『LINE』は災害時の緊急連絡や布教にも有用なのか――檀信徒に寺報を送付、スタンプで仏の御心を伝えることも

地震や水害等、緊急時の通信ツールをお寺は備えているだろうか。既にSNSの有用性は多く語られているが、中でも実際に熊本地震で役立ったという『LINE』の機能に注目。布教にも利用する住職の声も合わせ、その活用法と注意点を取材した。

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「○○上人の避難所がわかる方 教えて下さい」「○○さん、西原村の河原小学校にいます」「ありがとうございます」「南阿蘇郡立野地区の避難所、立野小学校に物資を配送しました。当初は阿蘇市役所に配送予定でしたが、物資が足りないとの事でそちらに伺いました」――。これは、熊本地震の際の『熊本県日蓮宗青年会』、及び『九州日蓮宗青年会』のLINEのやり取りである(左画像)。地震直後に、どの避難所に住職が避難しているか等の安否情報と共に、救援物資配送の情報も共有した。熊本市中央区の日蓮宗正立寺の塩田義照副住職(37)は、「地震直後は、本当にLINEのおかげで助かった。お坊さん同士で情報共有できたので、混乱した中でもデマ情報が少なかった」と話す。また、人吉市にある曹洞宗永国寺の紫安敬道住職(40)は、「はっきり言って、地震の最中はLINE様々でしたよ」という。本誌6月号でも報じたが、『熊本県曹洞宗青年会』は、青年会メンバーでLINEの機能を駆使して、被災状況や救援物資の過不足等の情報を迅速に共有し、円滑に救援物資を配布したのだ。災害時に注目されるLINEだが、実は災害を想定して作られた新たなツールなのだ。では実際、どんな機能があるのか。LINE株式会社(東京都渋谷区)からサービスが提供開始されたのは、平成23年6月。東日本大震災直後のことだ。スマホ向けの無料通信アプリで、アプリをダウンロードしているスマホを持つ人同士で利用できる。メールと通話の両方が無料で使えることもあり、若者の間で一気に広まった。同社によると、今年4月時点で国内登録ユーザーは何と6800万人にのぼるという。実に、日本の人口の半分以上が利用しているのだ。海外利用者を合わせると2億1100万人以上にもなる。災害時の安否確認に役立つツールは、『NTT』が提供する“災害用伝言ダイヤル171”や、各携帯電話会社提供の“災害用伝言版”等幾つもある。『フェイスブック』や『ツイッター』等も、緊急情報の発信や情報共有に役立つとされるが、LINEは災害時や緊急時にどう使えるのか。

①既読機能
地震発生。修業中の息子が被災した。何度も電話を繰り返すが、繋がらない。携帯電話でメールを何通も送ったのに、返事は無い。そこで、LINEを使って「大丈夫か?」と一言、メッセージを送った。数分後、“既読”のマークが出た。返信は未だ無いが、一先ず生きて、メッセージを確認できたのだと胸を撫で下ろした――。LINEには、携帯電話のメール機能に似た“トーク機能”がある。これでメッセージを送ると、メッセージを受信者が読んだ時点で、送信者に“既読”の通知がされる。受信者がメッセージに目を通したことが、送信者側も直ぐに確認できる仕組みだ。同社は、「既読機能は、『メッセージの受信者が返信困難な場合にも安否確認できるように』との考えで提供している」という。抑々、災害時や緊急時の利用を想定しているのだ。

