名古屋・岐阜・長野、暴力団絡みの事件に隠された謎――岐阜県警と京都府警の連携、関西ヤクザの情報操作に躍るマスコミ

20161028 02
先月15日18時頃、愛知県警担当の新聞記者やテレビ記者から立て続けに連絡が入った。その時、筆者はモンゴルの首都・ウランバートル郊外に特設された会場で、『ナーダム』を見学していた。会場には、『アジア欧州会議(ASEM)』に出席した日本の安倍晋三首相、ドイツのアンゲラ・メルケル首相、中国の李克強首相、韓国の朴槿恵大統領等、アジアとヨーロッパ51ヵ国の首脳と100名以上のマスコミが、モンゴルの伝統的な夏祭りを見学していた。その最中に、突如として緊急連絡が舞い込んできた。祭り会場から離れ、筆者も国内のヤクザに連絡を入れた。この段階では誰が殺ったのかは判然としていなかった。何しろ、記者たちからの一報はどれも、「新栄でヤクザが殺されました」ばかり。同日16時半頃、名古屋市中区新栄2丁目のビル4階の部屋で、神戸山口組系山健組健仁会の斉木竜生舎弟頭が、2人組の男に射殺されるという事件が起きたという。今年5月3日に岡山市内で起 きた池田組の髙木昇若頭が、弘道会傘下の組員に射殺されて以来の、チャカを使った事件の発生! それだけに、記者の誰もが「愈々、抗争が火蓋を切ったのではないのか?」と質問を寄せてきた。しかしこの事件、発生当初から“内部犯行”とか“シャブを巡る争い”とか、2つの見方に割れ、愛知県警に聞いても弘道会に聞いても、「真相はよくわからない」という状態が暫く続いた。筆者は、当初から「抗争等ではない」という見方に立った。名古屋界隈において、殺された斉木幹部は“サイタツ”と呼ばれるほど知られたヤクザだった。正確に記せば、彼は“シャブのサイタツ”という呼称で有名だったのだ。

一時、「絶縁処分の身だった」という情報もあるが、「そのサイタツが刑務所を出てから、放免祝いまでされて、健仁会の舎弟頭に迎え入れられた」と事情通は証言する。だが筆者は、「弘道会、乃至山口組が、抗争の標的として、神戸山口組3次団体のシャブ中の幹部を殺る必然性は全く無い」と判断した。ならば、殺害当初から実しやかに流れていた、シャブ利権を巡る内部の揉め事が原因だったのか。今月16日現在で言えることは、「愛知県警は既に2人の実行犯を特定していて、程無く逮捕に及ぶだろう」ということと、「この殺人は抗争等でもなく、シャブ利権のトラブル等でもなくて、嘗てサイタツと実行犯が居合わせた富山刑務所時代から続いていた、個人的な怨恨に起因する可能性が浮上してきた」ということだ。たとえ個人的な私怨だとしても、殺した方も殺された方もヤクザだから、直ぐに山口組と神戸山口組の対決抗争と結び付け、弘道会と山健組との抗争に図式的に置き易いが、真相はそうそう単純ではない。しかし、この事件にも謎がある。例えば、サイタツ殺害実行者の手引きをしたと言われているシャブ男が、愛知県警中警察署に弁護士を同行させ、出頭している点だ。この動きを、あるヤクザは「シャブ漬けの男に弁護士を雇うカネなんかある訳がない。誰かが弁護士をつけたに違いない」と指摘した。更に、「殺害の現場に居合わせ、119番したシャブ男が、2~3発ぶん殴られただけで済んだ」とか、「犯人たちが使った車が焼かれている」とか、どうも辻褄の合わない様々なことが露見してはいるが、愛知県警の犯人逮捕が実現すれば、サイタツが狙われた本当の理由がはっきりするだろう。筆者は既に実行犯と言われる人物名を承知しているが、これとて、実際に逮捕・起訴されてみないと書ける訳でもない。亡くなった斉木幹部を知る堅気の人物は、「もうシャブ中ですよ。カネを取る為に無茶苦茶だった…」と語っている。それにしても、軌道を読めないマスコミの抗争報道には呆れ返るばかりだ。山口組が分裂してから1年、両者の帰趨ははっきりしないが、どういう意味なのか、『刻一刻と近づく神戸山口組8月一斉攻撃』とか、『休戦中に音が鳴った! 名古屋射殺事件』とか、如何にも神戸山口組が山口組に一斉攻撃に出るかのような勇ましい記事が跡を絶たない。

