【東京情報】 シンボルとしての日本刀

【東京発】陸上自衛隊が、記念品等に使うエンブレムを作った。そのデザインは日本刀をあしらったものだが、これに『朝日新聞』が噛み付いた。「軍刀は帝国日本軍の略奪や脅迫を思い起こさせる」との市民団体代表のコメントを掲載し、批判的に取り上げていた。だが、その前日の紙面では『日本刀、じっくり、うっとり “刀剣女子”の来館急増』と、日本刀ファンの女性が増えていることを好意的に報じている。これはダブルスタンダードではないのか? イギリス人記者が頷く。「記事を書いたのは違う記者だが、9月6日の夕刊と7日の朝刊だから、ほぼ半日の差。朝日新聞は論調のチェックをしなくなったのかね? これまでの朝日の論調を考えれば、“刀剣女子”を好意的に取り上げるのには違和感しかない」。フランス人記者が唸る。「俺たちヨーロッパの人間は、日本刀と言えば三島由紀夫を思い出す。1970年11月25日、三島は自衛隊にクーデターを呼びかけ、自決した。それから暫くは、新聞や週刊誌が飛ぶように売れたんだ。当時、俺は東京の地下鉄東西線の大手町駅を利用していたが、売店の新聞や週刊誌が全部売り切れていたな」。事件当日、三島は堂々と腰に日本刀“関孫六”を下げて、市ヶ谷駐屯地を訪問した。入隊経験のある三島はフリーパスで通された。総監室で益田総監が「その刀は本物ですか? そんな軍刀を下げていたら、警察に咎められませんか?」と訊くと、三島は「私は日本刀の愛好家ですから、この刀も美術品登録をしています。ご覧になりますか?」と答えた。総監は「見たいです」と言い、三島は刀を抜いた。

その後は、ご存知の通りである。総監は、三島に同行した学生らに縛られ、三島はバルコニーに立ち、「この国の憲法を変えなくてはいけない!」と檄を飛ばした。しかし、殆どの自衛隊員は「何を馬鹿なことを言っているんだ!」「我々は憲法を守る為に存在するんだ!」と野次を浴びせた。そこで三島は、「命より大切なことがあるのを見せてやる!」と言って、総監室に戻り、腹を切った。三島の介錯は森田必勝がやったが失敗。古賀浩靖が首を落とした。総監は終始「やめろ! 命を守れ!」と叫んでいたが、日本刀は一度鞘から抜いたら最後、相手を殺すか自分が死ぬかどちらかである。刀を抜いた時点で運命は決まっていたのだ。イギリス人記者が、銀縁の分厚い眼鏡を外した。「アメリカのグラフ雑誌“LIFE”で組まれた三島特集には、褌一丁で日本刀を振り翳す三島の写真が掲載されている。そこで三島は、日本刀の魅力について熱く語っていましたな。当時は三島の戯曲“サド侯爵夫人”が欧米でも好評で、三島はノーベル文学賞の候補者として紹介されていた。日本刀に関しても悪いイメージは無く、寧ろ武士道精神を重んじる真面目な日本人という印象が強かったな」。『豊饒の海』では切腹が描かれている。三島主演の映画『愛国』には、日本刀を2つに折って切腹するシーンもある。三島は、辞世の句にも日本刀を使った。「益荒男が たばさむ太刀の 鞘鳴りに 幾とせ耐へて 今日の初霜」――太刀を抜くのを耐えて耐えて、そして今日やっと抜くことができるという意味だ。フランス人記者が顎鬚を撫でる。「勿論、自衛隊と日本刀は何の関係も無い。軍隊の武器として日本刀が使われたことも無い。自衛隊は憲法に忠実に従ってきた集団だ。逆に言えば、三島は、戦後の自衛隊と日本の侍文化を結び付けようとしたんだな」。朝日新聞は、「日本刀は武器である。よって戦争礼賛に繋がる」と言いたいのだろう。しかし、私が心配になったのは、寧ろ逆だ。

果たして、今の自衛隊員に死ぬ覚悟はあるのだろうか? 自衛隊のトップである安倍晋三という男でさえ、テレビ番組に出演した際、「国の為に死ねるか?」という質問に対して△の札を出していた。欧米の軍隊が日本軍を恐れたのは、その覚悟の重さである。国の為に命を捨てる軍隊は強い。特攻隊だけではなく、嘗ての日本人は大事なものの為に命を捧げた。武士は、捕虜になる前に切腹した。戦後でこうした精神を示したのは三島だけだ。今の自衛隊に侍の文化があるとは思えない。イギリス人記者が同意する。「日本刀は日本のシンボルなんだな。第2次世界大戦の際、アメリカは日本人の民族性を徹底的に調べた。日本を武力で制圧するだけでは十分ではない。進駐軍が日本をコントロールするには、日本人の精神的な土壌を知る必要がある。文化人類学者のルース・ベネディクトは“菊と刀”で、皇室のシンボル“菊”と武士のシンボル“刀”を並べ、日本人の行動様式は、皇室と武士道に根拠を見出すことができると考えた訳だ」。日本刀は鉄を叩いて作るので、しなやかで弾力に富む。戦国時代の話だが、敵を斬ると刀が曲がり鞘に入らなくなることがある。しかし、数日放っておくと元に戻る。何重にも鉄を重ねて作るので、形状が安定しているのだ。一方、西欧の刀は溶かした鉄を一気に冷やして作るので、硬度は高いが折れ易い。映画『三銃士』には、降伏の印として膝でサーベルを折るというシーンがあるが、これは日本刀ではできない。イギリス人記者が首を傾げる。「うーん、でも映画“愛国”では日本刀を2つに折っている訳だろう?」。フランス人記者がニヤリと笑った。「俺は、こんな話を聞いたことがある。日本軍は日清・日露と勝ち進んでいった。そこで欧米の軍人が、『日本人は何故強いのか?』と訊いた。日本人は『大和魂があるからだ』と答える。『では、その大和魂は何を以て証明するのか?』と訊くと、『刀である』と答えたそうだ」。忠誠心・仁義・慎み深さといった武士の美徳、深い道徳感情のシンボルこそが日本刀だった。よって、近代が生み出した大量殺人兵器と日本刀を並べて論じること自体がナンセンスなのだ。日本刀は日本文化の一部である。 (『S・P・I』特派員 ヤン・デンマン)


キャプチャ  2016年10月27日号掲載

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