②無料通話
集中豪雨で、山間部に住む檀家のAさんの電話が通じなくなった。テレビで見る被害状況では、Aさん宅周辺で土砂崩れが発生したようだ。とはいえ、回線がパンクしたのか電話が繋がらない。だが、電話が通じない中でもLINEを使えば通話でき、Aさんの無事も確認できた――。LINEを使った通話には、“無料通話”と“LINE通話”の2種類がある。無料通話とは、LINEユーザー同士が実質無料で通話できる音声通話サービスのこと。インターネット回線を使用し、安定したインターネット環境さえあれば繋がる。これを使えば、災害で電話回線がパンクしても音声通話が可能だ。一方、“LINE通話”は通常の電話回線を使うサービス。熊本県宇土市にある高野山真言宗大圓院の増田光韻住職(42)は、「(地震が発生した)4月14日から16日は電話回線がパンクし、殆ど電話は通じなかったが、LINEの無料通話は繋がった。一部の檀信徒の安否も、これで確認が取れた」と言う。

③グループトーク
「○○小学校でオムツが足りない」「○○寺にオムツあります」「○○寺から○○小学校にオムツ届けます」「○○寺のご住職の避難先を教えて下さい」――。冒頭、熊本地震の際に各宗派の青年会が活用したのが、この“グループトーク機能”だ。支援物資情報や、安否確認情報を共有するのに使える。これは、利用者間で特定のグループメンバー(最多199人)を作り、そのメンバー間で同時に文章でメッセージのやり取りができる機能。災害時ばかりでなく、例えば、檀信徒のグループを作れば行事予定を一斉に送ることもできるし、それに対してグループ内の檀信徒同士も意見交換できるのだ。また、このメッセージはグループ内のメンバー全員が読むことができる。携帯電話のメールなら1対1でのメッセージの送信か、一斉送信したとしても1対多の情報発信になるが、この機能は多対多で情報が共有できるということだ。また、LINEは画像や動画、“スタンプ”という独自のイラストも送信できる。スタンプについては後述するが、携帯電話のメールで使用する絵文字の豪華装飾版と言えばわかり易いだろうか。スマホ以外の携帯電話(ガラケー)も一部機能を利用できるが、携帯電話のインターネット使用料がかかる為、インターネット利用の定額サービスに加入していない場合は注意が必要だ。また、パソコンからでも利用できる。熊本地震直後の緊急時には、各宗派の青年僧が同じようにLINEを使い熟して、支援活動を行った。こうした仏教者の活動が、行政の手の届かぬ避難所への支援に大いに役立った。LINEが災害時の情報共有ツールとなった訳だ。

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LINEが情報共有や発信に向くなら、災害時に限らず、布教や伝道、檀信徒との連絡手段にも使えるのではないか。ここからは、布教に活用している事例を見る。LINEを使って檀家と連絡を取っているのが、東京都国立市にある日蓮宗一妙寺の赤澤貞槙住職(35)だ。首都圏開教の為、僅か4年で寺院を新設した住職として、本誌2月号でも紹介した。赤澤住職はLINEを使って、PDF化した寺報を送っている(右画像)。というのも、寺報の発送方法について檀家にアンケートを取ったところ、「紙の郵送ではなく、Eメールにしてほしい」という声が挙がったからだ。その中に、「LINEで送ってほしい」という声もあった。LINEでの情報発信を希望する人は、30代から50代の女性に多いという。年配の檀家は紙刷りの寺報を求める人が多い為、赤澤住職は、寺報を郵送・Eメール・LINEと分けて発送している。LINEを使用するメリットはあるのか。「スマホ利用者の多くがLINEを使用している為、いつでも簡単に連絡できる点はいい。寺報は通勤時間やトイレ等、“隙間”時間を使っても読んでもらえます」(赤澤住職)。中には、LINEで葬式や法事の依頼を受けるケースも出てきたという。但し、住職と個別に気軽に連絡が取れるからか、仕事や恋愛等といったプライベートな相談が寄せられ易い面もあるという。だが、「寺院を開設したばかりですし、檀家とコミュニケーションを取れるツールとしては使い易い」と赤澤住職。「新たな檀家を取り込もう」という気概ある住職ならではの取り組みかもしれない。