20161028 03
神戸山口組の事情に詳しいある組幹部は、「線香の1本も上げない花隈に誰がついていくの…」と呟く。その幹部は、こうも続けた。「去年秋、掛野のところの組員が竹内組移籍云々で殺されただろう。あれは盃を交わしていたんだよ。なのに、盃が無かったと か、関係ないとか。葬式に線香の1本もあげない。知らんぷり。今回のサイタツの葬式にも、線香1本も無い。そんな花隈に誰がついていくの…」。更に続けて、「山健が弘道に勝つ? 誰がそんな寝言を書いているんだ! アホも大概にしなよ!」――。筆者は激しく叱責された。因みに、花隈とは山健組本部がある住所のことである。それにしても、マスコミが伝えるほど、山口組と神戸山口組の抗争状態は緊迫情勢にあるのだろうか? 弘道会幹部の動向を24時間体制で追尾している筈の愛知県警の捜査関係者に話を聞いたところ、「週刊誌が言う抗争がそれほど緊迫した状態にあるというのなら、何で幹部らは別荘に行ったり、海外旅行に出かけたり、ゆっくりと休息しているんですかね? 抗争中にそんなことってありですか? 一体、マスコミは何を伝えたいのですか?」と逆に質問されてしまったので、「抗争してくれないと売れないからですよ。売れるように、事件も抗争も勝手に作り上げているだけですからね…」と答えるしかなかった。一部の事件を取り上げて事大主義で伝えようとするのがマスコミの特技であることは、誰だって知っている。特に、ヤクザ情報を扱っている者ならば、昔から関西ヤクザのマスコミ操作には定評があることぐらいは知っている。最近、日刊ゲンダイや週刊現代に載った神戸山口組・織田絆誠若頭の独自記事等は、その典型だろう。一方の弘道会はというと、たとえ諜報機関並みの情報収集能力があっても、警察やマスコミに対しては緘口令を敷いてきた歴史があり、現在も簡単には口を開かない。あること無いことベラベラ話す関西と、中々腹を明かさない名古屋の気質の違いがここにある。マスコミが神戸山口組の勇ましい姿を繰り返し伝えるのは、関西系ヤクザの操作情報を鵜呑みにしている記者が殆どだからである。山口組執行部幹部からは、「お盆ぐらいゆっくりしなさいよ。何も無いから…」との御宣託だ。

山口組は既に、神戸山口組への包囲網を作りつつあるのだろうか。相変わらずトラックが突っ込んだり、車をぶつけたり、彼方此方で挑発と返しを繰り返しているが、それが「弘道会と山健組の全面戦争に拡がる」と見るのは、分析の基本視点がズレてしまっているとしか思えない。「山口組も神戸山口組も抗争突入はできない」ということぐらいは基本中の基本だというのに、前述のように、今月中、「あと2週間ほどで神戸山口組が山口組に一斉攻撃かける」等と無責任に煽ることは止めたほうがいい。これ以上の騒動を繰り返していけば、確実に警察庁の特定抗争指定暴力団、更には特定危険指定暴力団の指定を受けることになる。「特に、発足間もない神戸山口組が、この指定を回避して抗争続行は不可能」(暴力団捜査員)。扨て、先月号で書いた注目の現実について触れよう。岐阜県警が逮捕した、神戸山口組傘下で長野県松本市に本拠を持つ竹内組の金澤成樹組長と他2名が、道路運送車両法違反で6月末に逮捕された一件のことだ。その後、今月1日には殺人予備容疑で再々逮捕され、15日には同容疑で更に竹内組の組員1人が逮捕されている。殺人予備容疑の決め手になったのは、最初の逮捕時、盗難車両に金属バット・目出し帽・盗難単車等を積み込んでいただけでなく、竹内組の組事務所のガサ入れの結果、弘道会野内組組長の行動を動画記録したCD等が押収されていたからだ。岐阜県警は警察庁と協議して、「野内殺害を準備していた」として殺人予備容疑を適用した。これに対し、「起訴できるかどうかは微妙」と指摘する地元紙記者もいるが、ヤクザが金属バットだけで逮捕起訴された事件が無い訳ではない。凶器準備集合罪は外形的に成立していると見るが、扨て、その結果は程無くわかる。岐阜県警は、京都市内で金融業を営むM社長の拉致・監禁・死体遺棄容疑を捜査している京都府警との連携に入っている。数年も前から、京都府警は長野に本拠を置く組がM社長殺害に関与していることを掴んでいたが、決定的物証に欠いており、未だ逮捕に及んでいない。それでも、岐阜県警と捜査情報を交換し合ったことは間違いない。京都府警のほうは、現在もM社長殺害解明を進めている。例えば、M社長が拉致される以前に、不動産競売問題の最中で、ある組長との金銭のやり取りが行われていたことに再度注目していると言われている。一方で、拉致殺害されたM社長側からは、「当時、防犯カメラに映っていた犯人らしき男たちの映像に注目している」という情報も入ってきた。筆者は、「M社長を拉致・監禁・殺害した組こそが、危険指定暴力団に指定されるべき」と思っている。今月号で山口組と神戸山口組の組織体制比較をしようと思ったが、健仁会幹部の殺害情報に切り替えた。次号で扱う。例えば、山口組も神戸山口組も上納金を下げているが、末端の組員の上納金は本当に下がったのかどうか。実はそうでもないらしい。 (取材・文/フリージャーナリスト 成田俊一)


キャプチャ  2016年10月号掲載

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