで、簡単には引き下がれない。

3施設の内、建設費が招致段階の69億円から491億円まで大幅に膨らんだボートとカヌー・スプリント会場の『海の森水上競技場』については、「建設中止を決断するのではないか?」との観測が広がっている。調査チームは、『長沼ボート場』(宮城県登米市)での代替開催も提案した。東日本大震災の被災地での開催は、「“復興オリンピック”の原点に戻る」という大義名分が立ち、地元の宮城県知事・村井嘉浩(56)も「都が計画する競技場よりも遥かに安く整備できる」と歓迎している。“都の権限”を武器に、施設計画の見直しを検討する小池に対し、組織委は事態の推移を見守るしかない状況だ。ただ、都がIOCから計画変更の了承を得るには、国際競技団体との合意が欠かせない。同月30日、組織委事務総長の武藤敏郎(73)らと緊急テレビ会談をしたIOC副会長のジョン・コーツ(66)は、「これまで一緒に上手くやってきたのに、何故このような話が出てくるのか?」と“宮城代替案”に不快感を示した。『国際ボート連盟』会長のジャンクリストフ・ロラン(48)も今月3日、都庁で小池と会談し、「事前に相談も情報提供も無く、落胆を隠せない」と現行計画通りの開催を求めた。大会関係者は「競技団体に『コストが高いから移ってくれ』では、相手にしてもらえないのでは」と指摘するが、小池は今月中にも決断を下す。 《敬称略》


⦿日本経済新聞 2016年10月7日付掲載⦿
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