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LINE専用の“スタンプ”という機能で送るのは、イラストや絵文字である。その時々の気分や感情を伝える為に、文章ではなくスタンプを送り合うのが、若者たちで共有される当たり前のコミュニケーション手段なのだという。スタンプは、今年6月時点で1万種以上のデザインがあり、LINE株式会社の審査を通れば、個人で登録・販売ができるのも特徴。無論、オリジナルデザインに限る。自坊で“天ちゃん”というイメージキャラクター(左画像)を作り、それをスタンプとして登録販売しているのが、千葉県松戸市にある浄土真宗本願寺派天真寺の西原龍哉副住職(39)だ。西原副住職がスタンプを制作した契機の1つに、神奈川県川崎市の多摩川河川敷で起きた少年殺害事件があるという。被害者は中学1年生の男子で、加害者は18歳だった。「子供たちの心の闇に、少しでも光を当てることはできないか」と考えた西原副住職は、若年層で圧倒的に利用者の多いLINEで「仏様の御心に触れてもらえないか」と制作に取り掛かった。元々、門信徒に人気のあった自坊のオリジナルキャラクターである“天ちゃん”を使った。スタンプでは“ありがとう”・“ひと休み”・“安心して”等、心和む言葉を付してイラスト化した。LINE株式会社からは「宗教的要素が強い」ということで中々審査が通らなかったが、申請から凡そ1年後の昨年7月に受理された。現在、40種のデザインが採用され、120円で販売されている。「天ちゃんスタンプは、布教自体を目的としているのではありません。苛めや喧嘩した時等、子供同士では言葉で上手く伝えられない気持ちもあるでしょう。そんな時にも、『仏様の御心を伝え合えることができれば、青少年の犯罪も減るのでは』との思いです」(西原副住職)。子供たちの心の隙間に仏の教えを伝道する新しいツールになるかもしれない。

以上、LINEの利点ばかりを紹介したが、デメリットはあるのだろうか。先ずは災害時の注意点だが、スマホの使用者以外はほぼ利用できないことが挙げられる。実際、熊本地震直後には、スマホ使用者の少ない高齢者ばかりの避難所ほど救援物資が届かなかったということがあった。LINEで迅速な情報共有が可能になった反面、その情報網から漏れた人たちとの“情報格差”が、そのまま“支援格差”に繋がってしまったのだ。地震防災等を専門にする鎌倉女子大学講師で『全国学校安全教育研究会』顧問の矢崎良明氏は、こう提言する。「災害時の連絡手段は幾つもあり、複数の方法を普段から練習しておくことが必要でしょう。どの方法が使えるのかは、その時にならないとわかりません。熊本地震でLINEは確かに役立ちましたが、東日本大震災に比べ、量的には安否確認の必要性が低かった。インターネット回線が使用できないことも想定する必要があります。抑々、携帯電話を利用したツールは、充電できなかったり、紛失や盗難のリスクもあります」。確かに、災害時の連絡手段として、LINEだけに頼り過ぎるのは良くないだろう。布教や伝道への利用については、前出の赤澤住職が「問題点は幾つもある」と話す。「先ずは既読機能です。メッセージに対して、直ぐに返信できないことはあります。それでも一度“既読”をしてしまうと、相手は『メッセージを読んだのに何故返信しないんだ?』と感じます。スマホでLINEを使うとつい既読してしまう為、当寺ではパソコンでLINEを使っています」。既読機能以外の問題点はあるのか。「檀家同士で言い争いになるリスクがあるので、檀家を含んだグループトークはしないほうがいいと思います。飽く迄も1対1で使ったり、メールのような機能として利用したほうがいい。気軽に連絡が取れ過ぎてしまい、檀家との距離が近くなり過ぎるのも悩ましいところです」(同)。なるほど、檀信徒との間で使用すべきかどうかは一考の余地がありそうだが、これから若い世代との繋がりを担保するツールとしては有効だろう。注意事項やデメリットもよく勘案した上で、LINEの利用を検討してみてはどうか。


キャプチャ  2016年9月号掲載

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