【ヘンな食べ物】(10) 竹もちは国境へ誘う

タイ北部の田舎、それもミャンマーやラオスの国境に近い場所に行くと、いつも買うおやつがある。市場やバスターミナルで売っている長さ30㎝ほどの細い竹の筒。『カオラム』という名前があるのに、私は勝手に“竹もち”と呼んでいる。竹の中に餅米(赤米)と小豆を詰めて、ココナッツミルクを流し込み、焚き火で2時間ほど炙るという。すると、外側は焼けて中は蒸し焼きになる。焼けた竹の表面の皮を剥がし、柔らかい内皮だけが残されている。丸1日くらいもつので、お弁当代わりのおやつとしてうってつけだ。近代化が著しいタイだが、この竹もちを見ると「あぁ、辺境に来たんだなぁ」という感概に浸れる。これを2~3本買い込み、バス旅のお供にするのが私の習慣だ。この辺のローカルバスは、今でもエアコンなど効いていない。車内には小型の扇風機がうんうん唸り、その微々たる風に煽られ、剥がれかかった高僧ポスター(※タイ人は有名なお坊さんのポスターが大好き)がパタパタはためいている。道もバスのスプリングも悪い為、バスはガタガタと揺れ、隣の座席に置いた竹もちもぽくぽくと跳ねる。跳ねてどこかへ飛んで行きそうになるので、早めに食べることにする。蕾を食べるように外側の皮を剥くと、それこそパッと花が開いたような形になる。現れた花心ならぬ餅米を食べると、ほんのり甘く香ばしい。皮は片っ端から窓の外に放り捨てる。全て土に還るし、人口も少ないから全然問題無い。餅米を堪能し、皮をすっかり捨て、序でに窓から手を出してパンパン叩くと、おやつ時間終了。気分はタイ北部の地元民になっている。自分が日本で生まれ育った人間じゃないような錯覚に囚われる。そんな心持ちの私を乗せ、バスは国境へ向かっていく。


高野秀行(たかの・ひでゆき) ノンフィクション作家。1966年、東京都生まれ。早稲田大学第1文学部仏文科卒。『幻獣ムベンベを追え』(集英社文庫)・『アジア未知動物紀行』(講談社文庫)・『世界のシワに夢を見ろ!』(小学館文庫)等著書多数。


キャプチャ  2016年10月27日号掲載
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